リバースモーゲージは、自宅を担保に金融機関から融資を受ける借入れの仕組みです。毎月の返済は利息のみで、元金の返済は契約者がお亡くなりになってから相続人が行います。自宅を担保にするには、不動産における抵当権あるいは根抵当権の登記が必要になります。根抵当権とはなにか、手続きはどのように進めるかを解説したのち、相続における注意点について解説します。
まずはリバースモーゲージの仕組みや返済方法、手続きの流れについて解説します。
リバースモーゲージは、50または55歳以上のシニア層を対象とした融資の仕組みです。自宅などの、保有している不動産を担保にして金融機関から借入れを受けます。融資の限度となる金額を「融資極度額」といい、融資極度額は自宅の担保評価額によって決まります。
リバースモーゲージの利用者は、融資極度額に達するまでは何度でも借入れが可能になります。一括して大きな金額を借り入れることもできますし、毎月同じ金額を年金のように受け取ることも可能です。
リバースモーゲージでは、契約者の存命中は利息のみを毎月返済します。収入が年金のみとなる高齢者層にとって、返済の負担が軽いのは嬉しいことです。元金は、契約者がお亡くなりになった後に相続人が、担保となっていた自宅を売却するなどの方法で一括返済を行います。
よって、契約者は住み慣れたわが家に末永く住むことが可能です。
リバースモーゲージを利用するには、まずリバースモーゲージを商品として展開している金融機関のなかから、自宅を対象エリアとしている金融機関を探します。電話やインターネットのフォームから、事前審査を申し込みましょう。
事前審査では、契約者本人と担保不動産の条件を問われます。契約者本人の条件としては、金融機関が定める年齢対象をクリアしており、年金などの安定した収入があればさほど心配する必要はありません。担保不動産については、金融機関が対象としている不動産かどうかが審査されます。
事前審査に通れば申し込みを行い、本審査が行われます。金融機関と保証会社により査定が行われ、評価額から融資極度額が算出されます。
審査が無事通り、融資極度額に納得がいくようであれば契約の運びになります。抵当権を設定する登記手続きを行い、あわせて融資が実行されます。
登記手続きについては、「抵当権」あるいは「根抵当権」が設定されます。それぞれどんなものか、また手続き方法や必要書類について解説します。
抵当権とは、何かを担保として貸し付けを行う側の権利です。貸したお金が返されないと、お金を貸す側は担保となっている物を差し押さえ、売却資金を回収することができます。
リバースモーゲージにおいては、金融機関が契約者の自宅に対して抵当権を設定します。そして契約者がお亡くなりになった後、相続人が元金の返済を拒んだ場合でも、抵当権を行使することで自宅の売却金を回収することが可能になります。
根抵当権は抵当権の一種です。あらかじめ限度となる借入金額を決定し、その範囲であれば何度でも借入れが可能になるよう設定された権利です。一方で、抵当権は1つの借入れに対して1つずつ設定します。
リバースモーゲージで抵当権を設定すると、借入れを行うたびに抵当権をつけなければなりません。この煩雑さを防ぐため、根抵当権が設定されるケースが多くあります。
根抵当権の登記手続きは、法務局で行います。通常、金融機関側から紹介される専門家が手続きを代行してくれます。契約者は、手続きを行う日までに必要書類を揃えておく必要があります。主に、以下のような書類が必要です。
自宅の購入時に手続きした権利関係の書類が必要です。
登記申請日から数えて3ヶ月以内に発行された証明書が必要です。
契約書を作成した場合は用意します。
相続人には、担保となっていた自宅を売却して元金を返済するという最後の大仕事があります。リバースモーゲージを利用するときには、以下の3つを相続人に伝えておきましょう。
リバースモーゲージには、同居人の条件があります。ほとんどの金融機関で、子世代との同居は許されていません。自宅の速やかな売却に支障が出るためです。
契約者がお亡くなりになった後、自宅はすぐ売却の運びとなります。相続人が「思い出の土地を売りたくない」と思ったら、自宅を売却せずに現金を用意するしかありません。
リバースモーゲージには、自宅の売却額が思いのほか低額だった場合、元本割れの可能性があります。契約によっては、売却額が返済すべき元金の金額に届かないと、相続人が差額を負担して返済しなければなりません。
相続人の負担を減らすため、借入れの元金が自宅の売却額を超えても相続人に差額の負担が生じない「ノンリコース型」を選んで契約する人が増えています。差額の負担が生じる「リコース型」よりも利息が高い、つまり毎月の返済額が高くなるという特徴がありますが、「相続人に迷惑をかけたくない」と考えるなら、利用を検討しましょう。
リバースモーゲージを利用して相続対策を行うことが可能です。ここでは、2つの有効策を解説します。
リバースモーゲージを利用すると、いっときにまとまった金額が手に入ったり、毎月少しずつお金が振り込まれたりします。余裕ができたぶんのお金を生前贈与に回すことで、相続税対策が可能になります。
ただし、贈与が一定額を超えてくると贈与税がかかります。贈与税は相続税よりもかなり高い傾向にあるため、生前贈与は暦年贈与の基礎控除内にとどめておくのがいいでしょう。
暦年贈与とは、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与額が110万円以下であれば贈与税がかからないという仕組みを利用した贈与方法です。毎年コツコツ子世代へ贈与して将来の「遺産」を減らすことが、相続税対策に繋がります。
リバースモーゲージのなかには、家族信託の機能を付与している商品もあります。家族信託とは、認知症などで判断能力が低下して、本人自らが意思決定できなくなってしまったとき、家族に財産管理を託すことのできる制度です。
認知症になると、とくに財産管理の面で家族に迷惑をかけてしまう恐れがあります。訪問販売などで高額な商品を買ってしまったり、急に散財してしまったり、通帳や印鑑のありかを忘れてしまったり。家族信託は、本人が存命のうちから家族に財産の管理を任せられる、安心な制度です。
家族信託機能付きのリバースモーゲージを活用すれば、家族みんなが安心して、契約者のこれからの生活を見守ることができます。
以上、リバースモーゲージの登記について解説しました。根抵当権の設定は難しいイメージですが、実際には専門家が手続きについて手ほどきしてくれるため安心です。権利証のありかを確認し、また印鑑証明書を手に入れておきましょう。