老後の年金生活でお金が足りなくなり、破産してしまったらどうしますか。シニアの生活には2000万円の老後資金が必要とされ、例え退職金が入ったとしても、老後破産は他人事ではありません。「収入が少なく老後資金が足りない。どうしたらいい?」「破産しないために、貯蓄の他に今から準備できることを知っておきたい」と不安を抱えている人のために、老後破産する原因をご紹介したうえで、老後破産しないためにできることや注意点を解説します。
老後破産とは、退職してから年金に頼る生活に切り替わった結果、お金が足りなくなり困窮状態になってしまうことをいいます。「老後破産に陥るのは、野放図にお金を使う人だ」「普通のサラリーマンなら退職金もあるし、破産状態などにはならないはず」と思っている人もいるでしょう。しかし、きちんと退職金をもらってリタイアし、年金暮らしを始めるような普通の人でも、老後破産になってしまう恐れがあります。
総務省統計局によれば、年金生活者の実収入は、定年となってから再び採用されて働いた「再雇用期間」の約5割程度に落ち込んでしまいます。人世帯当たり一か月平均の実収入平均額は21万1000円、可処分所得は17万8000円で、その一方、消費支出は25万8000円です。つまり一か月あたり8万円程度の赤字になってしまいます。
1か月に月8万円を、全て貯蓄で補えるでしょうか。個人年金を受け取ったり、資産を取り崩したりして賄っても、なかなか厳しいという人は大勢います。この結果、老後破産への道をたどってしまうのです。報道によれば、全国200万人もの独居老人が老後破産に陥っています。
参考:総務省統計局「家計調査結果からセカンドライフを生活設計~統計は私たちの暮らしの「羅針盤」~」
司法統計によると、令和3年における自己破産事件は6万8,240件となっています。令和元年の7万3,095件、令和2年の7万1,678件には及びませんが、コロナ禍がやや落ち着いてもなお、高水準にとどまっているのは注目すべき現象です。
また、日本弁護士連合会の調査によると、破産の理由は「生活苦・低所得」が26%程度、次に多い、「病気・医療費」が10%程度となっています。
破産と聞くと多くの人は「ギャンブルや浪費による結果だろう」と思うかもしれません。しかし、破産の理由として「ギャンブル」と答えた人はわずか3%程度。最近話題のクレジットカード破産も、4%程度にとどまっています。散財しないにもかかわらず、貧困や病気によって破産に陥る人がかなりいることが分かります。
さらに破産した人の年代構成を見ると、60歳代が16%程度、70歳代以上が9%程度。あわせて全体の25%ほどが、老後破産と思われることが分かります。
また、負債額は100万円台が14%程度、次が200万円台で15%程度であり、1億円などの莫大な借金を抱えて破産している人は3%未満となっています。
老後に収入が少なくなり、あるいは病気などによる高額な医療費が原因で少しずつ借金が増えていく。会社員時代ならボーナスで完済できた金額の借金を返すメドがなく、破産してしまう。そんな構図が垣間見えます。
どうして、老後破産になってしまうのでしょうか。その原因は主に次の4つです。
収入が半分程度になっているのに、以前と同じようにお金を使ってしまったら、そのうち当たり前に困窮します。外食がないと生きていけない、半年に一度は海外旅行したい、ボーナスで高級品を買うのは当たり前……といった感覚を持つ人は要注意です。
シニアになると、大きな病気をしやすくなります。保険のつかえない高額治療を受けたり、介護が必要になったりすると、大きなお金が飛んでいき、困窮することになります。親の介護と配偶者の介護が重なり、家を行き来する交通費やケアのための出費、バリアフリーのためのリフォーム代などで家計が逼迫していく人もいます。
晩婚化などにより、マイホーム購入のタイミングが遅れる人が増えています。不景気などによる勤務先の経営悪化で給料が減るとローンの支払いが滞ってしまい、老後にずれ込むことがあります。年金生活者が住宅ローンを支払い続けるのはとても大変です。
求職中の息子や、離婚して戻ってきた娘とその子など、生活能力がない子世代との同居は家計を圧迫します。頼りになるはずの身内が足かせになってしまうケースです。
老後、年金などでいくら収入があるかをきちんと把握しておきましょう。そのうえで今の支出が見込み収入を超えていたら生活レベルを落とす覚悟が必要です。そのうえで、どうしても持ち出しが生じてしまう分は、貯蓄を活用できるのか、新しく資産運用が必要なのかを割り出します。
