2024年5月1日
リバースモーゲージ
【FP解説】老人ホームの費用捻出にリバースモーゲージを活用!選び方や注意点も

老後、終の棲家として老人ホームを検討しているなら、入居資金をどう捻出するかを考えなければなりません。リバースモーゲージは自宅などの不動産を担保に金融機関から融資を受け、存命中は利息だけを返済していく借り入れの仕組みです。自宅を担保とした後も、契約者が存命中は自宅をそのまま残すことができます。リバースモーゲージの活用をはじめとした費用捻出方法や、老人ホームを選ぶときの注意点を解説します。

老人ホームにかかる費用

まずは老人ホームにかかる費用を把握しておきましょう。一般に、老人ホームの入居に必要な費用は以下の通りです。

項目

詳細

費用の目安

入居一時金

入居するための初期費用。これを支払うことで、ホームを終身利用するための権利を得る。

0円~数百万円

月額利用料

賃料、光熱費、食費、介護など生活全般にかかる費用

5万円~30万円

その他サービス利用費用

イベント参加料や基本利用料外のサービスを利用したときにかかる費用

0円~

費用の目安にこれほど幅があるのかと、驚く人も多いでしょう。それぞれの内訳について、詳しく解説します。

入居一時金

入居一時金は、介護度が低くても入居でき、かつ手厚い介護が受けられる施設ほど高い傾向にあります。

例えば民間施設である介護付き有料老人ホームは、施設によって必要となる介護度は違いますが、条件が厳しくても要介護以上であればほぼ入居できます。かつ施設内で手厚い介護が受けられるため、入居一時金が高くなり、数百万円以上となる施設もあります。

一方で、入居一時金を支払う必要がない施設の例に特別養護老人ホーム(以下特養)がありますが、特養は原則として要介護3以上でないと入居できません。

なお、自立した状態で入居可能な施設にサービス付き高齢者向け住宅(以下サ高住)がありますが、施設内で受けられる介護サービスに限りがあることから入居のための費用は抑えめです。入居一時金という括りはなく「敷金」としているところも多く、マンション賃貸の初期費用程度と考えて構いません。

月額利用料

月額利用料の最も大きな部分は家賃であり、これはどんな施設であっても変わりません。しかし、その他の費用をどの程度「月額利用料」に含めているかは、施設によって違います。

例えば食事の提供に限ってみても、施設で食事をとらない日があっても利用料として一括請求するケースと、事前に申し出ることでそのぶんの請求が差し引かれるケースがあります。

なお、一般的なマンションの賃貸料と同様に、都心や駅近など便利な立地にあれば月額利用料は比較的高くなります。

その他サービス利用費用

レクリエーションに参加したとき、諸経費がかかる施設があります。また、介護保険が適用されないサービスを利用したときはその都度負担する必要があります。

また、これはホームから請求される費用ではありませんが、外出したときや趣味のための出費など、お小遣いのように使うお金も少しは必要ということを、念頭に置いておくと良いかもしれません。

老人ホームの費用捻出方法

入居一時金はもちろんのこと、月額利用料についても「毎月の年金では金額が届かないかもしれない」と心配する人はいるでしょう。老人ホームの費用捻出方法には、以下のようなものがあります。活用できる不動産、利用できそうな制度があったら、併用して自己負担を減らしましょう。

リバースモーゲージ

リバースモーゲージとは、自宅を利用して借り入れを行う融資の仕組みです。金融機関に申し込み、自宅を担保にして毎月一定額を、あるいは一括でまとまった金額を借り受けます。融資の限度額は、自宅の評価額によって決まります。

リバースモーゲージでは、契約者の存命中は毎月利息のみを支払います。そして契約者がお亡くなりになったとき、相続人が担保物件を売却するなどの方法で元金を返済します。

つまり、「契約者が亡くなったら家を売る」という内容の契約を行い、売却金を生前から受け取るようなシステムです。実際の不動産売買よりも売却で得られる利益はやや抑えめですが、亡くなるまで家を手放したくない、あるいは夫婦のうち一人が老人ホームに入り、一人は家に残るといったケースにおすすめです。

リースバック

リースバックは、自宅を売却した上で買主と賃貸契約を結び、賃料を支払って自宅に住み続けることができる不動産売却の仕組みです。売却で得たお金を入居費用に充てながら、ゆっくり自宅を引き払う準備ができます。

