おひとりさまの女性は将来の不安に駆られることがあります。「老後資金が足りなかったらどうしよう?」など疑問を抱えていませんか。老後には、生活費の他に自宅の修繕費用や医療介護のための資金が必要になります。早いうちからNISAやiDeCoなどの資産運用を駆使して資金を確保するのがおすすめです。女性の一人暮らしにどのくらいお金が必要なのか、どう資金を準備するか、そして実際に資金に困ったときどうすべきかを解説します。
老後、女性の一人暮らしにはいくらかかるのでしょうか。総務省統計局が毎月行い、年ごとに資料をまとめている「家計調査報告」では、高齢者世帯の収支について平均的なデータを確認することができます。
令和5年版のデータでは、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の月平均実収入は12万6,905円、可処分所得は11万4,663円となりました。消費支出は14万5,430円で、支出が収入を上回っています。不足分は、3万768円です。
※家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要(総務省統計局)より
不足分の3万円は、預貯金でまかなうしかありません。1ヶ月につき3万円なので、1年で36万円の蓄えが消えていくことになります。日本人女性の平均寿命は87歳なので、65歳から22年間生きるとすると、792万円の蓄えが必要です。
なお、基本的な生活費だけでなく、突発的な支出に備えるための資金がなければ不安でしょうがないでしょう。バリアフリーへのリフォーム費用、古くなった家屋の修繕費、施設への入居費用など、まとまったお金が出ていくシーンはたびたびあります。
バリアフリーの規模や入居する施設によって必要な資金は変わりますが、手すりの設置や段差の解消に加え浴室の入れ替えなど大がかりなバリアフリーを含めて検討するなら、150万円以上は確保しておくのがおすすめです。施設に入居する場合の初期費用は、安ければゼロ円、高ければ数百万円と、施設の種類やサービス内容によってかなり開きがあります。
また、おひとりさまには入院や介護のときに付き添ってくれる身内がいません。身元保証会社などと契約を結び、いざというとき身元保証や身元の引き受けをしてもらうよう依頼することになります。身元保証サービスを利用するときは、当然ながらお金が必要です。いざというときの身元保証から死後の手続きまで依頼すると、100万円前後のお金がかかるとみていいでしょう。
よって、お一人様女性が老後にお金の不安なく過ごすためには、792万円の蓄えでは足りません。個々の事情にもよりますが、少なくとも1,000万以上、できれば1,500万円ほどあると理想的という結論になります。
女性の一人暮らしに必要な老後資金の備え方には、主に以下の5つがあります。
定期預金は、最も一般になじみのあるお金の貯め方です。最初に預け入れ期間と預ける金額を決めたうえで金融機関に定期預金を申し込めば、普通預金よりも高めの金利がつきます。
今、金利はかなり低めの状態なのでそこまでお得感はありませんが、気軽に手を出せないお金として一定額を分けておくことができるため、「計画的に貯金ができない」「あればあるだけお金を使ってしまう」といった悩みのある人にはおすすめです。
今、まとまったお金があり、「この金額を老後までとっておきたい」と感じる人は、定期預金の利用を考えてみましょう。
まとまった金額を一括で金融機関に預け入れるのではなく、毎月少額ずつをコツコツ預け入れていくのが定期積立です。今はまとまったお金がないけれど将来に備えたい人、今取引のある銀行口座で手軽に積立を始めたい人などにおすすめです。
会社員として働いている人は、勤務先が行っている財形貯蓄制度を利用するのもいいでしょう。財形貯蓄とは、会社員が事業主を通じて、給料天引により定期的に積み立てていく貯蓄制度です。積み立てたお金は、60歳以降の契約時に定めた時期から年金として支払を受けられます。
給料天引なので、意識せずとも老後資金を準備することが可能になります。また、利子等に対する非課税措置があります。投資などお金を増やすことを極力意識せず、会社の制度を使ってコツコツ貯めたい人におすすめです。
iDeCoは「個人型確定拠出年金」の愛称で、私的年金の一種です。自分で申し込んで掛金を拠出(掛金を払い込むこと)し、自分で選んだ運用商品によって掛金を運用し、将来、年金として受け取ります。運用成績が良ければ、拠出金額よりも受取額が増えるのが魅力の一つです。
また、iDeCoは掛金の全額が所得控除の対象となり、運用益も非課税となるため、利益をそのまま再投資に活用できます。節税効果の高い私的年金といえるでしょう。ただ、60歳以降にならないと年金を受け取れないという縛りがあるため、収入が不安定な人は少額の拠出がおすすめです。
