リバースモーゲージの仕組みを調べていると「抵当権」「根抵当権」「担保」など見慣れない言葉が続き、難しいと感じることがあります。リバースモーゲージは、シニアが金融機関から借り入れを行うための仕組みで、住宅ローンとは違います。誰も相続しない自宅という不動産を利用して借り入れるため、返済時の負担はかなり抑えられます。リバースモーゲージを検討している人のために、知っておくべき不動産用語について解説します。
まずはリバースモーゲージの仕組みについて、噛み砕いて解説します。仕組みを理解するのに欠かせない「担保評価額」や「融資極度額」といった用語についても、順次ご案内します。
リバースモーゲージは、50歳以上のシニア層が利用できる借り入れの仕組みです。自分が住んでいる家を担保に、金融機関からお金を借ります。担保にするとは、「借金が返せなかったらこの財産を差し出します」と約束することで、担保はいわゆる「借金のカタ」です。
「借金のカタに自宅を差し押さえられたら大変だ」と思われることでしょう。しかしリバースモーゲージの仕組みを使えば、自宅を担保にしたとしても、生涯そのまま自宅で過ごすことができます。なぜなら、契約者が生存している間の返済は利息だけで、借りたもとの金額は契約者が亡くなってから返済するためです。
一般的に契約者が亡くなったら、相続人が担保となっていた自宅を売却して借金を返します。相続人が家を売却したくないなどといった理由があれば、原則、相続人自身が現金を用意して一括返済します。
このように、リバースモーゲージは「持ち家はあるけれど老後資金がない」と悩むシニアに適した資金調達方法です。毎月の返済額が安いので、年金暮らしでも比較的楽に返済することができます。
担保評価額とは、担保となる不動産の価値を金額化したものです。リバースモーゲージでは、担保となる自宅等不動産の価値を金額で表したものになります。いわば家の値段です。
リバースモーゲージを提供する金融機関は、地価や周辺の類似物件の価額などを組み合わせて評価し、担保となる自宅等不動産の値段を計算します。この金額を元に、融資極度額が決まります。
融資極度額とは、金融機関から示される借入限度額です。リバースモーゲージの契約者は、この融資極度額の範囲内でお金を借りることになります。
リバースモーゲージの融資極度額は、担保評価額のほか、個々人の収入から推察できる返済能力などを踏まえて決められます。契約人が自由に決めることはできません。
リバースモーゲージでは、借り入れで担保を設定するとき一般的に使われる「抵当権」ではなく、「根抵当権」が使用されます。抵当権や根抵当権の意味と違いについて解説します。
抵当権とは、何かを担保としてお金を貸す側の権利です。例えばリバースモーゲージでは、金融機関側が契約者の自宅を担保にお金を貸すため、「金融機関は契約者に対して抵当権を持っている」ということができます。契約者側からすると、「自宅に抵当権が設定されている」という状態です。
貸したお金が返されなければ、お金を貸す側は担保となっているものを差し押さえ、売却資金を回収します。これを「抵当権を実行する」といいます。
根抵当権とは、抵当権の一種であらかじめ限度となる借入額を決め、極度額方式の借入を行うことにより、その範囲内であれば何度でも借り入れが可能になるよう設定された権利です。
抵当権は、1つの借り入れに対して1つずつ設定します。対して根抵当権は、決められた範囲内であれば何度借り入れを行っても構いません。
リバースモーゲージでは、一度限りの融資を選ぶ人もいますが、基本的に融資極度額内であれば何回でも借り入れができます。そのつど抵当権を設定していては、煩雑になってしまいます。そこで融資極度額を定め、その範囲内であれば何度でも借り入れできる根抵当権を採用しています。
リバースモーゲージには、以下の3つの借入方式があります。それぞれ向いている人が違うため、詳しく解説します。
年金のように、毎月一定額を借り入れする方式です。年金だけでは日常生活が営めず、毎月少しの赤字を補填したい人に向いています。ただし生涯受け取れるわけではなく、毎月の借入額と融資極度額に応じて期間が定められます。
契約時に希望する金額を全額借り入れる方式です。バリアフリーへのリフォーム費用、老人ホームへの住み替え費用など、一時的にまとまった費用が必要な人に向いています。
融資極度額以内であれば、自由に必要金額を借り入れできる方式です。いつ必要になるかわからない家のリフォームや子世代への資金援助、万が一の病気やケガに備えたいという人に向いています。
リバースモーゲージの返済方式には、元本一括返済型と元加型があります。それぞれ、以下のように違いがあります。
契約者が亡くなった後、もともと借りたお金である元本を一括して返済する仕組みです。利息の部分は、契約者が存命中に毎月返済を行います。合計の返済金額を抑えたい人、相続人に過度な負担をかけたくない人、利息程度であれば毎月負担する余裕のある人に向いています。
元加型返済は元本も利息も契約途中での返済は行わず、契約者が亡くなった後、もともと借りたお金である元本と利息部分を足した全額を一括返済する仕組みです。
毎月の支払いが発生せず日常の負担感は少なくなりますが、毎月支払うはずの利息を元本に組み込むため、契約終了時の返済金額が大きくなるほか、当初に借り入れができる額が少なくなります。これを元加型といいます。
返済されていない利息を元本に組み込まれることにより、徐々に元本額が増えてしまいます。相対的に利息額も増えてしまい、返済総額が高額になっていきます。
リバースモーゲージに関して、抵当権や根抵当権などの用語解説を行いました。分かりづらい融資の仕組みについて、理解が進んだなら幸いです。
リバースモーゲージはシニアにとって新たな融資の方法と注目を浴びており、自治体で利用しているケースもみられます。気になった場合は、近くの金融機関や役所で資料を取り寄せてみてはいかがでしょうか。