2023年12月13日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージの手続きの流れや必要書類を解説!各銀行の商品も紹介

自宅を担保に金融機関から融資を受けるリバースモーゲージは、毎月の返済額が利息のみと負担が軽く、近年話題になっています。元金は相続人が担保不動産を売却して返済するため、ご存命中は自宅に住み続けられて安心です。リバースモーゲージの利用を検討している人のために、手続きの流れや注意点、必要な書類と取得方法、そして各銀行の商品をご紹介します。

リバースモーゲージの手続きの流れ

リバースモーゲージとは、自宅を担保に銀行などの金融機関から借入を行う融資の仕組みです。契約者のご存命中は利息のみを毎月返済し、元金は、契約者が亡くなった後に相続人が自宅を売却する等の方法で返済します。

リバースモーゲージは老後の資金調達を主な目的とする商品なので、利用者はおおよそ50歳以上のシニア層に限られています。また、金融機関によって対象としているエリアが違うため、どの金融機関からでも申し込めるわけではありません。

リバースモーゲージの手続きは、以下のような流れで行います。

まずは資料を入手し内容の詳細を確認する

リバースモーゲージの商品内容は金融機関によって若干の違いがあります。まずは金融機関のHP内にある資料請求フォームや電話、直接店頭に出向くなどしてリバースモーゲージの資料を入手しましょう。

資料を入手したら以下の条件をチェックして、自分が利用可能かどうかを調べます。

・対象年齢
50歳以上を対象とする金融機関が多く、 利用開始年齢の上限は80歳までとするケースがほとんどです。

・対象エリア
自宅の住所地が対象エリア内になければ申し込むことができません。

・対象物件
一戸建てだけを対象物件としている金融機関も多いため、マンションの人は要注意です。

・資金用途
リバースモーゲージの資金用途は、事業目的*や投資目的以外は自由です。
*リバースモーゲージの事業目的利用は金融機関によって異なります。

・借入利率
借入利率は毎月の支払額に直結する大事な要素です。複数の金融機関を比較して、選択の材料とするのもおすすめです。

・借入限度額と借入方法
評価額の何%を目安に借入が可能なのかを確認します。また、借入方法には毎月一定額を借り入れる「年金型」と、まとまったお金を一括で借り入れる「一括型」、必要になったときにその都度借り入れができる「都度引出型」があります(借入方法の名称は金融機関によって違います)。自分が希望する借入方法が可能かどうかを調べましょう。

・諸費用
手数料や登記費用など、必要となる諸費用について確認しておきます。

・元金返済方法
元金の返済方法には、相続人が担保不動産を売却したとき元金に届かない部分があれば補填しなければならない「リコース型」と、補填の必要がない「ノンリコース型」があります。現在ではノンリコース型を選ぶ人が増えています。

・契約者がお亡くなりになっても配偶者が住み続けられるかどうか
契約者がお亡くなりになったらすぐに自宅を売却しなければならない契約にすると、配偶者が困ってしまう場合があります。配偶者がそのまま住み続けられる契約にできるかどうか、資料の範囲で確認できるようであれば押さえておきましょう。

カウンセリングにより審査に進むかどうかを決める

可能であれば複数の金融機関の商品を比較した後、自分に適していると感じた商品があれば電話などでカウンセリングの予約を取りましょう。カウンセリングには契約者の他、配偶者や法定相続人全員を代表する相続人が同席すると理想的です。

店舗で担当者から直接商品の説明を受け、必要に応じて利用目的や家計の状況を開示しながらリバースモーゲージを利用可能かどうか相談します。
※金融機関によって対応していない場合があります

審査

各金融機関により審査を行います。担保となる不動産の評価額を算出し、融資の限度額を決定します。また、年金などの安定した収入があるかどうか、他にローンを抱えている場合はローンの返済計画がしっかりしているかが審査されます。

審査期間はおよそ2週間~1ヶ月程度です。

契約

審査が下りたら金融機関から連絡があり、融資限度額や毎月の借入額、返済額などについて説明されます。納得した場合契約書に署名、捺印し、取引成立です。保証会社を設定するため、保証人は不要となります。

融資実行

契約時に指定した借入方法にて融資が実行されます。都度引出型を選んだ場合は、店頭やATMなどで借り入れが可能となります。ただし、金融機関によってはATMを利用できない場合もあるため注意が必要です。

リバースモーゲージの手続きに必要な書類

リバースモーゲージのカウンセリングや審査に必要な書類は、おおむね以下の通りです。詳細は金融機関によって違いがあるため、電話などでしっかり確認しましょう。

身分証明書

運転免許証やパスポート、健康保険証など本人確認ができる書類が必要になります。

収入を証明する資料

前年度の確定申告書のコピーや源泉徴収票、ねんきん定期便、年金裁定通知書など、現在の収入が確認できる書類が必要です。

物件を証明する資料

登記簿謄本など、担保候補となる物件の詳細がわかり、紛れもなく契約者の持ち物であることを証明するための資料が必要です。

担保関係書類

他にローンを抱えている場合は、どんなローンがいくら残っているか、担保不動産に抵当権が設定されていないかを確認できる書類が必要になります。

リバースモーゲージの手続き時の注意点

リバースモーゲージの手続きを進める際は、以下に注意しましょう。

事前に相続人全員の了解を得ておく

リバースモーゲージでは、最後に相続人が担保不動産を売却するなどの方法で元金を返済します。自宅を継がせられないことをきちんと相続人全員に説明し、了承を得ておきましょう。

