2023年8月8日
リバースモーゲージ
【FP解説】老後資金に利用するリバースモーゲージはいくら借りられる?リスクとメリットをご説明

リバースモーゲージは、自宅を担保に金融機関から借り入れを行う融資の仕組みです。毎月の返済額は利息のみで、元金は契約者が亡くなった後に相続人が不動産を売却するなどして返済するため、老後資金の調達方法として有効です。借入金は住宅ローンの返済にも充てられます。リバースモーゲージを老後資金に利用するとしたら、いくら借りることができるのでしょうか。類似するリースバックとの違いも含めて解説します。

老後資金にはいくら必要?

以前、報道で「老後は2,000万円の自己資金が必要」とされ、話題になったことがありました。実際、老後資金にはいくら必要なのでしょうか。

「2022年家計調査報告(家計収支編)」(総務省)によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯において、平均的な支出は1ヶ月当たり26万8,508円。不足分は2万2,270円となっています。

日本人の平均寿命は84歳程度です。夫婦ともに65歳から年金暮らしになり、84歳まで生きると仮定したとき、不足分は以下のような金額になります。

2万2,270円×12ヶ月×(84-65)年=507万7,560円

少なくとも507万円の貯蓄が必要ということになります。

同調査によると、65歳以上の単身無職世帯については、1ヶ月当たりの平均支出が15万5,495円で、不足分は2万580円と出ています。平均寿命まで生きると仮定したとき、合計不足分は以下のような金額になります。

2万580円×12ヶ月×(84-65)年=469万2,240円

さらにいえば、この家計調査においては次のような突発的かつ大規模になりがちな出費は計算に入れていません。

  • 家のリフォーム費用(100万円~)
  • 旅行費用(50万円~)
  • 子どもへの資金援助
  • 孫の教育への援助

日々の生活以外にかかる費用を潤沢に押さえておきたいと考える人は、さらにまとまった金額が必要になります。古くなってくる家の修繕やバリアフリー工事を行って、子どもや孫に資金援助をして……と考えると、2,000万円とまではいかずとも、かなりの資金が必要になるでしょう。

結論をいえば、老後資金としては既婚・独身に関わらず最低でも一世帯500万円ほどが必要で、ゆとりある生活のためにはプラスして数百万円あったほうがよい、ということになります。

リバースモーゲージで借りられる金額と条件

リバースモーゲージは、老後資金への活用が可能です。ただし借入限度額があり、また他にさまざまな条件があるため、あらかじめ確認しておきましょう。なお、条件は金融機関によって若干の違いがあります。

借入限度額

借入限度額は担保となる自宅の評価額によって決まります。自宅の評価額がそのまま借入限度額になるわけではありません。限度額の目安は、評価額の50%程度(高くて60%程度)です。

つまり、1,000万円の融資を受けたいと考えたら、自宅は1,600万円から2,000万円程度の評価額にならなければなりません。いくら融資を受けたいか、そのためには自宅の評価額がいくらでなければならないか、計算してみましょう。

対象年齢と審査

リバースモーゲージの開始年齢は、おおむね50歳から、80歳までと定められています。若い人は利用できないため注意が必要です。

資金の使い道の制限

借り入れた資金は、老後の生活費の他、リフォーム費用や住み替え費用、旅行のための費用、住宅ローンを返すための費用などに使えます。事業用、投資用でなければ使い道は自由です。

金利と返済方法

リバースモーゲージの利率は金融機関によって違いますが、ほとんどが変動金利を採用しています。また、毎月の返済は利息のみで、元金は契約者が亡くなったときに相続人が担保物件を売却するなどして一括返済します。

金利が変動するため、毎月の支払額も変動する恐れがあります。

リバースモーゲージのリスク

リバースモーゲージはシニア層でも借り入れができる融資方法ですが、リスクも存在します。主に次の3つのリスクに気をつけなければなりません。

長生きリスク

限度額いっぱいになるまで借り入れをしてしまうと、その後は借り入れができなくなります。よって融資に頼り切った生活をし、思いのほか長生きしてしまったときに、老後資金が足りなくなる恐れがあります。

また、リバースモーゲージには契約期間が定められているものもあります。契約期間を過ぎると元金の一括返済が必要になるため、存命中でも家を手放さなければならないかもしれません。

