老後の備えについて調べてみると、よく『リバースモーゲージ』という言葉を見かけます。自宅を担保とした融資とのことですが、普通のローンとどう違うのでしょうか?リバースモーゲージには、住み慣れた自宅を離れることなく安心して資金を調達できるという特徴があります。月々の返済額を大きく抑えられるので、ゆとりある生活を楽しめるという強みもあります。具体的にはどういうものなのか、解説していきます。
リバースモーゲージとは、自宅を担保に受ける融資の一つです。
通常のローンとの最大の違いは、一般的にローンは一括融資のみであるのに対し、リバースモーゲージは融資枠内で、年金のように定期的に、または利用したい時に融資を受けられるという点です。「最初に大きく借り入れ、その後少しずつ返済していく」一般的なローンとは逆に、「少しずつ借り入れ、最後に一括返済する」形を取っているのです。
リバースモーゲージには、民間金融機関と公的なものに分かれます。その違いは、融資する資金の使い途にあります。
民間金融機関のリバースモーゲージには、資金使途に特に大きな制限がありません。一方、国や自治体が運営する社会福祉協議会のリバースモーゲージは、資金使途が生活資金や医療費に限定されますが、低金利で融資を受けることができます。
リバースモーゲージの仕組みや背景をわかりやすく解説!住宅ローンとの違いも説明
リバースモーゲージには、利用のための条件があり、また前述したとおり、資金使途に多少の制限があります。条件や資金使途は各金融機関によって若干の違いがありますが、ここでは一般的なものをご紹介します。
リバースモーゲージの主な利用条件は、以下の8つです。
リバースモーゲージの対象年齢はシニアになります。50歳、あるいは55歳以上としている金融機関がほとんどで、配偶者の年齢も50歳以上などとされているケースもあります。契約時年齢の上限は、おおむね80歳から84歳以下とされています。
「年収120万円以上」など、金融機関によって年収の下限が定められています。基本的には、下限の年収をクリアする年金受給者であれば、条件は満たせます。
契約者やその配偶者がお亡くなりになったら、自宅は売却されます。よって子世代などが同居していると、対象とならない金融機関もあります。
相続人が、契約者の死後「家を売りたくない」と言い出すといったトラブルの可能性を減らすため、相続人の了承を得ていることが条件となる金融機関もあります。
認知症を患っているなど、契約のトラブルになる恐れがある人は、契約者になれません。
融資の対象は、契約者や配偶者の名義であることが条件とされます。基本的に、融資対象の家に住んでいることが前提とされますが、老人ホームに移る予定があるなど、居住しない場合も相談は可能です。
ある程度の資産価値を有する物件が、融資対象とされます。エリアを定めていたり、評価額の下限を定めていたりなど、物件に関する条件は金融機関によってさまざまです。
さまざまな条件を満たしているかは、保証会社が審査を行います。この保証会社が、契約時の保証人となってくれることで、シニアであっても融資契約を結ぶことが可能になります。
リバースモーゲージの資金使途は、「原則自由」としている金融機関が多いです。ただ、事業や投資のための資金とすることを認めていない金融機関が大半です。月々の生活費の他、バリアフリーへのリフォーム、老人ホームへの入居金など、あくまで契約者や配偶者の生活に関わる資金として借り入れましょう。
住み替えのための資金を借りるのであれば、住宅ローンを利用するという方法もあります。また、自宅を売却してもそのまま住み続けられる方法としては、「リースバック」という仕組みもあります。それぞれ、リバースモーゲージとどう違うのかを解説します。
リバースモーゲージと住宅ローンの違いは、主に以下の4つです。
住宅ローンは、完済後、ご自宅は引き続き契約者が所有します。一方で、リバースモーゲージは、契約者がお亡くなりになったら、原則としてご自宅を売却してリバースモーゲージを返済することになります。
住宅ローンは、住宅自体を取得するために借り入れを行います。一方、リバースモーゲージは、「原則自由」としている金融機関が多いです。
住宅ローンの場合、毎月の返済額は元本と利息を足したものです。返済するたびに元金が減っていきます。一方リバースモーゲージは、毎月利息だけを返済します。毎月の返済では、元金は減りません。
住宅ローンは、若くバリバリ働ける人の方が、審査を通りやすいといえます。シニアになると審査が通りにくくなり、一定の年齢を超えたら審査を受けることも難しいものです。一方、リバースモーゲージの契約時年齢対象はシニアであり、一定額の年金さえあれば審査を受けることが可能です。
