2023年12月25日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージの意味とは?概要や種類などメリデメと注意点も解説

自宅を活用した融資方法と聞き、リバースモーゲージのことが気になっている人も多いでしょう。リバースモーゲージは、自宅を担保に融資を受けるシニア層向けの資金調達方法です。契約者が亡くなるまで自宅に住み続けることができ、生前の返済は利息のみなので負担が楽です。リバースモーゲージの詳しい仕組みや活用方法、メリット、デメリット、リバースモーゲージに向いている人について解説します。

リバースモーゲージの意味とは?

リバースモーゲージの「リバース」は「逆」、モーゲージはおおむね「不動産を担保としたローン」という意味です。不動産を担保としたローンの代表格として、住宅ローンが挙げられます。よってリバースモーゲージは「逆の住宅ローン」と言い表せます。

「逆の住宅ローン」とは、どんな意味なのでしょうか。一般的な住宅ローンは、住宅購入に必要な金額を一括で借り入れ、徐々に返済することで借入残高が減っていきます。対してリバースモーゲージは、月々、あるいは一括で借り入れた金額を最後に一括返済します。借入金額がだんだん減るのではなく増えていくため、「逆の」という言葉がつけられているのです。

リバースモーゲージの概要や具体的な仕組みについて、順に解説します。

リバースモーゲージの概要

リバースモーゲージとは、自宅を担保に金融機関から融資を受け、契約者が亡くなってから相続人が自宅を売却するなどの方法で、借り入れた元金を返済する融資方法です。契約者の存命中は、月々利息のみを返済します。

リバースモーゲージは基本的にシニア層を対象としており、多くの金融機関が50歳以上、55歳以上といった年齢条件を掲げています。

少子高齢社会となった日本には、継ぎ手のいない自宅を持ったシニア層がたくさんいます。一方で年々物価が上昇しており、年金だけでは暮らしをまかなえないと不安を抱えている人も多いでしょう。

リバースモーゲージは、多くのシニア層にとって最大の資産である自宅を活用して融資を受け、老後におけるお金の安心を得るための方法といえます。

リバースモーゲージの仕組み

リバースモーゲージの仕組みを、利用の流れでご案内します。

まずは金融機関から自宅の評価額を査定してもらい、融資限度額が決定します。なお、多くの金融機関は一戸建てを対象としています。マンションはおおむね対象外ですが、利便性の高い土地にあるなど資産価値がとくに高ければ審査対象とする金融機関もあります。

契約者は融資限度額までであれば何度でも融資を受けることができます。大きな金額を一括で借り入れする「一括方式」、毎月一定額を借り入れする「年金方式」、必要になったらその都度借り入れを行う「都度借入方式」があります。

毎月の返済は、全体の借入金額に応じた利息部分だけを支払います。元金部分は、契約者が亡くなった後に、相続人が担保となっていた自宅を売却するなどの方法で一括返済します。

リバースモーゲージの種類

リバースモーゲージには、以下の3つの種類があります。

・金融機関が取り扱うリバースモーゲージ
多くの銀行や信用金庫が、リバースモーゲージを自社商品として展開しています。リバースモーゲージで借り入れたお金の使い道は、投資目的でなければ自由です。ただし事業目的をNGとしている金融機関が多くあります。

・金融機関が取り扱う「リ・バース60」の仕組みを利用したリバースモーゲージ
「リ・バース60」とは、リバースモーゲージ型の住宅ローンです。基本的にはリバースモーゲージの仕組みを利用していますが、利用目的は住宅の取得やリフォームなどの住宅関連に限られ、家計の補填などの目的では使えません。

・社会福祉協議会が取り扱うリバースモーゲージ
都道府県の各社会福祉協議会が実施している「不動産担保生活資金」という制度です。高齢者の自立支援を目的とし、市町村税の非課税世帯または均等割課税世帯程度の所得世帯を対象としています。あくまで生活支援の一環なので、旅行資金などを借りることはできず、家計の補填のために役立てるのが目的です。

