住宅ローンの返済が苦しいシニア層は、リバースモーゲージの利用を検討してみるのもいいかもしれません。リバースモーゲージは金融機関が取り扱う、自宅を担保とした資金融資の仕組みです。毎月の返済額は利息だけで、元金は相続人が担保となっていた自宅を売却するなどして一括返済します。リバースモーゲージの基本的な仕組みやメリットをご紹介しつつ、住宅ローンの返済中に利用可能か否かについて解説します。
リバースモーゲージの基本的な仕組みや利用条件は、以下の通りです。住宅ローンが残っている場合の条件も含めて解説します。取り扱う金融機関によって若干の違いがあるため、実際に検討する際は対象金融機関の条件をしっかり確認しましょう。
リバースモーゲージの基本的な仕組みは、以下の5点に要約されます。
リバースモーゲージは、契約者の自宅など不動産を担保としてお金を借り入れる融資の仕組みです。融資限度額は、担保となる不動産の評価額によって決まります。不動産評価額のおおよそ50%(高くて60%程度)が、融資限度額の上限となります。
一般的な担保型ローンは、期限までに借入金を返済しなければ担保を差し押さえられてしまいます。しかしリバースモーゲージでは、契約者はお亡くなりになるまで自宅に住み続けることができます。
※契約期限が定められているリバースモーゲージもあります。
リバースモーゲージには毎月一定額を借り入れる年金形式、一括してまとまった金額を借り入れる一括形式、融資が必要になるたびに限度額まで何度でも借り入れができる都度形式の3パターンがあり、希望に応じて借り入れ形式を選べます。
契約者の存命中は、利息の部分のみを返済します。元金部分を含まないため、比較的負担の少ない借り入れが可能です。住宅ローンは元本と利息を組み合わせた返済形式が一般的なので、リバースモーゲージに替えることができれば毎月の返済額が楽になります。
元金は、契約者がお亡くなりになったときに相続人が一括返済します。担保となっていた自宅を売却して返済するのが一般的ですが、他の不動産を売却するなど、違う方法で資金を用意して返済することも可能です。
リバースモーゲージの利用条件は、おおむね以下の通りです。
シニア層であることが条件になります。50歳以上80歳以下を対象としている金融機関がほとんどです。
シニア層向けなので、契約時に働いているか否かは問題になりません。年金収入などの長期安定的な収入源が確保されていれば、審査の対象になります。
多くの金融機関では担保物件が一戸建てであることが条件になります。ただし、都市部などマンションに高い資産価値のあるエリアなどは、マンションも対象としている金融機関もあります。
借り入れたお金の使い道は、事業目的や投資目的でなければ自由とされています。家のリフォームや住み替え、家計の補填、病気や介護の備え、子世代への援助まで幅広く使えます。
担保物件に住宅ローンが残っている場合は、リバースモーゲージで借り入れた資金などで住宅ローンを一括返済することが条件になります。担保の対象となる物件に抵当権がついたままでは、リバースモーゲージを利用することができないためです。住宅ローンを完済して抵当権を外し、改めて抵当権をつけることが必要になります。
住宅ローンが残っていても、借入資金による一括返済という形でリバースモーゲージへの借り換えが可能です。しかし住宅ローンが残っている状態でリバースモーゲージへ借り換えると、以下のようなリスクが発生する可能性があります。よく理解した上で検討しましょう。
住宅ローンを利用すると、ほとんどが団体信用生命保険(団信)に加入することになります。団信に加入すると、契約者がお亡くなりになった後はローンを返済する必要がありません。「団信は生命保険の代わりになる」といわれる由縁です。
しかしリバースモーゲージに借り換えると、団信に加入することができません。契約者がお亡くなりになった後は、同居の配偶者が返済を続けなければならなくなります。返済が苦しくなったら家を手放すしかなく、路頭に迷ってしまうかもしれません。
住宅ローンからリバースモーゲージに借り換えると、返済額は利息のみに切り替えられるため、毎月の返済額がぐっと減ります。しかし、途中で担保物件を売却しない限り、生涯にわたって利息を支払い続ける生活が続きます。長生きすると、返済合計額が借り換え前のローン残債を上回ってしまう恐れがあります。
なお、リバースモーゲージの多くは変動金利を採用しています。世の中の金利の動きに従って利息部分の金額も変化するため、金利が上昇すれば毎月の返済額がアップする可能性が高まります。返済額がアップし続けた結果、元金と利息の合計額がローン残債を上回るかもしれません。
