2025年5月26日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージの目的とは?使い道や資金用途など注意点を解説

「リバースモーゲージってよく聞くけど、他のローンとどう違うの?」と疑問を持っている人もいるではないでしょうか。リバースモーゲージは自宅の評価額に基づいて融資契約をする方法で、契約者の収入条件はハードルが高くありません。また、毎月の返済は利息のみで良く、契約者がお亡くなりになってから家を売却するなどの方法で元金を返済します。リバースモーゲージの仕組みや用途目的、注意点などについて解説します。

リバースモーゲージとは

まずは、リバースモーゲージの基礎知識についてご案内します。

リバースモーゲージの目的(背景)

リバースモーゲージは、多くの日本人シニア層にとって唯一最大の財産である「自宅」を活用した融資方法です。

近年、老後の生活費への不安が高まっており、一時は「年金があったとしても夫婦2人で老後を乗り切るためには2,000万円が必要」と騒がれました。老後、どれほどの資金が必要かは人それぞれであり、いくらが必要と一概に言えるはずもありません。しかし、定年後は年金しか収入がないシニア層にとって、近年の物価高騰や、老化により介護医療費が嵩んでいくことは、不安以外の何物でもないでしょう。

自宅をお金に換えれば、当然ながら住むところを失ってしまいます。しかしリバースモーゲージは、自宅を担保にし、自宅に住み続けながらお金を借り入れることができます。そして、生涯自宅で過ごすことが可能です。

頼りにできる現金が乏しいかわりに、利便性の高い都市部に自宅を保有しているシニア層にとっては、リバースモーゲージは注目に値する資金調達法です。また、契約者が亡くなった後は相続人が担保物件を売却するなどの方法によって元金を返済するため、誰も相続する意思がない家を空家にしない方法としても注目されています。

リバースモーゲージの仕組み

リバースモーゲージは、50代以上を対象とした融資の仕組みです。シニア層を対象としているため収入条件は厳しくなく、年金などの安定した収入があれば契約が可能です。

金融機関は、まず担保となる自宅の評価額を算出し、評価額の5割から6割を融資極度額とします。契約者は融資極度額内で金融機関から借り入れを行うことになります。

借り入れの方法としては、年金のように毎月決まった金額を利用できる「年金方式」、最初にまとまった金額を一括で借り入れる「一括方式」、資金が必要になったときにその都度借り入れを行う「都度方式」があります。

返済については、契約者の存命中は利息のみを毎月支払います。そして契約者がお亡くなりになった後、相続人が担保となっていた自宅を売却するなどの方法で元金を一括返済します。元金の返済は、相続人が自己資金で行うことも可能です。

リバースモーゲージの使い道・資金用途

リバースモーゲージで調達した資金の使い道は、原則として自由です。例えば、以下のような用途があります。

老後の生活費の足しにする

「年金だけだと少しだけ生活費が赤字になる」という夫婦は多いと思われます。年金形式でリバースモーゲージを利用することによって、赤字部分を補填することが可能です。退職金などを切り崩すことなく、安心して生活できます。

バリアフリーのリフォーム代にする

手すりの設置、床の段差をなくす、転倒の不安が少ないバスルームにするなど、バリアフリー化は大がかりになればなるほどお金がかかります。「家を売れば資金ができるが、それではマイホームのリフォームはできない」と頭を抱える人に、リバースモーゲージは有効です。

老朽化した家を修繕する

働き盛りの頃に建てた家は、ところどころ大がかりな修繕が必要になってくる頃です。キッチンやバスルーム、屋根、床下などは、100万円単位で修繕費用やリフォーム費用がかかる場合もあります。

子世代の自宅新築への援助

子世代が自宅を建てるタイミングが近い人もいるでしょう。「まとまった資金を援助したい」と考えたとき、リバースモーゲージであればそれが叶います。

孫の教育資金にする

孫が大きくなり、大学生になるという人もいるでしょう。留学や1人暮らし、習い事など、高い教育を身につけさせようとするほどお金もかかります。

趣味を思い切り楽しむ

車やヨット、音楽など、こだわるほどお金がかかる趣味を持っている人は、老後こそ趣味に没頭したいと思うのではないでしょうか。リバースモーゲージの資金用途は自由なので、趣味のために使うことも可能です。

夫婦旅行を楽しむ

「仕事が忙しく、定年になるまで夫婦でゆっくり旅行を楽しむことがなかった」という人も少なくありません。リバースモーゲージを利用すれば、時間が自由になった2人で国内や海外を回り、思い出づくりをすることができます。

住宅ローンの返済に充てる

定年後も住宅ローンの返済を抱えている人は、リバースモーゲージに借り換えれば月々の返済が楽になります。住宅ローンは元金と利息を組み合わせて返済しますが、リバースモーゲージは存命中の返済が利息のみだからです。

老人ホームの入居金にする

入居一時金として、数百万円を支払わなければならない老人ホームもあります。「いざというとき帰れる家を残しておきたい」と思うなら、リバースモーゲージで自宅もキープしつつ、住み替えを叶えましょう。