リバースモーゲージの利用用途

金融機関が取り扱うリバースモーゲージは、利用用途を比較的自由に決められます。以下のような目的で資金を活用する人が多いでしょう。

老後の生活資金や医療・介護費用

年金暮らしになると極端に収入が減ります。毎月の家計の補填としてリバースモーゲージを活用するひとがいます。また、高齢になると医療や介護に関する費用がかさみます。

老人ホームの入居一時金

自宅を残しながら老人ホームに入居したいと希望する場合は、リバースモーゲージが便利です。思い出が残る家財をすぐ処分せずに済みますし、家族が集まる場所として自宅を活用することも可能です。

自宅のリフォーム費用

「自宅に長く住みたいけれど家が傷んでリフォーム費用がかさむ」「バリアフリーのリフォーム費用が捻出できない」といった事情に、リバースモーゲージは適しています。

住宅ローンの残債の支払い

リバースモーゲージでまとまった金額を借入れ、住宅ローンの残債の支払いに充てることができます。つまり実質的な借り換えが可能です。リバースモーゲージであれば契約者の存命中は利息のみの支払いとなるため、ローン返済の負担が軽くなります。

趣味やレジャーへの活用

リバースモーゲージで得たお金を、第二の人生を謳歌するために活用することが可能です。趣味やレジャーが充実すれば、活き活きとしたシニアライフを送れるでしょう。

子どもへの生前贈与

50代~60代の方々の子世代は、20代から40代。家を建てたり子どもが進学したりする関係で、ちょうどお金がかかる時期といえるでしょう。「自分たちの死後に遺産を相続させるよりも、早いタイミングで子世代に生前贈与したい」と考える人に、リバースモーゲージは適しています。

リバースモーゲージのメリット

リバースモーゲージには、メリットとデメリットがあります。メリットを自分にとって大いなる利点と考える人や、デメリットを回避できる、または理解納得のうえ利用できると考える人は、リバースモーゲージを検討しましょう。

シニア層でもまとまった金額の融資を受けられる

住宅ローンを含め、一般的なローンは高齢になるほど審査が通りにくくなります。一方でリバースモーゲージはシニア層を対象とした融資の仕組みです。年齢が障壁となり一般的なローンでは借り入れが難しい人も、リバースモーゲージであれば利用できる可能性があります。

亡くなるまで家を手放さずに済む

リバースモーゲージは、契約者が亡くなるまでは担保となる自宅が回収されません。つまり、なくなるまでずっと住み慣れた家で暮らせます。※契約期間が決まっているリバースモーゲージもあります。

自己資産に手をつけることなく家のリフォームができる

年金暮らしのシニア層は、持ち家が傷んできても、まとまった金額をリフォームに充てることを躊躇してしまいがちです。しかしリバースモーゲージで得たお金をリフォーム代に充当させれば、自己資産が目減りする心配はありません。

返済負担が抑えられている

リバースモーゲージの返済は、契約者の存命中は利息のみです。月々の返済額に元金が含まれないので、他のローンよりも返済額を抑えることができます。年金暮らしのシニア層にとって、月々の負担が少ないのは嬉しいことです。

終活の一環になる

昨今、相続人の手入れが行き届かず荒れてゆく空き家が問題視されています。継ぎ手のいない自宅は、相続人にとって重荷です。リバースモーゲージによって家の売り先を決めておけば、相続人は空き家の管理をせずに済みます。

リバースモーゲージのデメリット

マンションが対象外となるケースが多い

多くの金融機関が、リバースモーゲージにおいては一戸建てを対象としています。マンションでも資産価値が高ければ対象となる可能性がありますが、資産価値が低いマンションの場合は対象外となるか、審査対称となっても融資可能額が低くなってしまう可能性が高いでしょう。

