2024年7月24日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージを利用すると生命保険はどうなる?

リバースモーゲージは、自宅を担保に融資を受け、契約者の存命中は利息のみを返済する借り入れの仕組みです。元金は、契約者がお亡くなりになった後に相続人が自宅を売却する等の方法で返済します。自宅にずっと住めるため、老後資金の調達や住宅ローンの借り換えに適しています。生命保険に加入しながらリバースモーゲージを利用すべきかどうか悩んでいる人のために、リバースモーゲージと生命保険の関係について解説します。

リバースモーゲージの仕組み

リバースモーゲージとは、自宅を担保とし、自宅の評価額をもとに決められた極度額まで借り入れができる融資の仕組みです。まとまった金額が必要な人は、1回の融資で極度額まで借り入れることができますし、毎月少しずつ借りたい人は年金のように振り込んでもらうことも可能です。全国各地の金融機関が商品として取り扱っています。

リバースモーゲージの対象者や特徴は、以下の通りです。

50歳以上のシニア層が対象

リバースモーゲージの対象者は、50歳以上のシニア層です。年齢の制限は金融機関によって違いますが、おおむね50歳以上、もしくは55歳以上に設定されています。

毎月の返済は利息のみ

一般的なローンで借り入れを行うと、元金と利息を合わせた金額を毎月返済することになります。しかし、リバースモーゲージで毎月返済するのは、利息のみの部分です。一般的なローンよりも、毎月の返済負担が軽いといえます。

元金は相続人が空き家売却などの手段で返済

契約者の存命中は利息のみを毎月返済し、契約者がお亡くなりになったら、相続人が元金を一括返済します。返済手段は様々ですが、担保となっていた自宅を売却することが多いです。相続人が自己資金で返済すれば、自宅はそのまま残ります。

使い道は原則自由

リバースモーゲージで調達した資金の使い道は原則自由です。年金だけでは足りない生活資金を補填したり、バリアフリーのリフォーム代として利用したり、住宅ローンを一括返済して事実上の借り換えを行ったりするなど、様々な用途に利用できます。

リバースモーゲージと生命保険の併用

生命保険に加入している人は、「リバースモーゲージと生命保険は併用できるのだろうか」と疑問に思うかもしれません。リバースモーゲージと生命保険は、併用が可能です。

なかには、「リバースモーゲージを利用する前に自己資産を活用しよう」と考えている人もいるかもしれません。生命保険を解約して、解約返戻金を老後の資産やリフォーム費用の一部に充てるなどの方法です。しかし、今後リバースモーゲージを利用する可能性があるなら、生命保険の解約には慎重になった方がいいでしょう。

なぜなら、相続人が担保となった自宅を売却したくないと考えた場合、契約者がお亡くなりになったときに支払われた生命保険金を使って元金を返済する可能性が高いためです。

相続人が自宅を売却する意思を示しているなら別ですが、迷いがある場合は、元金の返済手段として生命保険を確保しておくと安心です。相続人とよく話し合いましょう。

ただ、生命保険の種類やリバースモーゲージの利用方法によっては、併用ができない場合もあるため注意が必要です。また、リバースモーゲージの利用者向けに展開されている生命保険があり、自動付帯となるためチェックしておいた方がいいでしょう。ほかに注目したい形態として生命保険を買い取るシステムがあり、それぞれ順を追って解説します。

リバースモーゲージ利用による団体信用生命保険の注意点

リバースモーゲージを住宅ローンの借り換えに利用すると、団体信用生命保険(以下、団信)に加入できません。

団信とは、ローン返済中に契約者がお亡くなりになったり、高度な障害が残ってしまったりしたとき、以後、住宅ローンの返済は免除されます。大黒柱を亡くす家族が家まで失い、路頭に迷うことのないように、住宅ローンの契約と同時に加入します。

しかし、リバースモーゲージには団信の仕組みがありません。リバースモーゲージを使ってこれまでの住宅ローンを一括返済すると、以後は利息のみの返済となるため毎月の返済負担が軽くなりますが、契約者がお亡くなりになったときには借入残高がゼロにならず、むしろ元金を返済しなければならないため、注意が必要です。

リバースモーゲージによる住宅ローンの借り換えを検討している人は、団信に加入できないことをしっかり頭に入れておきましょう。

リバースモーゲージ利用者向けの保険

商品として展開している金融機関はまだ少ないですが、リバースモーゲージの契約者が利用できる保険があります。リバースモーゲージを契約すると自動付帯される傷害保険で、事故を起こしたときの賠償責任補償特約や、弁護士費用の補償特約がついており、日常の加害リスクや被害リスクをサポートしてくれます。

死亡保険金や後遺障害保険金も出ますが、生命保険金ほど大きな保障内容になっているとはいえません。保険付きのリバースモーゲージを検討するときは、他に加入している生命保険や損害保険の内容も改めて確認し、内容が重複する保険はないかチェックするのがおすすめです。

生命保険買取サービスとは

最近、生命保険を買い取るサービスが話題です。加入者が存命中である生命保険を、解約返戻金よりも高い金額で買い取るビジネスのことで、日本ではまだあまりなじみがありませんが、欧米では数十年前から利用されてきました。

病気で困窮し、手元資金がなくなってくると、「保険を解約して、返戻金を受け取ればいくばくかが手に入る」と考える人は多いでしょう。しかし、加入期間が短ければ解約返戻金はわずかです。保険の買取サービスに買い取ってもらうことができれば、死亡保険金ほどではありませんが、解約返戻金よりも高い金額が手に入ります。

このように、お亡くなりになる前に生命保険金の何割かを受け取れるのが、生命保険買取サービスの特徴です。生命保険を買い取った会社は、契約主体となって以後の保険料を支払い、また死亡や高度障害時には保険金を受け取ります。

受取金額は、もとの保険の加入状況や自身の健康状態によって決まります。売却金を一括で受け取る仕組みの会社もあれば、年金方式で毎月少しずつ支払われる仕組みを取っているところもありますので、自分の状況や希望に合った受け取り方法を選べる会社にしましょう。

ただ、生命保険には、無料で付帯できるリビングニーズ特約があります。リビングニーズ特約を付帯していると、被保険者の余命が6ヶ月以内と診断されたときに死亡保険金の一部あるいは全部が支払われます。すると、リビングニーズ特約による受取金額が、保険の買取金額を上回る可能性があります。保険の買い取りを検討する場合は、頭に入れておきましょう。

まとめ

以上、リバースモーゲージと生命保険の解説をしました。リバースモーゲージと生命保険は併用できますが、場合によっては解約や保険の買い取りを検討した方がよい場合もあります。保険金の受取人となる相続人と、よく相談するのが大事です。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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