2024年9月17日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージを利用中に亡くなると配偶者(妻)はどうする?

自宅を担保に金融機関から融資を受けるリバースモーゲージは、高齢者でもまとまったお金を借りられることが魅力です。元本返済は契約者がお亡くなりになってから相続人が家を売却するなどの方法で行いますが、配偶者(妻)が自宅に住み続けたい場合はどうすればよいのでしょうか。配偶者が担保物件に住み続けられる方法や、リバースモーゲージの基本的な仕組み、メリット、デメリットについて解説します。

リバースモーゲージの仕組みや利用条件

まずはリバースモーゲージの基本的な仕組みや利用条件について解説します。リバースモーゲージを検討したい場合は、ご自身の希望に沿った仕組みかどうか、条件に合うかどうかを確認してみましょう。なお、利用条件は金融機関によって若干違います。

リバースモーゲージの仕組み

リバースモーゲージは、自宅を担保に設定し、自宅の評価額を元に融資極度額(借りることができる最大金額)を決め、その範囲内で借り入れを行う融資の仕組みです。一度にまとまった金額を借りることもできれば、年金のように毎月決まった額を借りることも可能です。

リバースモーゲージで借りたお金を返済するとき、契約者の存命中は、毎月利息だけを支払います。そして契約者がお亡くなりになった後、相続人が担保物件となっていた自宅を売却するなどの方法で元金を返済します。

リバースモーゲージの利用条件

リバースモーゲージの利用条件は、概ね以下の通りです。

  • 50歳、または55歳以上であること

融資を開始する年齢の上限は80歳までとされているケースがほとんどです。

  • 安定した収入があること

もともと高齢者向けのため、高収入でなくても構いません。年金収入があれば条件を満たせる場合が多いです。

  • 金融機関が指定するエリア内にある物件であること

リバースモーゲージは全国の金融機関で商品展開されています。それぞれの金融機関で、対象エリアが決まっています。

  • 金融機関が指定する種類の不動産であること

戸建て住宅に限って募集をしている金融機関もあります。都市部の利便性が高い土地であればあるほど、マンションでも審査してもらえる可能性が高まります。

  • 相続人が了承していること

リバースモーゲージを利用すると、最終的には担保となった自宅を売却するか、相続人が残債を負担するか、いずれかの方法で一括返済しなければなりません。相続人の了承がなければ、リバースモーゲージは使えません。

リバースモーゲージの責務者が亡くなった場合

リバースモーゲージでは、契約者がお亡くなりになればすぐに元金を一括返済しなければなりません。例えば契約者が夫の場合、夫が亡くなれば妻は住み慣れた自宅を手放さなければならないのでしょうか。

各金融機関では、契約者の配偶者が路頭に迷わないための方法を用意しています。次の3つの方法で、配偶者は自宅に住み続けられます。

連帯債務で借り入れた場合

リバースモーゲージを、夫婦の連帯債務で契約できる金融機関があります。連帯債務で契約を行えば、夫婦のどちらかが亡くなった後も契約を継続できます。元金の返済は、夫婦のいずれもが亡くなった後に、相続人が自宅売却などの方法で行います。

契約を引き継ぐことができる場合

契約者が亡くなった後、配偶者が契約を引き継ぐことができる金融機関があります。ただし引き継ぎのときにも審査があり、妻の年齢などが利用条件に合わなかった場合は審査が通らない可能性もあります。

残債務を現金一括で返済する場合

元金を現金で一括返済できれば、リバースモーゲージの契約自体が終了し、自宅を売却する必要がなくなります。

リバースモーゲージのリスク

リバースモーゲージは、契約者がお亡くなりになった後も配偶者が自宅に住み続けられる仕組みを持っているため、安心して検討することができます。ただ、融資であるがゆえにリスクも存在します。次の3つのリスクを把握し、対処法を知っておきましょう。

長生きリスク

年金のように毎月一定金額を借り入れする場合、借り入れの合計額が融資極度額に達すると、融資が止まります。長寿は喜ばしいことであるものの、長生きすると融資が止まる可能性も高くなります。

金利上昇リスク

リバースモーゲージの多くは変動金利制を採用しています。変動金利制では、金利が上昇すると月々の返済金額がアップします。月々の返済金額は利息のみなので、契約するときは「この金額なら支払っていける」と安心しがちですが、金利が上昇したときのことを想定しておかなければなりません。

評価額の下落リスク

担保となる自宅の評価額は定期的に見直されます。周辺の利便性が悪くなるなどすると、評価額の下落に繋がります。すると、融資極度額も減額されてしまう可能性が否めません。

これら3つのリスクを回避するために、あくまで必要最小限の融資を心掛けましょう。とくに毎月一定額の借り入れを行う際は、必要最小限の金額で設定するのがおすすめです。

リバースモーゲージのデメリット

リバースモーゲージのデメリットを知っておけば、契約後の「こんなはずじゃなかった」を防げます。デメリットへの対策方法も解説するため、ぜひ参考にしてください。

相続人が担保となった自宅を相続できない

契約者がお亡くなりになった後、相続人は元金を現金で一括返済しない限り、担保となった自宅を売却することになります。相続人にとって思い入れのある実家であった場合でも、手放さなければなりません。

リバースモーゲージの契約時には、相続人とよく話し合い、了承を得るようにしましょう。

配偶者以外との同居が難しい

配偶者以外の同居人がいると自宅のスムーズな売却に繋がらないため、審査が通りにくい可能性があります。子世代などと同居している場合は、リバースモーゲージを利用する際に理解と協力が必要です。。

融資極度額は担保評価額の50~70%

融資極度額は、イコール担保評価額ではありません。担保評価額の50%から70%の範囲で、融資極度額が決められます。つまり一般的な売却の形を取った方が、得られる売却益が大きいということです。ただ、売却してしまえば、もう自宅には住めません。ずっと自宅に住み続けたい場合は、やはりリバースモーゲージの方が希望に叶った生き方を全うできるでしょう。

リバースモーゲージのメリット

最後に、リバースモーゲージのメリットをお伝えします。リスクやデメリットを知った上で、メリットに強い魅力を感じたなら、リバースモーゲージを本格的に検討してみましょう。

住み慣れた自宅でずっと過ごせる

リバースモーゲージには、存命中は家を手放さずに済むという安心感があります。老後の資金に困っていても、大きな財産である自宅を失うことはありません。とくに、リフォーム資金に困ったときなどにこの仕組みの有用性を感じるでしょう。

ただ、なかには契約期間が決まっているリバースモーゲージもあるため、金融機関によく確認しましょう。

資金用途は原則自由

一般的な住宅ローンは、融資を受けたお金を住宅関連にしか使えません。しかしリバースモーゲージの資金用途は原則自由なので、例えば家をリフォームして余った金額を旅行などに使うことができます。

ただし、事業目的で利用できないリバースモーゲージもあるため注意が必要です。

存命中の負担が少ない

リバースモーゲージは、契約者の存命中は利息のみを返済します。通常のローンでは利息と元金を組み合わせて返済するため、元金部分がないぶん、リバースモーゲージは返済負担が少ないといえます。余裕のない年金生活であっても、返済の計画を立てやすくなります。

まとめ

リバースモーゲージを利用しても、契約者の死後に配偶者が路頭に迷うことのないような工夫があります。連帯債務での契約や引き継ぎなど、どのような手段が可能か金融機関に相談してみましょう。また、リバースモーゲージを検討するときには、メリット、デメリット、そしてリスクをしっかり理解しておくことが重要です。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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