2023年8月8日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージを利用する場合の担保物件の評価額とは?リスクと注意点もご説明

リバースモーゲージを利用する場合、金融機関は担保物件となる自宅の不動産評価額をもとに融資額を決めます。評価額がそのまま融資限度額になるわけではないので注意が必要です。老後資金や住宅ローン返済に必要な金額を調達したいと考えている方のために、リバースモーゲージの仕組みや注意点を解説し、リバースモーゲージと類似するリースバックとの違いについてもご案内します。

リバースモーゲージと担保物件の評価額

リバースモーゲージは、自宅を担保に老後資金を借り受けられる融資の仕組みです。借入限度額は、担保となる自宅の不動産価値をもとに決められます。まずは借入可能となる金額の一般的な相場や住宅ローンとの違い、さらに類似サービスとしてよく比較されるリースバックとの違いについて詳しく解説します。

リバースモーゲージの仕組み

リバースモーゲージとは、今住んでいる自宅を担保に金融機関から融資を受け、契約者が亡くなった後に自宅を売却することなどで借入金を返済する仕組みです。自宅を担保としながらも亡くなるまで住み続けることができるため、シニア層は安心して老後資金を調達できます。

また、契約者が亡くなるまでは毎月利息のみを返済するだけでよく、元金は亡くなった後に自宅売却で一括返済となります。つまり生きている間の返済負担が軽くなるため、年金暮らしで資金が不足しがちなシニア層にとっては嬉しい仕組みです。
リバースモーゲージの融資限度額は担保物件の評価額によって決まりますが、評価額がそのまま融資限度額になるわけではありません。融資限度額の相場は評価額のおおよそ50%(高くて60%程度)です。

自宅等不動産の評価額いっぱいまで借りられると考えていると、算出された融資限度額の少なさに愕然となってしまうかもしれません。あらかじめ相場を踏まえておくのが大事です。

住宅ローンとの違い

住宅ローンは、新しく建てる住宅を担保として借り入れを受けられる融資の仕組みです。リバースモーゲージと似ていると思われるかもしれませんが、ハッキリとした違いが3つあります。

対象年齢の違い

住宅ローンを組み始める年齢は、若ければ若いほど有利です。若いうちからローンを組んだ方が返済期間を長く設定でき、月々の返済負担が軽くなるためです。一方でシニア層が住宅ローンを組むのは難しく、高年齢になるとローンの申し込みがなかなか通りません。

一方で、リバースモーゲージを申し込めるのはシニア層に限られます。金融機関によって違いはありますが、おおむね50歳からと制限しているケースがほとんどです。

返済方法の違い

住宅ローンの場合、毎月の返済額は元本と金利で構成されます。繰り上げ返済などの方法を使わなければ、返済開始から完済まで、月々の返済金額はあまり変動しません。

一方でリバースモーゲージの場合、契約者が亡くなるまで毎月の返済額は利息のみです。存命中は返済負担が軽く、亡くなったら相続人などが自宅を売却する等の方法で元金を一括返済します。

資金用途の違い

住宅ローンは、新築と中古とを問わず、新しく家を取得するために組むローンです。よって資金用途は100%、住宅取得のためとなります。

一方でリバースモーゲージは資金用途の範囲が広く、老後の生活費のほか、リフォームや引っ越し費用などに使うことができます。ただし事業や投資のためには使えないため、注意が必要です。

リースバックとの違い

リバースモーゲージと類似する商品に、リースバックがあります。リースバックとは、自宅を売却した上で、賃料を払ってもとの自宅に住み続ける不動産売却の仕組みです。リバースモーゲージとの違いは、主に以下の3つです。

対象となる年齢の違い

リバースモーゲージはシニア層限定ですが、リースバックに年齢制限はありません。

売却か融資かの違い

リースバックは自宅をあらかじめ売却するため、売却金が手に入ります。よって売却金をどんな用途に使おうと自由です。

一方、リバースモーゲージはあくまで借り入れのため、返済が必要です。また、事業や投資用途には使ってはならないなど、資金の用途に条件があります。

契約先の違い

リースバックを扱っているのは不動産会社です。よって不動産会社と契約を交わすことになります。

一方、リバースモーゲージを提供しているのは、自治体や金融機関です。よって自治体や金融機関と契約を交わすことになります。

リバースモーゲージを利用する条件

ここまで少しだけ紹介してきたように、リバースモーゲージにはさまざまな利用条件があります。「人」と「担保物件」に分けて、利用条件を解説します。

利用できる人の条件

金融機関によって若干の違いがありますが、リバースモーゲージを利用開始できる人の年齢はおおむね50歳以上80歳未満です。また、シニアの場合は年金など継続して一定の収入があることも条件の一つとなります。

なお、相続人の同意があることもまた大切な条件となります。

リバースモーゲージは契約者が亡くなった後に自宅を売却して元金を返済する方法なので、相続人にとっては身内が住んでいた家を失うことになります。もしかしたら「自分が住みたいと考えていたのに」と言い出す相続人もいるかもしれません。元金返済時のトラブルを防ぐためにも、相続人の同意が必要です。