親の側が「空き家となる自宅を継ごうと思う子どもなんていない」と考えていたとしても、子どもの側は「思い出深い実家を売るのは辛い」と感じている場合があります。老後のための資金が必要なこと、そのためには誰も継ぎ手のいない家を売却するのが最良の手段であることをきちんと説明するのが大事です。

また、契約者の逝去後は相続人が売却手続きをしなければなりません。手続き方法について親側もしっかり把握し、相続人に依頼できるようにしておきましょう。

相続登記を完了させておく

もしかしたら、家の名義がまだお亡くなりになった親のままの人もいるかもしれません。リバースモーゲージを利用するためには、担保不動産が契約者本人のものであることが必須条件となります。カウンセリングを受けるまでに、自宅の所有権を契約者本人に移す登記変更を完了させましょう。

相続で不動産を引き継ぎ、その不動産の名義を相続人へ移し替えることを「相続登記」といいます。令和6年4月からはこの相続登記が義務化され、相続により所有権を得たことを知った日から3年以内に行わなければならなくなります。早めに終わらせるのがおすすめです。

可能な限りローンの返済を終えておく

他にローンを抱えていると、審査に影響する恐れがあります。できれば早めに他のローンを返済し、身軽な立場で審査を受けましょう。

銀行が取り扱うリバースモーゲージ

最後に、リバースモーゲージの具体例として複数の銀行が取り扱う商品をご紹介します 。このほかにも全国にリバースモーゲージを取り扱っている金融機関がありますので、気になる人は調べてみましょう。
※全て2023年9月現在の商品情報です。

楽天銀行

楽天銀行のリバースモーゲージは全国を対象とし、50歳から利用可能です。融資可能額の上限は1億円で、資金用途は原則自由です。公式サイト上から事前審査を申し込むことができ、来店せずに担保物件の評価額を仮に確かめることができます。

参考:https://www.rakuten-bank.co.jp/loan/reverse-mortgage/

りそな銀行

りそな銀行のリバースモーゲージの商品名は「あんしん革命」です。50歳以上から利用できます。用途を住宅関連に限る「不動産購入プラン」と、事業や投資目的でなければ使い道が自由な「ライフイベントプラン」があります。

不動産購入プランは、新築や中古物件の購入、セカンドハウスの購入、リフォーム、老人ホームへの入居一時金、子世帯などが住む住宅の購入などに借入金を利用できます。借入金額の上限は8,000万円で、審査の上決定した融資限度額の範囲になります。

ライフイベントプランの借入金額の上限は1億円です。こちらも審査の上決定した融資限度額の範囲になります。

参考:https://www.saitamaresona.co.jp/pdf/anshin_kakumei.pdf

東京スター銀行

「充実人生」という商品名でリバースモーゲージを展開しています。首都圏・関西圏・主要都市に自宅を保有している、55歳以上84歳以下の人が対象となります。毎月借りた分の利息を支払う「利払いあり型」と、利息が借入残高に組み入れられていく「利払いなし型 」があります。「利払いなし型」は70歳以上が利用の対象とになります。

利払いあり型は年収120万円以上の人が対象となります。利払いなし型に年収制限はありませんが、担保評価額が戸建ての場合は2,000万円以上、マンションの場合は3,000万円以上の物件が対象となります。

参考:https://www.tokyostarbank.co.jp/products/loan/reverse_mortgage/

三井住友銀行

三井住友銀行では、リバースモーゲージの返済方式を採用した住宅ローンである「リ・バース60」を利用可能です。50歳以上を対象としていて、現在のローンを借り換える目的で契約する「借り換え新時代」と、新築や中古物件に住み替えることを前提とした「住み替え新時代」という名称の商品があります。

自宅の住所地が、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県大津市・草津市・守山市・栗東市・野洲市、福岡県福岡市にある人が対象となります

三井住友信託銀行

「不動産活用ローン」という商品名で展開されています。東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・愛知県・大阪府・京都府・兵庫県の、評価額4,000万円以上の担保不動産を対象としたリバースモーゲージです。対象年齢は55歳以上で、三井住友信託銀行の遺言信託を利用できる人が利用可能となります。

遺言信託とは、遺言執行者として信託銀行を指定しておくことで、いざというとき信託銀行が遺言書にあるとおりに財産分割などを行うサービスです。相続トラブルを未然に防止し、資産の総合的な管理に役立ちます。

資金用途は、事業目的や投資目的でなければ自由です。

SBI新生銀行

建て替えやリフォーム、借り換えなど住まいに関する用途のみで利用可能な、リバースモーゲージ型住宅ローンを展開しています。年齢条件は60歳以上です。

借入金額は500万円以上、最高8,000万円までで、年一回の安否確認付きです。

みずほ銀行

資金の使い道を住宅関連に特化した「みずほリ・バース60」という商品があります。リバースモーゲージの主流である変動金利方式に加え、固定金利選択方式も利用可能です。また、500万円以上利用時には個人賠償責任保険と弁護士費用補償保険の2つの保険が自動付帯されます。

年齢条件は60歳以上で、最高融資額は8,000万円です。

まとめ

以上、リバースモーゲージの手続きについて詳細をご紹介しました。複数の銀行について取扱商品の特徴を簡単にご案内したため、サービスの具体的なイメージが湧いたのではないでしょうか。

気になる金融機関があれば資料を取り寄せ、詳しく調べてみましょう。来店しカウンセリングを受けるまでに配偶者や相続人と一緒に資料を読み、各人の疑問や不安を解消しておくのが理想です。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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