また、リースバックは契約により後から自宅の買い戻しを行うことも可能です。相続人が「思い入れある実家を手放したくない」と考えたら、買い戻すことができます。

資金をコツコツ準備するための制度

老人ホームへの入居金を働き盛りのうちからコツコツ準備するなら、以下の3つがおすすめです。

  • NISA

投資の利益は、本来であれば20%が税金として引かれます。しかしNISAを利用すると、投資で得られた利益が非課税になります。2023年までは一般NISAの年間投資枠が120万円、つみたてNISAは40万円でしたが、2024年1月から始まったNISAは投資枠のほか非課税限度保有限度額も大幅に増え、資金形成のためさらに有利な制度となりました。資金を増やしたいなら真っ先に検討したい制度です。

  • 介護ローン

介護費用の調達を目的として金融機関から借り入れを受けるもので、民間商品です。主に要介護状態にある人の親族が申し込めます。融資額は、最大で500万円ほどです。

  • 個人年金保険

個人年金保険は、公的年金の他に個人で掛ける年金です。毎月一定額を掛けつづけ、60歳など金融機関が定める年齢になると受け取りが開始されます。「定年になったら、このくらいの金額を毎年受け取りたい」と、具体的な将来設計ができている人におすすめです。個人年金保険料控除による税制メリットがあります。

入居後に利用できる支給制度や控除

介護施設に入居した後に、介護に関連した一定の支出があった人は、申告により超過分の金額が戻ってくる制度があります。

  • 高額介護サービス費支給制度

介護サービスの自己負担額が、月額換算で一定額を超えた場合、超過分が変換されます。負担上限額は課税区分により変わります。

  • 高額介護合算療養費制度

医療保険と介護保険における、8月1日から翌年7月31日までの自己負担合算額が高額なとき、自己負担額が軽減されます。ただし、各所得区分に設定された限度額を超える必要があります。

  • 自治体による助成制度

老人ホームの所在地である自治体によっては、賃料や食費、介護サービス費用などに助成制度を設けている場合があります。詳しくは、各自治体の地域包括支援センターなどに問い合わせましょう。

老人ホームの選び方

「費用感がマッチしている」「雰囲気がいい」などと感じる老人ホームに、そのまま入居できるとは限りません。各老人ホームには入居条件があり、条件を満たさなければ入居できないためです。老人ホームの種類と、それぞれに適した人について解説します。

サービス付き高齢者向け住宅

サ高住には「一般型」と「介護型」の2つがあります。

一般型は60歳以上の自立生活ができる人から、介護度が軽度の人が入居できます。入居一時金の負担が少ない傾向にある一方で、施設のスタッフは介護サービスを提供しません。介護が必要になったら外部のサービスを利用する必要があります。「今は健康だけれど今後が不安」という人が、最も入りやすい老人ホームといえるでしょう。

介護型は60歳以上の要介護の人が利用できます。介護スタッフが常駐し、医療スタッフによるケアが受けられます。すでに介護が必要になっている人は、一般型を選ばないよう注意が必要です。

グループホーム

グループホームは、認知症高齢者が少人数のグループで共同生活を送る施設です。共同生活をするため、入居金も月額利用料も、やや割安ではありますが、60歳以上の認知症患者で、かつ要介護2以上でなければ入居できません。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、自立した人から介護が必要な人までが、必要な援助や介護サービスを受けながら生活できる施設です。サービスが手厚くなるほど入居金や月額利用料が高くなります。

ただ、入居基準や提供されるサービスの種類はホームによってかなり違いが見られ、介護度が高くなると外部サービスを入れなければならないこともあります。条件をよく確認するようにしましょう。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、自立生活に不安の出始めた人から要介護の人までが、手厚い介護を受けながら生活できる施設です。サービスの手厚さによって入居金や月額利用料が高くなるのは住宅型と同様ですが、住宅型よりもサポート体制が充実しているため、高額になりやすい傾向があります。

やや高額であっても、定額で生涯に渡り手厚い介護サポートを受けたい人におすすめです。

ケアハウス

ケアハウスには「一般型」と「介護型」の2つがあり、それぞれ費用やサービスが違います。

一般型は、自立して生活できる人を対象とした施設です。入居費用や月額利用料は介護型よりも抑えめで、もし介護サービスが必要になったらオプションで利用する必要があります。