金利変動リスク

前項でも少し触れましたが、リバースモーゲージのほとんどが変動金利型です。金利が上昇すれば、毎月の支払額が上がる恐れがあります。

不動産評価額下落リスク

担保となる自宅の評価額は、定期的に再評価され、借入上限額の見直しが行われます。もしも評価額が下がってしまった場合、借入上限額も下がり、必要な資金を受け取れなくなる可能性があります。

リバースモーゲージのメリットと向いている人

リバースモーゲージはリスクをしっかり把握し、上手に利用するのが大事です。リスクに備えることができれば大きなメリットがあります。主なメリットと、リバースモーゲージに向いている人は以下の通りです。

相続対策になる

「子世代は別に家を持っているので、自分が亡くなったら空き家になる」「そもそも子どもがおらず家を相続させる人がいない」などの理由で、家の相続に頭を悩ませている人は多いでしょう。

リバースモーゲージは、亡くなったときの自宅の売却方針をあらかじめ想定する仕組みともいえます。売却方針を想定したうえで、亡くなるまで自分の家にそのまま住み続けられるのですから、その安心は確かなものです。

このように、リバースモーゲージは家の相続に悩んでいる人におすすめです。

高齢者が利用しやすい

リバースモーゲージの対象となるのはシニア層です。他でローンを組もうと思っても、年齢を理由に断られたという人には最適です。

とくに働き盛りを過ぎても住宅ローンが残っている人、家のバリアフリーやリフォームをしたいけれど老後資金が削られるのが不安な人など、ローンが通らないシニア層であってもまとまったお金が必要な人にはおすすめできます。

月々の返済負担が少ない

契約者が生存している間は、月々の返済金額が利息のみなので、少ない負担で老後資金を得ることが可能になります。とくに収入の少ない年金生活者にはぴったりの融資方法です。

リースバックとは

リバースモーゲージとよく似た商品に、リースバックがあります。リースバックの特徴や注意点、リースバックをおすすめする人について解説します。

リースバックの特徴

リースバックは、不動産売却と賃貸を組み合わせた商品です。まず自宅を売却し、次に買主と賃貸契約を交わすことで、継続して自宅に住み続けます。元の自宅を手放し、賃貸物件として利用するということです。

リースバックを利用すると毎月賃料が発生することになりますが、権利を手放しているため修繕費用や固定資産税は買主側の負担になります。特に突発的となる修繕費用を年金生活者が負担するのは大変です。毎月金額の変わらない賃料を支払うことで、安心して住み続けられるという利点があります。

また、リースバックを利用すれば自宅の売却金が手に入るため、すぐにまとまったお金が必要な人に適しているといえます。リバースモーゲージと違い、返済する必要もありませんし、資金用途を制限されることもありません。

リースバックの注意点

リースバックの注意点は、売却金が市場価格よりも安いことです。リースバックの売却金は市場価格の70%程度が相場とされます。通常の不動産取引よりもだいぶ安い価額で自宅を手放すことになるため、慎重に考えましょう。

また、賃料を支払い続けていると、賃料の合計が売却金を超えてしまうことがあります。買主側の負担となる固定資産税やリフォーム費用についても考慮した上で、居住期間をあらかじめ決めておいた方がよいかもしれません。

リースバックの利用をおすすめする人

リースバックの利用をおすすめするのは、そのうち住み替えを検討している人です。上に示したように、リースバックを利用して長く住まうと賃料が売却金を超えてしまうことがあります。売却金を使って老人ホームへ住み替えたいと考えている人、いずれ子どもの家に同居する予定の人、住み替えたうえでゆっくり自宅を整理したい人などに向いています。

また、すぐにまとまった資金を必要とする人にも、リースバックはおすすめです。リースバックは特約などをつけることで買い戻しが可能なので、そのうちまた資金ができたときに買い戻したり、相続人が買い戻したりといったことができます。

自宅に長く住みたい、毎月少しだけ足りないぶんの老後資金を融資してもらいたいといった人には、リバースモーゲージのほうがおすすめです。

まとめ

以上、リバースモーゲージでいくら借りられるか、リバースモーゲージの仕組みやメリットなどについて解説しました。リースバックとも比較したため、ご自身に合った方法はどちらかがハッキリしたのではないでしょうか。

リバースモーゲージを利用したいと考えたら、まずは自宅のエリアを対象としている金融機関を調べてみましょう。できれば複数の金融機関から見積もりを取ることで、よりお得に利用できる先が見つかります。

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奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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