利用できる担保物件の条件

まずは金融機関が対象としているエリア内の不動産であることが第一の条件です。そのうえで一定の資産価値がある戸建てを条件としているケースが多く、マンションでの利用は注意が必要といえます。

都市部かつ利便性の高い土地にあるマンションであれば審査対象に入れている金融機関も存在します。

リバースモーゲージのリスクと注意点

住まいを失うことなく、少しの返済負担で老後資金を調達できるリバースモーゲージは魅力的な仕組みです。しかしリスクも存在します。3つのリスクと、対応方法としての注意点について解説します。

自宅の評価額が下がるリスク

不動産の評価額は、リバースモーゲージを契約した後も定期的に見直されます。評価額が下がれば、融資額に影響が出てくる恐れがあります。希望していた融資を受けられなくなるかもしれません。

なお、相続人が元本を一括返済するときに自宅の評価額が思いのほか下がっていた場合は、自宅を売却しても元本を返しきることができないかもしれません。相続人が残額を精算しなければならない事態になるかもしれません。

そのため融資限度額の相場は評価額のおおよそ50%(高くて60%程度)となっており、評価額のリスクを勘案しています。

金利上昇リスク

リバースモーゲージにおける毎月の返済額は利息のみです。つまり変動金利を選ぶ場合、金利が上昇すれば返済額がアップします。

契約時には、今よりも返済額が高くなるかもしれないことを見込んでおきましょう。返済額に余裕を持たない契約はリスクが大きくなります。

長生きリスク

長生きは喜ばしいことではありますが、受けられる融資額には上限があります。もし生きている間に融資上限額まで使い切ってしまうと、生活が立ちゆかなくなるかもしれません。また、契約期間が設けられているリバースモーゲージでは、存命中に自宅の売却を迫られる恐れがあります。

日本人の平均寿命は84歳程度ですが、ライフプランは少し長めに考えておきましょう。どこかのタイミングで住み替えを行い、年金暮らしが可能な生活を整えるといった選択肢もあります。何歳まで生きたらどのように動くかを、あらかじめ家族と共有しておくのが大事です。

リースバックとは

先ほども少し紹介しましたが、リバースモーゲージと似た仕組みにリースバックがあります。リースバックの特徴や注意点についても解説しておきます。リバースモーゲージとリースバックを比較して自分に適した商品を選択しましょう。

リースバックの特徴

リースバックは自宅を売却し、買主に賃料を支払うことで元の自宅に住み続けられる不動産売却の仕組みです。売却後もふだん通りの生活を続けられるため、周囲の人に売却を知られることはありません。すでに自宅を売却しているため、本人が亡くなった後に空き家となり、相続人を困らせる心配もありません。

自宅を売却すれば権利は他の人に移りますが、そのぶん固定資産税を納めたり、修繕費を負担したりすることがなくなります。よって持ち家のための費用を節約することが可能になります。

また、一般的な不動産売買なら、売却してしまえば買い戻すことはほとんど不可能になります。しかしリースバックなら、特約等をつければ将来的に相続人などが買い戻しを行うことが可能です。

リースバックの注意点

リースバックを利用するとき、特に注意したいのが売却額と賃料です。売却額は市場価格よりも抑えられ、おおよそ70%が相場となります。

リースバックでは買主が不動産会社となり、不動産会社が利益を出すにはのちに住宅を第三者に売らなければなりません。なかなか買い手がつかないなどの損失リスクを抑えるために、売却価格が市場価値より低いのです。

また、賃料は周辺相場よりも高くなる可能性があります。リースバックを行った住宅の賃料は、実際にその住宅の売却にかかった価格などから計算して導かれるため、家賃相場とはあまり関係なく決まります。よって、「賃料が高い」と感じるケースもあるでしょう。

リースバックの利用をおすすめする人

リースバックの利用をおすすめするのは、自宅の売却金を使っていずれは住み替えを行いたいと考える人です。リースバックを利用して自宅に長く住むと、賃料が売却金を上回る時期が来てしまう恐れがあるためです。

老人ホームなどに住み替えを行う人のなかには、自宅と今後住まう施設の居室との大きさのギャップに悩む人もいるでしょう。「あれもこれも持って行きたいけれど、住み替える部屋には入らない」「時間をかけてゆっくり整理したい」「もしかして施設が肌に合わなかったときのために自宅を残しておきたい」といった希望や不安に、リースバックの仕組みはしっかり寄り添ってくれます。

また、相続の問題を生きている間に解決しておきたい人や、住宅ローンの返済をすぐに済ませたい人、事業資金や投資などにまとまった資金を必要としている人にも、リースバックはおすすめです。リースバックはすぐにまとまった資金が手に入り、かつ賃料を支払えば生活は何ら変わることがない方法であると押さえておくとよいでしょう。

まとめ

リバースモーゲージの評価額や基本的な仕組みについて、またリバースモーゲージと住宅ローン、リースバックとの違いについて解説しました。

リバースモーゲージは、「持ち家はあるけれど老後資金がない」などと悩むシニア層には一考の価値がある融資の仕組みです。死後に自宅を売却するという契約をあらかじめ取り付けることによって、空き家対策にもなります。まずはお住まいのエリアでリバースモーゲージを利用できる金融機関があるかどうかから調べてみましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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