介護型は主に介護が必要な人を対象としており、入居一時金や月額利用料は、介護サービスを利用することを見込んだ金額となっています。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームは入居一時金が0円で、月額利用料も他の施設と比べて安い傾向にあります。ただし、要介護3以上でないと入居できません。安価ゆえに人気の施設で、順番待ちを覚悟しなければならないでしょう。

老人ホームを選ぶときの注意点

老人ホームを選ぶときには、利用者本人と親族が注意しなければならない点が多々あります。気をつけるべきことを、それぞれ解説します。

本人:居住環境が気に入るかどうか

老人ホームは終の棲家となるところですから、見学して少しでも気に入らないと思う部分があるなら、やめておいたほうがいいでしょう。「せっかく見学に来たのだから」「ここで決めないと子どもに悪いから」などと気にする必要はありません。納得のいく施設を探しましょう。

本人:金額をしっかり確認する

一時金や月額料金が、自分が用意できる範囲内なのか、子世代に負担してもらわなければならないのかをしっかり確認しましょう。特に月額利用料の部分は、光熱費や食費を含んでいるのか、一定の介護サービス料を含んでいるのかなど徹底して理解する必要があります。今後、ずっと支払っていかなければならない費用です。慎重になりましょう。

子世代:お財布に余裕を持つ

多くの場合、介護施設への入居は長期間にわたります。「このくらいの金額ならギリギリ出してあげられる」と思うような施設への入居は危険です。概算の時点でギリギリなのですから、想定外のことが起こったとき予算をゆうにはみ出す危険性があります。自らの家族の家計を圧迫しない、無理のない金額を意識しましょう。

子世代:入居金が戻るかどうかを確認する

介護施設の場合、入居金には2つのパターンがあります。想定よりも早く退所した場合に、入居期間に応じた償却金を差し引いた金額が戻ってくるパターンと、敷金のように原状回復のための費用を差し引いた金額が戻ってくるパターンです。

数百万円など多額の入居一時金を支払う場合は、償却期間や金額が設定されているケースが多いため、確認しておきましょう。

リバースモーゲージのメリット

先の項目で紹介した費用調達法のうち、とくにリバースモーゲージで老人ホームの入居費用を準備すると、以下の4つのメリットがあります。

自宅をゆっくり片づけられる

自宅をいったん売却してしまうと、老人ホームへの入居までに家財を片づけなければなりません。ホームの居室は手狭なため、一挙に膨大な量の家財を処分することになるでしょう。

一方、リバースモーゲージであればすぐに自宅を手放す必要はないため、ゆっくり片づけることができます。骨董品や宝飾品など値の張る物を手放す場合も、じっくり鑑定してもらう余裕が生まれます。

入居一時金にも、毎月の費用にも充てやすい

リバースモーゲージは、一括でまとまった金額を借り入れることも、年金のように毎月一定額を受け取ることも可能です。一括で借り入れて高額な入居一時金に充てたり、公的年金では足りない支払を年金方式で補填したりと、ご自身に合った方法で利用できます。

施設が合わないときは戻ってこられる

リバースモーゲージなら、施設が自分のイメージとは違ったとき、自宅へ戻ってくることができます。そしてまた、じっくり施設探しを始めてもいいでしょう。

自宅を売却してしまえば、どんなに施設がイメージと合わなくても我慢して入居するしかありません。終の棲家となるだけに、できれば避けたいことです。

将来の買い手を先に見つけられる

家は「売りたい」と思ったときに売れるとは限りません。親亡き後、空き家となった家を手放したくてもなかなか買い手が付かず、維持費ばかりがかかってしまうケースが最近よく見られます。

リバースモーゲージは、契約者がお亡くなりになったら相続人が担保物件を売却するシステムなので、空き家対策に役立ちます。自宅を相続する人がいないなら、子世代の負担を軽くするためにも、ぜひ検討してください。

まとめ

以上、老人ホームの費用や選び方について解説しました。ホームにはたくさんの種類があり、それぞれ条件が違うことがお分かりいただけたかと存じます。まずはご自身や子世代の住居の近くにどんなホームがあるかを調べ、それぞれのパンフレットを取り寄せるなどして条件を比較検討しましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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