2024年5月17日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージの借入額を利用用途別に紹介

リバースモーゲージは、自宅を担保に融資を受け、契約者の存命中は利息のみを返済する仕組みです。元金の返済は、相続人が自宅を売却するなどして行います。借入方法には一括方式、年金方式、極度額方式の3つがあり、利用用途によって選べます。リバースモーゲージの借入額を利用用途別に紹介したうえで、メリットやデメリットについて解説します。

リバースモーゲージの利用用途

リバースモーゲージは50歳以上のシニア層を対象にした融資システムです。自宅を担保として、その評価額をもとに借入の極度額(上限額)が決められ、金融機関から融資を受けることができます。利用目的は原則自由ですが、シニア層向けということもあり、主に以下のような目的で使われます。

月々の生活費の補填

年金生活に入ると、毎月どうしてもいくらか赤字が出てしまう場合があります。年金額に少しプラスできれば、生活費の心配をすることなく日々を過ごせます。

リフォーム資金

住み手の足腰が弱まり、バリアフリー住宅にする必要があるのに、リフォーム資金がなければそれは叶いません。我慢して段差の多い自宅に住み続け、あるときケガをしてしまったら大変です。融資を受けることでバリアフリー工事ができ、老後の快適な暮らしが手に入ります。

住み替え資金・建て替え資金

リバースモーゲージなら、自宅からシニア層向けの施設へ住み替えたり、別の場所に住まいを建て替えたりするための資金を得ることができます。融資を受けた後も担保となった自宅を手放さずにいられるので、施設へ全ての家財を持ち込む必要はありませんし、建て替えのための仮住まいを用意する必要もありません。

住宅ローンの借り換え

住宅ローンを返済しながら年金暮らしに突入すると、返済額が家計に与える負担が大きくなります。リバースモーゲージを利用して住宅ローンを一括返済すれば、毎月の負担が軽くなります。

介護医療費

突発的な事故が起こったり、急に介護が必要になったりと、シニア層は病院に行く機会が多くなります。保険でフォローされない部分は自己負担となるため、健康でなくなる上に出費が増えてしまいます。リバースモーゲージを契約しておけば、いつでも必要な費用を借りることができて安心です。

リバースモーゲージで借入金を受け取る方法

リバースモーゲージの借入金の受け取り方式は、以下の3つがあります。利用目的に応じて、選ぶことができます。

年金方式

毎月一定の金額が、指定口座に振り込まれる方式です。「年金暮らしの補填に」と考える人にぴったりの借入方法といえます。

一括方式

まとまった金額を一括で借り入れる方法です。リフォーム資金や住み替え費用、住宅ローンの借り換えなど、借りたい金額がはっきり決まっている人におすすめです。

極度額方式

借入極度額までは、いつでも、いくらでも自由に借りられる方法です。介護、看護のための資金など、「何かあったときのため、すぐに借りられるようにしておきたい」と考えている人に適しています。

リバースモーゲージのメリット

リバースモーゲージを利用するメリットは、以下の4点です。

高齢者でも融資が可能

多くのローンは高齢であることが審査に影響します。借り入れが可能であっても、希望の金額が手に入らない場合も多いでしょう。

一方で、リバースモーゲージはシニア層のための融資システムです。50歳代から契約が可能になり、安定した収入があれば申し込みができるため、年金暮らしでも契約が可能です。

担保となる自宅に住み続けられる

リバースモーゲージは自宅を担保としますが、多くの場合、契約者の存命中は担保物件を手放す必要がありません。自宅を終の棲家にすることが可能です。

存命中の返済負担が軽い

リバースモーゲージは、契約者の存命中は利息だけを支払い、元金は契約者がお亡くなりになった後に相続人が自宅を売却するなどして一括返済する融資の仕組みです。一般的なローンは元金と利息を組み合わせて返済するため、リバースモーゲージは他のローンよりも返済負担は軽いです。

資金用途が原則自由

例えば住宅ローンでは、住宅関連に特化して借入額を利用できます。借り入れたお金を生活費に割り当てるなど別の用途で使うことはできません。

一方でリバースモーゲージは、投資などの目的でなければ資金用途は原則自由です。シニア層の生活全般のためのローンなので、老後に必要な資金として、生活費、住宅関連費、介護医療費などに使うことができます。

リバースモーゲージのデメリットと注意点

リバースモーゲージのデメリットは、以下の5つです。

若年層向けではない

リバースモーゲージはシニア層のための融資方法なので、50歳代以下の人はまず申し込みができません。若年層は他のローンの利用を考える必要があります。

自宅の評価額がそのまま借入極度額にはならない

借入極度額は、自宅の評価額の5~6割程度です。よって自宅を売却した方が、売却益として得られるお金が多くなる可能性があります。

ただ、当然のことながら自宅は売却してしまえば住み続けることができません。売却は、生活費の補填をと考えているときや、リフォーム代が必要なときは現実的な選択肢ではないでしょう。対して、建て替えや住み替えを考えているなら、売却とリバースモーゲージのどちらが良いか検討しましょう。

長生きリスクがある

年金方式で毎月一定の金額を借り入れることにした場合、借入額が借入極度額に到達した時点で融資がストップします。また、借入合計額がふくらむほど、毎月支払う利息の金額も多くなっていきます。つまり、長生きすること自体がリスクになるということです。

また、リバースモーゲージは、自宅を売却するなどして元金を一括返済するまで利息を支払い続ける仕組みです。もしお亡くなりになるまで自宅に住み続けたいと考えているのであれば、ずっと利息を支払い続けることになります。長生きすればするほど、返済合計額は多くなります。

金利変動リスクがある

リバースモーゲージのほとんどは金利変動方式を採用しています。世の中の金利が高くなれば、毎月の返済額である利息額がアップします。現代の金利はかなり低めの水準です。今後、金利が上向きに変動すれば、利息額も上がる可能性があります。

子世代と同居できない可能性が高い

リバースモーゲージは契約者がお亡くなりになったら速やかに元金を返済する必要があります。夫婦で暮らしている場合は、配偶者が住み続けられる契約にすることが可能な金融機関もありますが、子世代まではなかなかカバーできません。子世代が住み続けてしまうと、いつになっても自宅の売却が実行されず、元金返済がなされない可能性が高いからです。

よって子世代が同居している自宅は、リバースモーゲージを利用できない可能性が高いといえます。

まとめ

以上、リバースモーゲージの借入方法やメリット・デメリットを解説しました。リバースモーゲージは、多くのシニア層にとって唯一の大きな財産である自宅を活用して老後資金を得られる方法です。資金調達に困ったときは、自分の生活を変えることなく資金を得られる方法として、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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