2025年4月30日
老後
【FP解説】社債とは?債券投資と株式投資の違いをわかりやすく説明

社債は、企業が発行する債券です。一方で株式も、企業が発行する金融商品です。いずれも企業が資金調達のために発行するものですが、元本保証があるか否かや、リスクの特性に違いがあります。この記事では、まずはとくに一般的にはわかりづらい、社債による債券投資を中心に解説します。その後、債券投資と株式投資の違いをわかりやすく説明します。債券投資に興味のある方は、ぜひ最後までお読みください。

社債とは?

社債とは、企業が発行する債券のことです。資金調達のために発行するという意味では、株式と似ています。しかし社債は「債」という字が示すとおり、企業が行う負債です。投資家から、資金を借り入れるために債券を発行するのです。

まずは社債の利息や利回り、種類について解説します。

利息

社債投資を始めると、社債を発行した会社からの利息として、利率に応じた金額を定期的に受け取れます。社債の利率は発行時に決められており、社債に記されています。

例えば、額面金額100万円の社債を、額面通り100万円で買ったとして、1年間預けて2%の利息を受け取る社債であれば、年に2万円の利息を受け取れます。

利回り

利回りとは、収益割合を指します。通常、「年間●%の利回り」などと表現され、投資のパフォーマンスを表す指標として使用されます。

社債の投資においては、利息による収益と、投資金額と額面金額の差額を合計し、その金額が投資金額に対してどの程度の割合になるかを計算し、利回りとします。つまり、利回りは以下の式で算出されます。

利回り=利率による収益+(額面金額-発行価格)÷満期日までの年数
            投資金額(発行価格)

ここでポイントになるのは、債券は額面金額と発行金額が違う場合があるということです。額面金額100万円の債権を、98万円で購入することもあれば、102万円で購入することもあります。額面金額とは、債券を償還するとき(満期のとき)に返済される金額のことで、発行価格は発行時の情勢等で変わってきます。

100万円の社債を98万円で購入すれば、利息を考慮しなくても、満期時に2万円の利益が出るということになります。5年満期であれば、1年間に4000円の利益があるということです。(2万円÷5年)。もし利率を考慮せず、額面と発行金額の差額だけで利回りを数えようとすると、4000円を発行価格の98万円で割って、利回りは4%と出ます。

しかし実際には利率による収益があります。改めて、利率を含めた利回りの例をご紹介します。

【利回り例】

  • 額面金額100万円の債券
  • 98万円で購入
  • 利率2%
  • 5年満期

として計算します。

まずは満期となる5年間全体の収益を計算します。

100万円×2%(利率による収益)+(100万円-98万円)((額面金額-発行価格)=4万円

次に、全体の収益を5年で割り、1年単位の収益を割り出します。

4万円÷5年=8000円

最後に、1年単位の利益を投資した金額(発行価格)で割って、利回りを出します。

8000円÷98万円=0.00816(8.16%)

よってこの社債の利回りは8.16%です。

社債の種類

社債には、以下の6つの種類があります。

普通社債

「社債」と言うとき、一般にはこの普通社債を指します。後の5つの種類のような特徴がない社債のことです。

私募債

企業が、特定の投資家に対して発行する債券です。一般の投資家からは応募(購入)できません。

転換社債

CB債とも呼ばれ、株式に転換できる社債です。「転換社債型新株予約権付社債」の略称で、株式に転換するには一定の条件があります。条件は、発行時に定められます。

劣後債

劣後債は、ジュニア債とも呼ばれ、返済順位が低い社債のことです。劣後債を購入後、会社がもし倒産などしたら、他の債権から優先して元金の返済や利息の支払がなされます。よって劣後債は元本が回収できない恐れがあります。

電力債

電力債は、電力会社が発行する社債です。電気事業法に基づいて発行され、電力会社の全財産が担保の対象となっています。

ワラント債

ワラントとは、英語で「権利」や「保証」を指します。ワラント債は、あらかじめ定めた価格で発行会社の株を買える権利がついた社債です。社債の部分とワラント部分を切り離して販売できる「分離型」と、切り離しては販売できない「非分離型」があります。

