2024年7月4日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージの落とし穴?デメリットやリスクを理解し安全に利用する方法を解説

リバースモーゲージは、担保となる自宅を生前に売却せず融資を受けられる借り入れのシステムです。存命中は利息のみを支払い、契約者がお亡くなりになったら相続人が不動産を売却するなどの形で元金を返済するため、老後の生活費の補填にと検討する人や、住宅ローンの借り換えとして利用する人がいます。ただ、便利な反面デメリットもあります。デメリットを理解したうえで、安全にリバースモーゲージを利用する方法を解説します。

リバースモーゲージの落とし穴と言われる理由

リバースモーゲージは、50歳代からのシニア層が利用できる、自宅を担保とした融資のシステムです。老後の生活費や住宅関連費用を確保することを目的とする例が多いですが、「リバースモーゲージには落とし穴がある」とも言われます。

なぜ、落とし穴があると言われてしまうのでしょうか。リバースモーゲージの仕組みや特徴を紹介したうえで、落とし穴があると言われる理由を解説します。

リバースモーゲージの仕組み

リバースモーゲージを利用するときは、自宅を担保に金融機関などから借り入れを受けます。融資(極度)額(借り入れができる上限額)は、自宅の評価額をもとに決められます。

最初にまとまった金額を借り入れる一括方式、融資極度額に達するまで毎月決まった金額を受け取る年金方式や、必要になったときに必要な金額を受け取れる都度方式の3タイプがあり、用途に合わせて借り入れ方法を選べます。年金方式と都度方式のタイプは、融資極度額までは何度でも利用でき、回数の制限はありません。

返済については、契約者の存命中は借り入れた総額の利息に当たる部分だけを毎月支払います。そして、契約者がお亡くなりになった後、相続人などが担保となっていた物件を売却するなどの方法で、元金を返済します。

リバースモーゲージの特徴

リバースモーゲージの大きな特徴は、以下の3つです。

  • シニア層向けである

リバースモーゲージの利用には年齢制限があり、多くの場合50歳代からです。他のローンなどを利用するのが難しいシニア層でも、リバースモーゲージであれば利用が可能です。

  • 存命中はずっと自宅に住み続けられる

リバースモーゲージで融資を受けた元金を自宅売却によって返済するのは、契約者がお亡くなりになった後です。生前はずっと住み慣れた自宅にいられるため、安心です。※

  • 毎月の返済負担が軽い

契約者の存命中は利息のみを返済していくため、元金と利息を組み合わせて返済する一般的なローンよりも負担が軽くなります。
※返済期限を設けている金融機関もあります。

落とし穴と言われる理由

リバースモーゲージの落とし穴と言われてしまうのは、シニア層に理想的な融資の仕組みである反面、デメリットやリスクも存在するためです。「こんなことになるなんて、知らなかった」と後悔しないために、利用前にしっかり調べておく必要があります。次項以降、リスクやデメリットを詳しく解説します。

リバースモーゲージのデメリット

リバースモーゲージのデメリットは、以下の3点です。

通常の不動産売買のほうが高く売れる

リバースモーゲージの融資極度額は、自宅の評価額の5割から6割程度です。つまり、通常の方法で不動産売買を行ったときの半額くらいの現金しか手に入れられないといえます。今後、自宅に住み続ける予定がない人には、リバースモーゲージはあまり適していないといえるでしょう。

一方で、住み慣れた自宅に長くいたい人、家のリフォームのためにまとまった資金が必要な人にとっては、リバースモーゲージは良い仕組みといえます。

亡くなるまで利息の返済が続く

担保となっている自宅を手放さない限り、利息の返済は続きます。つまり、自宅を終の棲家としたい人にとっては、亡くなるまで利息の返済が続くことになります。

年金暮らしのシニア層は、年を重ねるほどに介護や通院の費用がかさんでいきます。自分が働けない中で毎月の利息を支払っていくためには、極度額までは借り入れない、本当に必要な分だけ融資を受けるといった工夫が必要です。

相続人に負担がかかる可能性がある

元金を返済するのは、契約者ではなく相続人です。多くの場合、子世代ということになります。もしも元金完済時に自宅の評価額が思いのほか下落しており、自宅売却だけでは元金を支払えないとき、相続人が足りない分を補填しなければならないケースがあります。

相続人に負担がかかる問題を防ぐには、「ノンリコース型」の契約をするのがいいでしょう。リバースモーゲージのノンリコース型とは、もし自宅の売却額が返済すべき元金に届かなかったとしても、相続人が足りない分を補填しなくてもよいとするシステムです。

一方で、相続人が元金に届かない部分を補填する契約方法を「リコース型」といいます。ノンリコース型は、リコース型よりも金利が高くなる傾向にありますが、相続人に負担をかけたくない人は検討しましょう。

リバースモーゲージのリスク

リバースモーゲージには、以下の3つのリスクがあります。

金利変動リスク

リバースモーゲージの金利は、返済する利息の金額が決まっている固定金利ではなく、世の中の情勢によって利息金額が変わる変動金利です。今後、金利が高くなってくると、月々の返済額がアップする可能性があります。