老後に必要な資金を収入や家族構成ごとにシミュレーションで解説
老後の生活資金をシミュレーションしたうえで、毎月の収入では足りない金額を貯蓄や運用で賄えるよう、準備を行いましょう。積立定期預金や個人年金を検討するほか、NISAなど税制優遇措置のある運用制度を活用するのがおすすめです。
税金の支払いからは、生涯免れることができません。滞納しているなら、その金額から目をそらさず、しっかり納付しましょう。滞納したままにしておくと、財産が差し押さえられる可能性もあるためです。年金生活者になってから財産の差し押さえにあったら、死活問題になります。
病気や介護の問題が生じると、年金生活者でなくても生活は困窮します。シニアになっても健康な身体を保てるよう、食事に気をつけたり、日ごろから運動をしたりなどしましょう。そのためには、いくら節約といっても栄養バランスが片寄った食事はNGです。
リバースモーゲージとは、家を担保に借り入れをするシニア向けの融資システムです。担保にした家には、そのまま住み続けることができます。自宅の査定額によって借り入れ限度額が決まり、まとまった金額を受け取ることも、年金のように毎月一定額を借り入れることもできます。
一般的な担保型融資と大きく違うのが、返済方法です。リバースモーゲージでは、毎月の返済額は利息のみで、元金の返済は契約者がお亡くなりになった後に行なわれます。相続人が担保となっていた家を売却するなどの方法で返済するのです。
リバースモーゲージなら存命中は返済負担を抑えることができるため、安心して生活資金を確保できます。資金用途は、事業や投資にあてない限りは自由です。家の買い換えやリフォームなど住宅関連に用途を特化した、リバースモーゲージ型住宅ローンもあります。
リースバックとは、自宅を売却した上で買主と賃貸契約を結び、賃料を支払って元の自宅に住み続けるものです。売却益は、生活資金の他、事業や投資などにも使うことができますし、もちろん賃料に充てることも可能です。
リースバックを利用すれば、自宅を売却した後も、そのまま自宅に住み続けられます。ただ、賃貸生活を長く続けていると、賃料の総額が売却額を超えてしまうこともあります。「将来は老人ホームなどへ住み替えたいけれど、そのためには前もって大きな金額が必要になる」など、まとまった金額が必要な人に向いています。
リースバックとは?メリットやデメリットと失敗しないための注意点
地域包括支援センターは、地域における高齢者の暮らしを支え、介護や病気の予防とサポートに努める自治体主導のシステムです。とくに介護や病気で困窮しそうになったときは、一度相談してみることをお勧めします。
引な勧誘者から高額な商品を送りつけられてローンが残ってしまった、多重債務が膨らんで返済が厳しいといった事情を抱えているなら、「誰もがアクセスしやすい相談窓口」として、局番なしの188に「消費者ホットライン」が開設されておりますので相談してみましょう。お近くの消費生活相談窓口をご案内いただけます。
病気になり通院のためのお金が負担になりそうなら、無料定額診療施設の利用を検討しましょう。経済的に困窮している人向けに、無料または低額で診療を提供してくれる医療機関です。利用においては、無料定額診療を行っている医療機関の窓口で相談する必要があります。各県にいくつか設置されているので、調べてみましょう。
生活保護は「最後の砦」として、自立心の強い高齢者ほど敬遠する傾向があります。しかし、困窮の末、餓死や孤独死などに陥ってしまったら、かえって周囲に迷惑をかけてしまいます。最悪の状態になる前に、行政に頼りましょう。
もらえる年金をシミュレーションして「これだけしかもらえないのだから、老後は破産するしかない」と嘆く必要はありません。資産は、工夫して増やすことができます。例えば、自宅を担保にしてお金を借り入れるリバースモゲージという方法なら、生きている間の生活資金を手に入れられ、亡くなった後で自宅を売却することで返済できます。
リバースモーゲージとは? 仕組みとメリットやリスクなど注意点をわかりやすく解説!
自分の財産を把握すること、これからいくら必要なのか見積もりを立てること、そして資産運用のための情報収集を怠らないことが、老後破産を防ぐコツです。運用と貯蓄、社会のセーフティネットをきちんと活用して、明るい老後を手に入れましょう。