リースバックとは、自宅を売却し、買主に家賃を支払うことで元の自宅に住み続けられる仕組みです。リースバックとリバースモーゲージの違いは、以下の5つです。
リースバックは、最初に自宅を売却してしまうので、自宅の所有権は買主側に移ります。一方、リバースモーゲージは自宅を担保にするだけなので、契約者が住み続けている間の所有権は、あくまで契約者側にあります。契約者がお亡くなりになってから、ご自宅を売却してリバースモーゲージを返済することになります。
リースバックで得られる資金は、自宅の売却金です。リバースモーゲージで得られる資金は、金融機関からの借入金です。
リースバックで得られる資金は家の売却金なので、どんな使い方をしてもよいとされています。新しく事業を始めたい、投資をしたいという目的での売却でも構いません。リバースモーゲージは、前述の通り資金使途が若干制限され、事業や投資目的では使えない金融機関が大半です。
リースバックで月々に支払うのは、そのまま自宅に住み続けるための家賃です。一方、リバースモーゲージで月々に支払うお金は、融資を受けている金額の利息です。
利用していた人がお亡くなりになったら、リースバックでは買主が家の管理を受け継ぎます。相続人が家の買い戻しをすることも可能です。一方、リバースモーゲージは、金融機関が家の売却金によって元金を回収します。
リバースモーゲージのメリットは、どのようなものがあるのでしょうか?
最大の強みは、慣れ親しんだ自宅に住み続けられることでしょう。
所有権は移転しないので、「もし人手に渡ってしまったら」という心配をすることなく、家族の帰りを楽しみに待つことができます。
もちろん、バリアフリーにリフォームするのも自由です。
ただ住み続けられるだけでなく、余裕資金の確保ができます。
「年金だけでは足りない」「貯蓄が目減りしていくことが苦痛だ」といった経済的・精神的なストレスが軽くなることも、大きなメリットのひとつです。老後の就労は簡単ではありません。自分の資産で自宅を活用しながら、その資産価値を生前に受け取れるのは大きなメリットでしょう。
また先にも触れた通り、民間金融機関の場合は、受け取り方をある程度自由に選ぶこともできるので、ライフスタイルに合わせたお金の使い方ができます。
通常のローンとの大きな違いはこの点です。住宅ローンをはじめとするローンの返済に生活資金が圧迫されているケースにおいて、利息だけの返済で月々の返済額は大きく変わってきます。元本の返済は、基本的には契約が終わるときまで求められないので、返済の負担が大きく軽減されます。
また、民間金融機関のプランの中には、年齢や収入など一定の条件を満たせば毎月の利息は貸出枠の中で元本に加算され、利息の引き落としが発生しないものもあります。
リバースモーゲージは基本的に、金利を定期的に見直す「変動金利」が採用されているので、将来的に毎月の返済額が上昇する可能性があります。
今は長く低金利が続いていますが、契約期間中に金利が上がった場合は、支払総額は増えてしまうため注意が必要です。
融資の上限額は、担保評価額によって決まり、定期的に見直しも行われます。もし評価額が下がってしまった場合は、利用できる額も減ってしまいます。
たいていは変動幅を見込んで上限額を設定するので問題になりませんが、評価額が借りた額を下回った場合、超過分が出てしまうリスクもあります。
存命中に借りた額が上限に達してしまった場合は、それ以上の融資は受けられなくなってしまいます。
また、基本的にリバースモーゲージは契約者が亡くなった後に自宅を売却し、借りた分と利息を一括返済するものですが、存命中に評価額が借入額を下回った場合は、金融機関によっては差額分の返済を求められる場合があります。
リバースモーゲージのデメリットやリスクを徹底解説!老後資金の調達方法もご紹介
愛着ある自宅に住み続けたいし、まだまだ一人で元気に暮らせるけれど、最近は段差が気になるようになってきた……。
バリアフリー工事にも使えるリバースモーゲージを選んで、暮らしも、自宅との付き合い方も、充実させてはいかがでしょうか。
リバースモーゲージを利用すれば、自宅を手放すことなく入居の一時金を用意することもできます。
普段は住みやすい老人ホームで生活し、年に何度か懐かしい自宅に家族と集まり時を過ごす。そんな願いを叶えませんか。
自宅はあるが貯蓄が少ない、あるいは万が一に備えて貯蓄は残しておきたい。まだ住宅ローンが残っていて、今後の返済に不安がある。
その悩み、リバースモーゲージで解決できるかもしれません。