2024年2月29日
リバースモーゲージ
【FP解説】建て替えにリバースモーゲージを利用する方法をわかりやすく解説

リバースモーゲージ-建て替え

「自宅の建て替えをしたい、でも年齢のせいで住宅ローンが組めない」とお悩みのシニア層にぴったりなのが、リバースモーゲージです。リバースモーゲージは住宅を利用して借入を受ける融資の仕組みで、存命中は毎月の返済が利息のみなので、少ない負担で融資を受けられます。リバースモーゲージを建て替えに利用した場合の特徴やメリット、マンションの建て替え費用に充てられるかどうかなどについて解説します。

建て替えに利用するリバースモーゲージ

リバースモーゲージは、自宅を担保に借入を行い、契約者がお亡くなりになったら相続人が担保物件を売却するなどして元金を返済する融資の仕組みです。存命中は、月々の返済が利息のみとなります。契約者は利息を返済しながら、最後まで自宅で過ごすことができます。

リバースモーゲージは全国各地の金融機関で取扱いがあり、自宅の建て替えに利用可能です。通常の住宅ローンに比べ、リバースモーゲージで融資を受けて建て替えを行うことには、次の3つの特徴とメリットがあります。

シニア層でもまとまった金額の融資が受けられる

一般的な住宅ローンは、契約者の年齢が高くなるほど、ローンを組むのが難しくなります。とくに50代以降になると、ローン自体は組めても返済期間が短く設定されるため、毎月の返済額が高くなったり、借入可能な金額が低く設定されたりしがちです。

一方で、リバースモーゲージはシニア層向けの商品です。多くの金融機関で、利用可能年齢が50歳から、あるいは55歳からと設定されています。また、利用開始年齢は80歳までとしているところがほとんどです。年金暮らしの高齢者でも、まとまった金額を借り入れることができます。

毎月の返済額が抑えられる

一般的な住宅ローンは、利息と元金を組み合わせて毎月返済します。よって新築物件を購入するなら、月々の返済費用が10万円を超える人もいるでしょう。リタイアした高齢者には、なかなか払い続けることの難しい金額です。

一方、リバースモーゲージでは、毎月の返済が利息部分のみとなります。まとまった金額を借りても、月々の負担が少ないため、年金収入しかなくても返済していくことが可能です。

建て替えだけでなく、違う費用にも融資額を利用できる

住宅ローンで借り受けたお金は、住宅のためにしか使えません。他の用途に利用することができないため、自由度がかなり低い融資の仕組みといえます。

一方、リバースモーゲージで借り受けたお金の用途は自由です。家の建て替えはもちろんのこと、余ったお金は他の目的にも使うことができます。実際、リバースモーゲージで借り受けたお金がどのように利用されているかについては、次の項目で詳しくご案内します。

リバースモーゲージの利用用途

リバースモーゲージは、一般的な住宅ローンと違い、住宅関連以外の目的に利用することができます。例えば、次のような目的で利用されています。

老後の生活資金や医療・介護費用

定年後は多くの人の収入が激減します。年金収入だけでは生活が成り立たず、退職金などの預貯金を取り崩して生活費に充てる人も珍しくありません。リバースモーゲージを利用すれば、預貯金を確保しながら生活費を補填することが可能になります。また、急に発生する医療・介護費用にも対応できます。

老人ホームの入居一時金

老人ホームの入居一時金は、高額であることも多いもの。リバースモーゲージでまとまった金額の融資を受ければ、資金の不安なく老人ホームに入居できます。自宅をすぐに売却しないため、ホームの居室に入りきらない家財を自宅に置いておくことも可能です。

自宅のリフォーム費用

自宅を建て替えではなくリフォームしたいというときにも、リバースモーゲージが使えます。バリアフリー住宅に替えて、住み慣れたわが家で長く過ごしたい人におすすめの方法です。

住宅ローンの残債の支払い

定年後も住宅ローンが残り、毎月の返済が苦しい場合もリバースモーゲージが利用可能です。リバースモーゲージへ切り替えれば存命中の返済は利息のみになるため、毎月の負担が軽減されます。借り換えとして利用するには、いったん残債を全て返済したうえで抵当権を外し、リバースモーゲージを契約した金融機関が新たに抵当権をつける必要があります。

趣味やレジャーへの活用

人生100年時代といわれている今、60代はシニア層といってもまだまだ若々しいものです。定年後は第2の人生を楽しみたいと、趣味やレジャーにいそしむ人もいるでしょう。リバースモーゲージは、人生を謳歌したいときの味方になります。

子どもへの生前贈与

リバースモーゲージで得たお金を子どもへの援助として利用することも可能です。子世代に子どもが生まれた、マイホームが必要になったなど、必要なタイミングで必要な金額を贈与することが可能になります。