担保不動産の評価額は定期的に見直されます。見直しの結果、評価額が下がれば融資限度額も下がってしまう可能性もあります。
もし住宅ローンを返済するために一括で融資限度額まで借り入れていたような場合は、新しい限度額と借入金の差額を返済しなければならないかもしれません。
住宅ローンが残っている段階でリバースモーゲージを利用したいのであれば、以下の3つに注意しましょう。
すでに一人暮らしであればあまり意識することはありませんが、夫婦2人暮らしの場合は、どちらかがお亡くなりになっても返済可能な金額を把握しておきましょう。毎月の返済額は利息部分であり、利息は変動する恐れがあるため、少し余裕を持って返済可能額を設定するのが大事です。
なお、契約者がお亡くなりになってしまったら、同居の配偶者がいるか否かにかかわらず契約が終了となってしまうリバースモーゲージもあります。その場合、配偶者は担保物件に住み続けることができなくなってしまいます。夫婦2人で自宅暮らしを全うしたいなら、契約者がお亡くなりになった後も配偶者が住み続けられる契約を選びましょう。
長生きは基本的におめでたいものであるべきです。しかしリバースモーゲージを利用すると、長生きすることで返済合計額がかさんでしまうリスクが生じます。90歳、100歳まで長生きしたときのライフプランを具体的に考えておきましょう。
リバースモーゲージの金利は変動制が主なので、毎月の返済額も変わります。よって正確なプランはなかなか描けませんが、あくまで今の返済額を基準に、返済合計額がローン残債額を上回ってしまう年齢をあらかじめ踏まえておきましょう。分岐点となる年齢が思っているよりも早く来てしまうようなら、後にご紹介するリースバックなども含めて検討し直した方がいいかもしれません。
自宅の評価額が下落する可能性を踏まえ、限度額いっぱいまで一括で借り入れるのは避けましょう。まずは住宅ローン返済に必要な分だけを借り入れることも可能ですし、年金形式の融資額を途中で減らしたり、ストップしたりすることもできます。上手にコントロールすれば、リバースモーゲージは生活の心強い味方になります。
リバースモーゲージには、ローン返済中の方にとって以下のようなメリットがあります。これまでご紹介してきたリスクや注意点とメリットを引き比べ、リバースモーゲージが自分に最適な方法かどうかを見極めてみましょう。
一般的な住宅ローンは、元金と利息を組み合わせて返済します。一方、リバースモーゲージは、月々の返済が利息のみです。元金部分は契約者がお亡くなりになった後に相続人が一括返済します。
よって生存中の返済金額は、一般的なローンをそのまま利用していくよりもぐっと抑えられます。家計にゆとりが生まれることで、老後資金への不安が和らぎます。
住宅ローンを一括返済しようとすれば、一般的には余剰不動産を売却したり、宝飾品などを手放したりしてまとまったお金をつくることが必要になります。大事な何かを失うことで生活を守る人が多いでしょう。
一方、リバースモーゲージであれば、売却するのは「契約者がお亡くなりになり、住み手がいなくなってからの自宅」です。自宅を担保に融資を受けても存命中は自宅に住み続けることができるので、生活は何も変わりません。
一般的な住宅ローンでは、ローンを返し終えれば自宅が残ります。しかしローンを返し終えたそのときには、すでに老人ホームへ住み替えるなどして住み手がいなくなっているかもしれません。また、住み手がお亡くなりになったら空き家となり、相続人は空き家を管理する責任を負います。
リバースモーゲージは、いわば家の売却先を生きているうちに決めておく方法です。相続人が空き家のリスクを負うことがなくなり、契約者としては自分が亡くなった後の心配事が一つ減ることになります。
住宅ローンの返済中でもリバースモーゲージを利用することができますが、その場合はローンの一括返済が条件になります。借入額で返済をまかなうことも可能です。借り換え後は、契約者存命中の返済負担がぐっと軽減されます。
先に家を売却してまとまった金額を得、買主と賃貸契約を交わすことで自宅に住み続けられる「リースバック」という方法もありますが、家賃がかさむこと、家の権利を手放してしまうことなどに不安を持つ人もいます。
お亡くなりになるまで家を手放すことなく、返済も楽になるリバースモーゲージは、住宅ローンを抱えるシニア層の強い味方です。まずは資料を取り寄せるなどして、一度検討してみてはいかがでしょうか。