NISAは、少額からの投資をする人のための少額投資非課税制度です。金融機関にNISAの口座を開設し、口座内でNISA用の取引をすることになります。年間投資枠には制限がありますが、投資で得た運用益には税金がかからないため、節税効果が高い投資方法といえます。
コツコツと少しでもお金を増やしたい人や、年金用にお金を積み立てたいけれど老後まで引き出せないのは不安という人に向いています。NISAは年金制度ではないため、60歳以前であっても引き出せるためです。財形貯蓄やiDeCoとの大きな違いとなります。
では、女性の一人暮らしに必要な老後資金は、いくつから準備し始めるべきなのでしょうか。「今すぐからでも、なるべく早く」と言いたいところですが、理想的なのは40歳から、遅くとも50歳までには始めましょう。準備を始める年齢が早ければ早いほど、準備負担が軽くなります。
定年を迎え、以降は給料が下がってしまうと考えられる60歳までに老後資金を準備すると仮定します。そして必要最低額といえる1,000万円と、理想的な金額である1,500万円で、月々どれほど準備すればよいかシミュレーションしてみましょう。
【60歳までに1,000万円を準備するためのシミュレーション】
年齢 |
60歳に達するまでの月数 |
1ヶ月に必要な準備資金 (1,000円以下四捨五入) |
40 |
240 |
4万2,000円 |
43 |
204 |
4万9,000円 |
45 |
180 |
5万6,000円 |
48 |
144 |
6万9,000円 |
50 |
120 |
8万3,000円 |
【60歳までに1,500万円を準備するためのシミュレーション】
年齢 |
60歳に達するまでの月数 |
1ヶ月に必要な準備資金 (1,000円以下四捨五入) |
40 |
240 |
6万3,000円 |
43 |
204 |
7万4,000円 |
45 |
180 |
8万3,000円 |
48 |
144 |
10万4,000円 |
50 |
120 |
12万5,000円 |
もちろん、NISAやiDeCoなど運用益の見込める制度を活用したり、株式などで個人投資を行ったりすれば、このシミュレーションよりも少ない金額で老後資金が準備できる可能性があります。
どうしても老後資金が貯められないときや、老後、実際にお金の面で困ってしまったときは、以下の制度の利用を検討しましょう。
持ち家がある人は、自宅を大きな資産として考えましょう。自宅を担保に生活資金を借りられるのが、不動産担保型生活資金です。一部の都道府県社会福祉協議会が実施主体となり、シニア層の生活困窮者を対象に貸し付けを行っています。
貸付期間は、契約者がお亡くなりになるまでの間か、もしくは貸付金額が上限に達するまでの間です。貸付金額の上限は、担保となる自宅の評価額をもとに決められます。計画的に利用すれば、ずっと自宅に住み続けることが可能です。
ただ、公的な制度なので収入条件は厳しく、低所得者層と認められなければ利用できません。また、お住まいのエリアが制度の対象ではない可能性もあります。
民間の金融機関でも自宅を担保としたシニア層向けの融資の仕組みがあり、「リバースモーゲージ」と呼ばれています。リバースモーゲージでは、収入面について大きな縛りはなく、年金など安定した収入があれば審査対象になります。公的制度と民間の商品、いずれも視野に入れて検討しましょう。
高齢者を含めすべての世代の生活困窮者を対象に、自治体の支援センターなどが窓口となって自立支援を行っています。相談すると、就労支援や就労訓練、家計相談支援を含め、困窮状態から立ち直れるよう支援員がアドバイスを行います。
健康で働く意欲のある人はとくに、自立支援制度の利用を検討してはいかがでしょうか。若いうちに老後資金が準備できなくても、健康でさえいれれば、働くことで生活費を補填できます。
年金を受給していても、生活保護を申請することは可能です。自宅以外の不動産を処分してもなお困窮し、預貯金がほとんどなくなってしまった状態になったなら、生活保護制度の利用を検討しましょう。
住んでいる自治体の福祉事務所など担当窓口に出向き、生活保護について相談します。そして訪問調査や資産調査などを通して、自分の状況が生活保護の対象になるかどうか審査してもらいます。
生活保護の審査は、「働ける状況にあるかどうか」「援助してくれる親族はいないか」「活用できる資産がないか」「年金を活用しても必要な生活費が得られないか」などの視点から行われます。おひとりさまであり、高齢で働けない状況にある方は、預貯金がなく年金が少なければ保護の対象となる可能性が高いでしょう。
以上、女性の一人暮らしの老後資金について解説しました。老後資金の準備は、できるだけ早くから始めるのが理想的です。また、「余剰金を老後資金に充てる」という考え方では資金が不足する恐れがあります。目標金額を設定し、その目標に向けて必要な金額を積み立てていくのがおすすめ。自宅を資産とした活用法など、いざというときの制度についてもしっかり押さえておきましょう。