債券投資の魅力

債権取引には、以下の3つの魅力があります。いずれも投資をするにあたって安心できる魅力です。

安全性

社債を償還日(満期日)まで保有すれば、固定金利の場合は、あらかじめ定められた利益を受け取ることができます。この低リスクな安全性は、最大の魅力です。

なお、信用の高い会社の社債であるほど、会社倒産時などのデフォルト(債権の利払いや元本返済が予定通りに行われないこと)リスクが少なく、安心して運用できます。

収益性

低リスクでありながら、一般的な預金よりも収益性が高いのも魅力の1つです。利子率が高ければ高いほど、収益性が高いといえます。

また、額面金額よりも低い金額で購入できれば、差額はそのまま収益とみて良いことになります。投資初心者にとってもわかりやすい仕組みといえるでしょう。

流動性

社債は、有価償還として売買が可能です。満期日まで持っていなくても、流動性があれば手放すことができます。手放したいと考えたタイミングで売却できるかどうかはわかりません。しかし信用性の高い会社の債券であれば、比較的流動性が高いといえます。

債券投資のリスク

先に魅力を紹介したとおり、債券投資は購入したその日に収益が分かる、安全な取引と言えます。しかし、債券投資特有のリスクも存在します。

信用リスク

社債はあくまで一企業が発行する債券なので、会社の信用度によっては、債務不履行に陥るリスクがあります。発行元の会社の経営状態が悪化するなどして、利払いや元本の償還が滞る可能性があり、最悪の場合は支払自体が行われないかもしれません。国が発行する債券である国債よりも、信用リスクは高いといえます。

価格変動リスク

満期日になるまで待たず、社債を売却することで利益を得ようとする場合、価格変動リスクがあります。債券価格は、日々変動するためです。もしかしたら、購入価格よりも低い価格で売却せざるを得ないかもしれません。

為替変動リスク

外国の社債を買い、外貨建てで取引を行った場合、為替変動リスクが伴います。外貨建て債券の利息や償還金は、その国の通貨によって支払われるため、円高になると受取金額が減ってしまうためです。

ただし円安になると、円での受取金額が増えることになります。

途中償還リスク

発行元となる企業の都合により、社債が満期にならないうちに償還されてしまうことがあります。すると、予定していた利益を受け取れなくなります。

途中償還リスクがあるのは、「コール条項」が付与された社債です。「期限前償還条項」とも呼ばれます。コール条項では、発行元となる企業が特定の条件を満たすと、満期前に社債を償還できる旨が示されています。

債券投資と株式投資の違い

ここまで、社債による投資を詳しく解説しました。投資としては、株式投資が代表的です。株式投資と債券投資の違いは、以下の3つです。

投資収益

債券投資では、満期日まで保有すれば受け取れる収益が、あらかじめ決まっています。一方で、株式投資によって得られる利益は、あらかじめ分かるものではありません。会社の業績によって、配当金等が支払われます。また、株を売却した場合には、購入価格と売価の差額が収益となります。

元本保証

債券投資では、満期日まで保有すれば、元本の全額を回収できます。一方で株式投資では、元本保証はありません。満期日もありません。株価が日々変動するため、売買益で利益を得られるようタイミングを見計らって手放すことになります。

リスク特性

株式投資の場合、景気の動向や発行元の企業の業績により、株価が変動します。よって、常に市場の動向をうかがう必要があり、売却のタイミングを逃すと大きな利益を失うかもしれないというリスク特性があります。

一方、債券は発行元の企業の業績が悪化しない限り、得られる利益は安定しています。大きなリターンを狙うことはできませんが、大きな損害を被る可能性も低いというリスク特性があります。

まとめ

以上のように、債券はあまり馴染みのない投資商品かもしれませんが、単なる預金よりも収益性は高く、株式よりもリスクの少ない投資方法です。

もし社債投資を始めたいと感じたら、金融機関で口座を開設することから始めましょう。額面金額と実際の発行金額、満期日までの期間、利率を確認し、利回りを計算して銘柄を比べます。銘柄選びの際には、利回りだけでなく、会社の信用度についてもしっかり調べて比較するのが大事です。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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