以上のように、リバースモーゲージはさまざまな目的で利用可能です。ただ、事業目的での利用が可能かどうかは金融機関によって異なるため、注意しましょう。

建て替え費用の相場

家を建て替えるときは、どのような費用が必要になってくるのでしょうか。項目毎に相場と内容を説明するため、参考にしてください。

解体費用

まずは今ある家を解体することから始めなければなりません。解体費用の相場は100万円から200万円です。

新築費用

家を新築するための費用がかかります。おおよそ2000万円から3000万円ほどの費用が必要です。注文住宅などで家づくりに凝ったり、大きな家をつくったり、3階建てや地下室をつくるなどすると、さらに費用がかさみます。

仮住まいにかかる費用

家を建て替えている間も、どこかに住み続けなければなりません。引っ越し費用や家賃が発生し、建て替えに必要な期間が長くなるほど家賃がかさみます。建て替えに8ヶ月がかかるとして、月々10万円の家賃が発生したら、初期費用等も含めておおよそ100万円~150万円ほど必要になります。

このほか登記関係や手続きを専門家に依頼するための費用等がかかります。建て替えにかかる費用は、トータルで2200万円から3500万円程度と考えておくと良いです。

マンションの建て替え費用にリバースモーゲージが利用できる条件

昨今、全国各地でマンションの老朽化が問題視されています。なかには、建て替え決議が始まっているという人もいるのではないでしょうか。

リバースモーゲージはマンションの建て替え費用に利用可能ですが、以下の条件があります。

①原則、マンションを担保の対象とした金融機関であること

②マンションを担保の対象としない金融機関の場合は、別途一戸建てを担保とすること

リバースモーゲージを取り扱っている金融機関のなかには、一戸建てしか対象としていないところもみられます。一戸建てに限定している金融機関では、マンションを担保にリバースモーゲージを利用することはできませんが、一戸建てを担保とした場合はマンションの建て替え費用に利用できます。

マンションを対象としていても、都市部の駅近など資産価値の高い物件しか対象としていないところもあります。まずは、確認が必要です。

融資の実行はマンションが建てられてからになること

担保となる物件が存在していなければ、正確な評価価額を算出できず、融資額を決定することがなかなかできません。また、物件に抵当権を設定することもできません。よって契約や融資の実行は、マンションの建て替えが終わってからになります。

ただ、マンションの建て替え前に相談すること自体は可能です。建て替えが本格的に決定し、間取り図などが手に入る段階になったら、相談ができるようになるでしょう。

また、なかには立地などの条件から、そもそも審査の対象にならないマンションもあります。建て替え予定のマンションが審査対象になるかどうかだけでも問い合わせておくと安心でしょう。

取扱いがある金融機関

マンションの建て替え費用としてリバースモーゲージを利用できるかどうかは、実際のマンションの状況により判断されます。よって「この金融機関なら必ず取り扱ってくれる」と断言することはできません。

ここでは、主に都市部を取引対象にしており、立地などの条件によってはマンションの審査も可能としている3つの金融機関をご紹介します。

  • 東京スター銀行「充実人生」

https://www.tokyostarbank.co.jp/products/loan/reverse_mortgage/

建て替えを行うマンションへの融資については、申し込み時点で間取りなどの資料が揃っていることが条件となります。また、実際の融資は完成後の実行となります。

  • 朝日信用金庫「朝日リバースモーゲージ」

https://www.asahi-shinkin.co.jp/loan/reversemortgage.html

建っていない物件を担保にするのは難しく、マンションを建て替えてからの融資実行となります。

  • 楽天銀行「楽天銀行リバースモーゲージ」

https://www.rakuten-bank.co.jp/loan/reverse-mortgage/?scid=wi_rbn_rml_fd

こちらも、マンションの建て替えが終わってからの利用となります。

リバースモーゲージを利用する注意点

最後に、リバースモーゲージを利用する際の注意点を3点ご案内します。建て替え等で利用を検討する際は、ぜひ目を通し、心づもりをしておきましょう。

利用には相続人の了承が必要

リバースモーゲージを利用すると、契約者がお亡くなりになった後、相続人は相続した物件を売却して手放すことになります。しかし、「せっかく建て替えたのだから、ゆくゆくは自分が住みたい」と考える相続人もいるかもしれません。相続することはできないと、しっかり伝えておきましょう。

ただ、リバースモーゲージの元金返済は、担保物件の売却ではなく、相続人自らが元金分のお金を用意して一括返済することもできます。いずれにしろ、相続人には借入総額と返済方法を明確に伝えておかなければなりません。

元金の一部返済ができない

ほとんどのリバースモーゲージにおいて、元金の返済はあくまで自宅売却のうえ一括で行うことになります。自宅を売却せずに、元金を一部返済して利息を軽減させることはできません。

金利上昇リスクがある

リバースモーゲージの返済は、存命中は利息のみです。ただし利息の計算方法はほとんどが変動金利のため、金利が上昇すると返済金額が高くなる可能性があります。無理のない返済金額となるよう、借入額を調整しましょう。

まとめ

家の建て替えにリバースモーゲージが有効であることが、お分かりいただけたかと存じます。リバースモーゲージは全国各地の金融機関で取り扱っており、金融機関によって対象エリアが違います。気になる人は、自宅がある地域をエリア内としている金融機関に問い合わせ、資料をもらってみましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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