2023年12月13日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージの利用者数は増加している?「リ・バース60」も解説

自宅を担保に融資を受け、契約者が存命中は金利だけを返済するリバースモーゲージ。利用者数は年々増加しているといわれています。リバースモーゲージの住宅ローン版ともいえる「リ・バース60」も伸びているようです。契約した人は、リバースモーゲージをどのように利用しているのでしょうか。また、「リ・バース60」との違いはどこにあるのか詳しく解説します。

リバースモーゲージの利用者数

リバースモーゲージは、近年注目されているシニア層向けの融資システムです。自宅を担保に金融機関から融資を受け、契約者が存命中は金利のみを返済します。契約者がお亡くなりになったら、相続人が自宅を売却する等の方法で元金を返済します。毎月少しの負担で、お亡くなりになるまで住み慣れたわが家で暮らせるため、誰も相続しない持ち家のあるシニア層には検討の余地があります。

フィナンシャルドゥでは、2022年6月末に金融機関に対するリバースモーゲージの保証残高件数が累計800件を突破しました。ほんの6年前である2018年5月には103件の実績だったため、1年につき120件ずつ実績を伸ばしていった計算になります。

また、国土交通省が全国の金融機関に対して実施した「民間住宅ローンの実態に関する調査」によれば、住宅ローンのラインアップとしてリバースモーゲージについて聞いた設問で「現在、商品として取り扱っている」「商品化を検討中」を合わせた割合が増えています。令和2年度調査の39.5%から、令和3年度調査では46.3%と大きく伸びを見せました。


さらにリバースモーゲージの住宅ローン版といえる「リ・バース60」も、申請者が増加しています。「リ・バース60」の融資システムを取扱金融機関に提供している住宅金融支援機構の調査によると、「リ・バース60」の付保申請戸数※が順調に伸びているという結果になりました。

住宅金融支援機構プレスリリース「【リ・バース60】の利用実績等について(2023年4月~6月分)より調査結果を抜粋し表を作成
※付保申請……住宅融資保険を付保するために、事前に取扱金融機関から住宅金融支援機構に申請があったもの

表からは、2018年以降ぐっと申請戸数が伸びていった経緯がみてとれます。実は、2018年は「リ・バース60」において「ノンリコース型」が導入された年。不動産価格が下落するなどして相続人が自宅の売却益では元金を返済できない事態になったとき、売却益以外に債権の取り立てが及ばない契約形態を「ノンリコース型」といいます。より気軽に利用できるようになったことで、「リ・バース60」は利用者数を伸ばしてきたといえます。

リバースモーゲージの利用用途

リバースモーゲージを契約する人は、融資された資金をどのように使うのでしょうか。例えば、以下のような使い道があります。

・家計の補助として
年金だけでは家計を賄えない場合に、毎月一定額を借り入れることで家計のやりくりが楽になります。働きたくても働けないシニア層にとってはありがたい融資システムです。

・家のリフォーム代として
家が傷んできたものの、修繕費が足りないといった事態にもリバースモーゲージは役立ちます。まとまったお金を一括で借り受け、老後のためバリアフリー住宅にすることも可能です。

・事故による入院や家の修繕など突発的な出費に
リバースモーゲージでは、一括借り入れや定期借り入れだけでなく、資金が必要になったときに都度引き出しをする契約を選ぶことも可能です。事故や病気での入院費用や手術費用、雨漏りや水回りの故障など家の修繕が必要になったとき、融資を受けられます。

・子や孫への支援資金として
子や孫が資金を必要としているときに、一括して資金を借り受けることが可能です。

なお、事業目的*や投資目的では、リバースモーゲージは使えません。知っておきたいポイントです。
*リバースモーゲージの事業目的利用は金融機関によって異なります。

「リ・バース60」の資金用途については、住宅金融支援機構の調査から利用実態がわかります。
住宅金融支援機構プレスリリース「【リ・バース60】の利用実績等について(2023年4月~6月分)より調査結果を抜粋し表を作成

注文住宅や新築マンションなど、新たに住居をつくるため「リ・バース60」を利用する人が約半数。ローン借り換えのために利用する人も22%と、大きな割合を占めています。リバースモーゲージはひとまず金利のみを返済していく仕組みなので、借り換えを行えば一般的なローンよりも月々の返済額が楽になりやすいのです。

「リ・バース60」とは?

この記事では、これまで「リ・バース60」を「リバースモーゲージの住宅ローン版」と表現してきました。「リバースモーゲージとどう違うの?」「一般的な住宅ローンとの違いは?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

ここで改めて「リ・バース60」についてご案内します。

「リ・バース60」の特徴

「リ・バース60」は、住宅金融支援機構と提携している金融機関が提供する、シニア層が利用できる住宅ローンです。自宅を保有しているシニア層が「今の家から住み替えたい」「リフォームしたい」などと考えたとき、住宅ローンとして利用できます。

「リ・バース60」のローン返済は、リバースモーゲージの仕組みを利用しています。ローンの契約者は自宅を担保に融資を受け、毎月支払うのは利息のみで、元金は契約者がお亡くなりになった後に相続人が担保物件を売却するなどして返済します。

このようにリバースモーゲージと「リ・バース60」の基本的な仕組みは同じですが、資金用途は大きく違います。リバースモーゲージは投資や事業目的でなければ使い道は自由です。一方、「リ・バース60」は住宅ローンのため、マイホームの取得やリフォーム、住宅ローンの借り換えなどといった住居関連の目的にしか使えません。

メリット

「リ・バース60」の最大のメリットは、毎月の返済額が抑えられていることです。

一般的な住宅ローンを利用するときは、元金と金利を組み合わせて返済します。先に利息だけを払い続けるようなことはできません。「リ・バース60」は住宅ローンでありながら、契約者の存命中は利息のみを支払うシステムなので、家計を過度に圧迫しません。年金生活者でも安心してローンが組めます。

また、一般的な住宅ローンは開始年齢が遅いほど返済期間が短くなり、審査に通りにくくなります。一方で「リ・バース60」の利用対象者はシニア層です。高齢であっても審査が通りやすくなっています。

デメリット

「リ・バース60」では、一般的な住宅ローンで加入できる「団体信用生命保険」(団信)に加入できません。団信とは、契約者がお亡くなりになったり高度障害になったりしたら、以後ローンを支払う必要がなくなる保険です。「リ・バース60」を利用すると、契約者がお亡くなりになっても返済額はゼロになりません。一般的な住宅ローンと比べてどちらがよいか、また借り換えをすべきかどうか迷っている人は注意が必要です。

また、「リ・バース60」は担保となる自宅の評価額をもとに融資の限度額が決められますが、限度額は担保評価額のおよそ50~60%です。マイホームの買い換えをと考えている人は、自己資金が必要になる可能性があります。

まとめ

以上、リバースモーゲージや「リ・バース60」の利用状況等についてお伝えしました。近年注目されてきているリバースモーゲージは、じわじわと利用者数や取扱金融機関数を増やしています。お住まいの地域にも、取扱金融機関があるかもしれません。興味がわいたら、まずは直接相談に出かけてみましょう。

奥山晶子

リバースモーゲージ商品を見る
ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
金融機関を探す
Related

関連記事