担保割れのリスクがある

担保となる自宅は定期的に再評価されます。評価の結果、以前よりも評価額が下がってしまったら、融資限度額も下がります。結果、借入金額が融資限度額を上回ってしまう担保割れとなる可能性があります。

リバースモーゲージの契約形態には、担保割れとなっても相続人が差額を返済する必要のない「ノンリコース型」があります。差額の返済が必要な「リコース型」よりも金利が高く設定されますが、相続人に迷惑をかけられないと考えるなら、ノンリコース型がおすすめです。

融資限度額に達したらあとは借り入れができない

リバースモーゲージでは、自宅の評価額を元に融資限度額が計算され、融資限度額に達した後は借り入れができません。年金方式で借入れをしている人は、想定外に長生きすると融資限度額に達してしまうリスクがあります。

生存中は利息の支払いが続く

元金の返済が契約者の死後ということは、生存中は利息の支払いが続くということです。年金形式の場合、借入総額は増えていくため、それに応じて返済金額は増えていきます。限度額まで借り入れた場合、毎月の支払額はいくらになるのかを試算しておくのがおすすめです。

元金を分割払いにできない

元金は契約者が亡くなった後、相続人が一括返済する必要があります。生前に元金部分の返済を終えておくことも可能ですが、やはり一括で支払わなければなりません。証書貸付の場合は元金部分の一部を支払って利息を抑え、月々の返済を楽にすることはできません。

リバースモーゲージの注意点

リバースモーゲージを利用したいと考えたら、以下の5つに注意しましょう。

同居人の制約に注意

リバースモーゲージでは、担保となる自宅の同居人に制約が設けられている場合があります。例えば、配偶者のみが認められ、子や孫が同居していると利用できないなどです。その理由としては契約者が亡くなった後、速やかに売却が進むようにするためです。

相続人の了承に注意

担保となる自宅を相続する予定の人が了承しなければ、リバースモーゲージは利用できません。元金返済時にトラブルが発生するのを避けるためです。相続人にはしっかり説明しておきましょう。

金利の動きに注意

リバースモーゲージのほとんどが、変動金利制です。変動金利制とは、金利が固定されずに、世の中の金利の動きに従ってリバースモーゲージの金利も上下するということです。金利が上昇すると利息が上がり、毎月の返済額がアップします。

融資限度額の決め方に注意

融資限度額は自宅の評価額によって決められますが、評価額がそのまま融資限度額になるわけではありません。融資限度額は、自宅評価額のおよそ割から6割です。

契約開始年齢の制限に注意

リバースモーゲージはシニア層向けの商品ですが、契約開始年齢には上限があります。多くの金融機関では、契約開始年齢の上限を80歳としています。

リバースモーゲージを利用すると良い人

以上のメリットやデメリット、注意点をふまえた上で、リバースモーゲージを利用すると良い人についてまとめました。

老後資金に不安を抱えている人

リバースモーゲージはシニア層が利用でき、生存中は返済額が抑えられている資金調達法です。年金だけでは家計が成り立たないと感じている人、病気やケガ、家の修繕などいざというときのためのまとまった金額が用意できない人など、老後の資金に不安のある人におすすめです。

自宅の継ぎ手がいない人

自宅の継ぎ手がいないのであれば、自分や配偶者のためにも、子世代のためにも、リバースモーゲージを検討するのがおすすめです。将来の空き家問題が一挙解決するうえ、自分たちが使えるお金が増えます。

まとめ

以上、リバースモーゲージの意味や概要、メリット・デメリット、リバースモーゲージに向いている人などについて解説しました。リバースモーゲージの全体像を把握していただけたかと思われます。

リバースモーゲージを取り扱っている金融機関には、それぞれ対象エリアがあります。リバースモーゲージを検討したいと考えたら、お住まいの地域をリバースモーゲージの対象エリアにしている金融機関を探し、資料を取り寄せましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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