リバースモーゲージのデメリットと注意点

リバースモーゲージは便利な仕組みですが、デメリットもあります。注意点とともに解説します。

融資極度額に達すると融資が止まる

リバースモーゲージでは、最初に融資極度額を設定します。年金形式で一定の金額が手に入るようにしても、合計借入額が融資極度額に達すれば、それ以上の借り入れはできません。想定以上に長生きをすると、融資が止まってしまう可能性があります。

融資が突然止まって生活が困窮しないために、ある程度の年齢まで生きることを見据えた借り入れプランを最初に作りましょう。なお、必要となる最低限の金額を借り入れることも大切です。

元金の支払いは相続人が行わなければならない

リバースモーゲージでは、契約者がお亡くなりになった時点で契約が終了し、元金については相続人が返済する必要があります。つまり、最後の手続きを相続人に任せなければなりません。

契約する前から相続人を交えて相談し、事前に相続人の了解を得ておくのが大事です。返済には自宅を売却する方法の他、相続人が自己資金で返済する方法があることも、相続人に伝えておきましょう。

毎月の返済額が変動する

リバースモーゲージのほとんどは変動金利制です。世の中の金利が変動すれば、利息額、つまり毎月の返済額が変動する可能性があります。金利が高くなれば返済額は高くなるため、年金生活にとっては大きな負担となるかもしれません。

金利が今後どのような動きを見せるかは誰にも分かりません。できるのは、なるべく必要最低額を借り入れし、返済額を最小限に抑えることです。リフォーム代などで一括して大きな費用を借り入れるとしても、リフォーム事業者に見積もりをもらって必要額をしっかり把握した上で融資を受けましょう。「借りられるだけ借りよう」という考えは危険です。

他の資金調達方法とリバースモーゲージとの違い

家を利用した資金調達法としては、リバースモーゲージの他に住宅ローン、リースバック、不動産担保ローンがあります。それぞれ、リバースモーゲージとどう違うのかを解説します。

住宅ローン

住宅ローンは住宅取得のために金融機関から資金を借り入れる融資の仕組みです。リバースモーゲージは最終的に家を手放し、その対価として資金を得るわけなので、まずはローンの目的が違います。

また、住宅ローンで得た資金は住宅取得のためにしか使うことができませんが、リバースモーゲージは使い道が自由です。ほか、上述のように住宅ローンは元金と利息を組み合わせて返済を行う一方で、リバースモーゲージは毎月利息のみを返済し、契約者がお亡くなりになってから元金を返済します。

リースバック

リースバックは家を売却し、家の買主と賃貸契約を結ぶことで、家賃を払いながら元の自宅に住める売却の仕組みです。リースバックもリバースモーゲージも、自宅を資金調達に利用しながら自宅に住み続けられる点では似ています。

しかし、リースバックは売買契約のため、得られる売却金を後に返済する必要はありません。リバースモーゲージは融資契約のため、得られるお金は後に返済が必要になります。

なお、リースバックは家を売却した後に賃貸契約を結ぶため、売却後は固定資産税などの維持費を負担する必要がありません。リバースモーゲージは、契約者が亡くなるまで権利を手放さないため、維持費が必要になります。

不動産担保ローン

不動産担保ローンは、自宅などの不動産を担保にお金を借り入れるところがリバースモーゲージと似ています。しかし不動産担保ローンの多くは高齢者層を対象としておらず、高齢者が借りられたとしても少額である、返済までの期間を短めに設定されるなど条件が厳しくなります。

また、不動産担保ローンは返済期限が具体的に決まっています。一方リバースモーゲージのほとんどは、返済期限を契約者がお亡くなりになった後としており、具体的には定めていません。

リバースモーゲージをおすすめする人

リバースモーゲージの特徴や注意点を押さえた上で、おすすめしたいのは以下のような人です。

生涯、自宅に住み続けたい人

「老後資金が乏しく将来が不安だけれど、自宅を売却してお金に換えることはしたくない」という人に、リバースモーゲージはおすすめです。担保物件を売却するのは、契約者がお亡くなりになった後なので、自宅を資金源としながらも生涯自宅に住み続けることができます。

住宅ローンの返済負担を軽くしたい人

定年後も住宅ローンの返済が続き、家計を圧迫して悩みのタネとなっている人にリバースモーゲージはおすすめです。毎月の返済が利息だけとなるので、負担がずっと軽くなります。

空家対策をしたい人

「自分がいなくなったら、この家は空家になってしまう」と悩む人に、リバースモーゲージはおすすめです。リバースモーゲージの多くは、最終的に担保物件を売却することを前提としています。空家になる自宅の売却先を、生前に押さえておく方法といえます。

まとめ

リバースモーゲージの利用用途は原則として自由なため、さまざまな目的に資金を使えます。家のため、家族のため、自分自身の余暇のためなど、どんな目的で利用するかを考えるのも楽しいことです。検討したいと思ったら、近くの金融機関でリバースモーゲージを扱っていないか調べてみましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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