自宅を担保として金融機関から融資を受けるリバースモーゲージ。利用を検討しているけれど、「不動産の評価額が気になる」「リースバックで売却するのとどう違う?」と疑問に思う人もいるでしょう。リバースモーゲージの仕組みや利用条件、土地や建物がどう評価されるのか、利用するメリットや注意点について解説します。
まずは、リバースモーゲージの仕組みと利用条件について確認しておきましょう。取扱金融機関によって若干の違いがありますが、概要は以下の通りです。
リバースモーゲージは、自宅を担保に融資を受ける、高齢者を対象にしたシステムです。金融機関が取り扱っているほか、自宅を保有していて現金収入が少ない人向けに自治体が「不動産担保型生活資金」として行っています。
金融機関から借り受けたお金は、契約者が生存している間は毎月利息のみを返済します。契約者がお亡くなりになったら、相続人が自宅を売却するなどの方法で元本を返済します。
毎月の返済が利息のみなので、少ない負担で融資を受けることが可能です。また、担保となる自宅を手放すのは契約者の死後なので、自宅で生涯を全うすることができます。
融資限度額は担保となる自宅の価額を元に計算されます。無制限に借り入れができるわけではなく、決められた融資限度額の中で融資を受けることになります。
リバースモーゲージの利用条件はおおむね以下の通りです。ここでは、収入などの条件がとくに厳しい自治体のものではなく、多くの金融機関が採用している条件を取り上げます。
高齢者が老後資金を獲得するための仕組みとして運用されているため、若い世代はリバースモーゲージを利用できません。金融機関によって対象年齢が違いますが、おおむね50歳からと制限しているケースがほとんどです。
リバースモーゲージの利用を開始する年齢には上限があり、多くの金融機関で80歳までとなっています。
借入金は老後の生活費や旅行などのレジャー、家のリフォームなどに充てられます。事業目的や投資目的でなければ、使い道は自由です。
各金融機関とも対象エリアを持っており、エリア内にある不動産を条件としています。
年金収入などの安定した収入があることが条件です。
担保となる不動産の評価は金融機関によってさまざまですが、土地と建物、どちらを重要視しているかには共通した視点があります。
リバースモーゲージでは、多くの場合、土地の評価額を融資限度額の基準にしています。なぜならリバースモーゲージの対象物件は、契約者がお亡くなりになってから売却される不動産だからです。
建物は経年劣化していくものであり、建物の価額をもとに融資限度額を計算してしまうと担保割れのリスクが高まります。対して土地の価額はなかなか変化しません。よって、土地の評価額に応じて融資額を決めるのです。
土地を基準に融資額が計算されるとなると、一戸建てではなくマンションである場合はリバースモーゲージが利用できないのでしょうか。多くの金融機関が原則として一戸建てを対象にしていますが、例外もあります。
マンションも可としている金融機関は、担保評価額の高いマンションであれば検討可能としています。担保評価額が高くなるのは、以下のようなマンションです。
都市部の駅近物件など人気エリアのマンションであれば、利用できる可能性が高まります。
新しいマンションであればあるほど、利用できる可能性が高いでしょう。あらかじめ築年数に制限をかけている金融機関もあり、築年数が20年以上を過ぎると融資が難しくなります。
リバースモーゲージは老後資金に悩むシニア層の味方です。主なメリットには、以下の5つがあります。
一般に、金融機関からまとまった金額を借り入れるのは年齢が上になるほど難しくなります。返済能力が乏しいと判断されてしまうためです。
一方、リバースモーゲージはあくまでシニア層を対象としています。年齢を理由に融資を断られてしまった人でも、利用することが可能です。
リバースモーゲージでは、毎月の返済額が利息のみです。年金中心の生活で資金繰りが苦しい中でも、余裕を持って返済していくことができます。
通常、担保型のローンは期限内に返済を終えないと担保が差し押さえられてしまいます。リバースモーゲージであれば、契約者の存命中は担保となる自宅を差し出す恐れがないので、安心して暮らせます。※契約期限が設けられているリバースモーゲージもあります。