いつ、どれだけ金利が変動するのかを予測するのは難しいものです。将来の負担増に備え、なるべく必要な金額だけを借り入れるようにしましょう。

長生きリスク

年金方式で融資を受ける人は、毎月一定額を受け取ることができますが、借り入れた合計額が融資極度額に達してしまえば、それ以降は資金を受け取れません。長生きをすればするほど、借入額が融資極度額に達する可能性が高まります。

また、どんな方式で融資を受けても、担保である自宅を売却する等の方法で元金を返済するまでは契約が続きます。つまりずっと利息を支払い続けることになるため、長生きすればするほど返済の合計額が増えていきます。

評価額下落リスク

担保となる自宅の評価額は、金融機関によって定期的に見直されます。利便性や人気エリアかどうかなど、さまざまな観点から評価が見直された結果、評価額が下落してしまう可能性も否めません。評価額が下落すれば、融資極度額も低く設定し直されます。

リバースモーゲージの注意点

リバースモーゲージの注意点は、以下の3つです。

金融機関によって対象エリアが違う

ほとんどの金融機関が対象エリアを設けています。金融機関によっては、とくに市街地に限定してリバースモーゲージを展開しているところも多くみられるため、まずは自宅がリバースモーゲージを利用できるエリア内にあるかを確認しましょう。

家族の理解が必要

リバースモーゲージでは、契約者がお亡くなりになったら基本的に速やかに自宅を売却するなどして元金を返済しなければなりません。リバースモーゲージを利用する際は、ご家族の理解が必要になります。例えば、子世代など、将来自宅を売却する段階になって「やはり住み続けたい」と言い出すことも考えられます。リバースモーゲージの利用には、ご家族の理解、協力が不可欠です。

マンションは一軒家よりも審査が通りにくい

リバースモーゲージの融資極度額は、自宅の建物ではなく、自宅が建っている土地の評価額を元に算出されます。建物はそのうち老朽化するなどして価値が変わるため、あくまで土地の値段を見るのです。よって、マンションは一軒家よりも審査が通りにくいといえます。

ただ、マンションであっても築浅である、利便性の良い土地にある、人気エリアにあるなどの理由で評価が高くなる物件もあります。まずは、申し込みをしようとする金融機関がマンションを対象としているか調べてみましょう。

リバースモーゲージのメリット

以上で挙げたデメリットやリスク、注意点をよく理解して気をつけることができれば、リバースモーゲージは「持ち家があって資金がない」シニア層の強い味方になります。改めて、リバースモーゲージのメリットをお伝えしましょう。

バリアフリーのリフォーム資金が手に入る

バリアフリーの工事をしたいけれど資金がない方には、リバースモーゲージがおすすめです。家を売れば資金が手に入りますが、それでは意味がありません。リバースモーゲージを利用すれば、家を手放さずにまとまった資金が手に入るため、リフォームに活用できます。

年金暮らしでも安定した老後が望める

老後、年金だけでは暮らしていけない状況になってしまったら、貯金を取り崩すしかありません。それでは、ずっと不安が消えないでしょう。リバースモーゲージを活用すれば、安定、安心の老後を過ごすことができます。

急な入院や介護の費用が手に入る

年を重ねると、入院や介護などで突発的な費用が必要になることが多々あります。その都度、貯金を取り崩していては、いつか貯金が底をついてしまうことになりかねません。リバースモーゲージを利用すれば、いつでも資金を調達できる環境が整います。

住宅ローンを実質借り換えできる

定年を迎えても住宅ローンの残額が残っている人は、毎月の返済が年金暮らしにとって大きな負担となります。リバースモーゲージを使って残りの住宅ローンを一括返済すれば、実質的な借り換えが可能です。

通常の住宅ローンは元金と利息を組み合わせて返済しますが、リバースモーゲージなら契約者の存命中は利息だけの返済となるため、毎月の負担がぐっと軽くなります。

ただ、住宅ローンでは団体信用保険(団信)に加入し、契約者がお亡くなりになったり高度障害を負ったりした際に以後の借入残高がゼロになりますが、リバースモーゲージでは団信に加入できません。注意しましょう。

空き家対策になる

近年、一人暮らしの高齢者が亡くなった後に空き家が荒れてしまう、いわゆる「空き家問題」が全国的に発生しています。空き家を管理していくのは、相続人にとって大きな負担です。

「自分たちが亡くなったら、相続人に家を売ってもらおう」と思っていても、いざとなったとき、すぐに思うような金額で家が売れるとは限りません。すると、相続人は家を売ることもできず、近隣に迷惑をかけないために管理し続けることになります。

リバースモーゲージは、いわば生前に、空き家となってしまう自宅の売却先を決めておくものです。自宅が空き家になってしまう不安があるなら、空き家対策の選択肢の一つとして考えてみましょう。

まとめ

リバースモーゲージには、気をつけたいデメリットやリスク、注意点があります。しかしその反面、メリットもたくさんあります。「落とし穴」と呼ばれてしまう側面をしっかり理解しておければ、安心して利用できるでしょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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