リバースモーゲージの融資方法としては、毎月一定金額を借り入れる年金方式と、最初にまとまった金額を受け取る一括方式、融資限度額までは必要なときに引き出せる都度方式が選べます。
毎月赤字になる部分を補填したいなら年金方式を選び、家のリフォームなどでまとまった金額がすぐに必要なら一括方式を選ぶなど、事情に合わせて融資方法を決めることが可能です。
リバースモーゲージを「自宅の売り先を先に決めておく」方法と捉えると、契約者の死後に空き家となるリスクを減らす対策であるといえます。空き家の管理は大変です。定期的に風を通さなければすぐ家が傷んでしまいますし、雑草や害虫対策も必須になり、相続人に多大な負担がかかります。あらかじめ売却先を決めておけば、空き家管理のストレスはなくなります。
便利なリバースモーゲージですが、注意すべき点もあります。以下の5点を踏まえておきましょう。
リバースモーゲージの目的はあくまで老後資金の確保です。生活費の他、家のリフォームや施設への入居費、子や孫への援助など使い道はある程度自由ですが、事業目的や投資目的では使えません。老後、事業を始めるために融資を受けたい人には向いていません。
リバースモーゲージには融資限度額があります。毎月一定額を受け取る年金方式を選ぶ人はとくに、長生きすると合計借入額が融資限度額に達してしまうかもしれません。長生きするかもしれない可能性を考え、ライフプランをあらかじめ立てておくのがおすすめです。
リバースモーゲージの多くは変動金利を採用しています。よって金利が上昇すると、毎月の返済額もアップする可能性があります。物価の変動等に応じて年金額も変動しますが、返済額の増額には追いつかず、家計が圧迫されるかもしれません。
契約者の自宅を担保とするので、相続人の了解を得なければなりません。なかには「思い入れのある実家を売りたくない」と考える子世代もいることでしょう。意見が対立すると、リバースモーゲージを利用できなくなってしまいます。
不動産の評価額はなかなか変化しませんが、エリア周辺の環境が変わることで上下する可能性もあります。よって評価額の定期的な見直しがなされます。土地の評価額が下がると、融資限度額も下がってしまう恐れがあります。年金方式を選んでいる人は、思ったよりも早く融資制限がかかるかもしれません。
自宅の土地の評価額はどうやって決まっているのか、興味を持つ人もいるでしょう。土地の評価額は、「公示価格」と「実勢価格」を基準に鑑定されます。
実際の評価額は鑑定を行う会社によって違います。また、周囲の公示価格や実勢価格が、そのまま自宅の評価額に反映されるものでもありません。しかしそれぞれの価格がどのように決まるか、自宅周辺の土地の価格はどのくらいなのかだけでも押さえておくと、自宅評価額の目安を大まかに知ることができるでしょう。
公示価格とは、国土交通省が毎年3月に発表する、土地取引の基準となる価格です。この公示価格を元に、各都道府県が土地取引の基準価格を定めたり、国税庁が相続税の基準となる路線価(公示価格の80%)を定めたり、東京都や市町村が固定資産税評価額(公示価格の70%)を算出したりします。
公示価格は、毎年1月1日時点の、1㎡当たりの価格を公示するものです。公示価格は以下のサイトで公表されています。ご自宅付近の調査地の地価を調べてみてはいかがでしょうか。
実際の土地売買における価格は、公示価格の通りとは限りません。売り主と買主との間で合意が成立した金額が、実際の取引価格となります。この取引価格を国土交通省が集約したものを、実勢価格といいます。いわば土地の時価です。
実勢価格は公表されており、国土交通省のサイトで任意の都道府県を検索すれば、一定時期に取引された実際の価格が表示されます。自宅の周囲の土地が実際にはどんな金額で取引されているのか、調べてみてはいかがでしょうか。
リバースモーゲージは一戸建てを所有している人向けの融資方法ですが、一定の条件によりマンションでも適用可能になる場合があります。自宅を対象エリアとしている金融機関に相談してみましょう。
なかには「どのくらい融資してもらえるか気になる」という人もいることでしょう。リバースモーゲージを行っている金融機関の多くは、無料での査定を行っています。まずは、自宅にどのくらいの価値があるかを調べてもらってみてはいかがでしょうか。