老後、海外へ移住したいと考えている人は、どのような準備が必要かご存知でしょうか。物価が安い国で長期ビザを取得し、年金で悠々自適に暮らすことには憧れがありますよね。特にマレーシアなどアジアの国々が、老後の移住先として人気です。老後の海外移住には、メリットもあればデメリットもあります。人気の国の紹介や移住先を決めるポイントを解説したうえで、海外移住の注意点をご案内します。
老後の海外移住に向いている国はどこなのでしょうか。若い頃であれば「刺激を得たい、多様な体験を将来に活かしたい」という視点で旅行や留学先を選んでいた人も、シニアになると「のんびりと、体調を崩しにくい国で安心して暮らしたい」という願望が出てきます。
老後の移住先として選ぶべき国の注目ポイントは、以下の4つです。
ここからは、以上の条件を満たす具体的な国について、一般財団法人ロングスティ財団が継続的に調査を行っている、「ロングスティ希望国・地域トップ10」のデータを参照しながら解説します。
ロングスティ希望国・地域トップ10で、2006年から14年もの間トップに輝いているのがマレーシアです。常夏の国というイメージが強いマレーシアですが、日本の夏のような高温多湿の厳しい暑さがずっと続くというよりも、日中はカラッとした暑さで、朝晩は涼しいため過ごしやすく感じるでしょう。日本の寒暖差に負担を感じている高齢者には安心の気候といえます。
公用語はマレー語ながら、英語も不自由なく使えるため、コミュニケーションの不安もあまりありません。また物価も比較的安めで、治安の良さにも定評があります。刺激が多い国にずっと住むのはなるべく避けたい老後でも、安心してのんびり過ごせます。
マレーシアに次いで、長年移住先として人気が高いのがタイです。タイの一番のおすすめポイントは、なんといっても物価の安さ。年金しか収入がなくても、日本でリタイア前に過ごしていたように暮らせるのが、高齢者にとって大変な魅力です。
熱帯気候のため気温は一年中高めで、通年温暖なのも高齢者に嬉しいポイント。ただ蒸し暑いときがあるので、苦手な人は注意が必要です。治安が良く、日本人が多く居住していることも安心感を高めます。
移住しても、事業や家族との交流などで頻繁に日本へ帰る予定があるという人におすすめなのがフィリピンです。日本との時差は1時間なので、帰国のたびに体調を崩すといった不安はあまりありません。フライト時間も4時間程度と比較的短めです。
美しい海に囲まれたフィリピンなら、「悠々自適」を絵に描いたような暮らしが期待できます。ただ、タイと同じように熱帯気候のため、蒸し暑い時期が続くときがあります。夏の暑さが苦手な人は、酷暑期となる4月から6月あたりに、一度出かけて体感を確かめておくのがいいでしょう。物価が安く、またリタイアメント世代の日本人が多いため安心感があります。
老後に海外移住をするメリットは、以下の3つです。
物価の安い国へ移住すれば、年金しか収入がなくても大きな不自由なく暮らせるでしょう。今の家計簿と定年後の想定収入を見比べて、「日本で暮らすと収支ギリギリになってしまう」「長生きするほど貯金がどんどん減っていく」と不安がある人は、海外移住を検討するのもひとつの手です。
定年後は、会社中心の生活から家庭中心の生活へ、あるいは正社員からパートやアルバイトなどへの転身で「第二の人生」が始まります。どんな人生が待っているのか、ワクワクしている人も多いでしょう。海外へ移住すれば、全く新しい人間関係の中、知らない土地で1からのスタート。本当の意味で「第二の人生」となります。
おじいちゃん、おばあちゃんが海外へ移住すれば、孫にとって「両親の実家への帰省」は「海外旅行」へと変わります。魅力が数段アップするため、積極的に帰省したいと思ってもらえる可能性が高いでしょう。現地に家を買い、相続財産として残せれば、子や孫にリフレッシュ先をプレゼントできます。
老後の海外移住を選ぶ際には、以下の3点に注意しましょう。
海外移住の際には、年金を継続するための手続きを忘れずに行いましょう。居住していた市区町村への海外転出届を行ったうえで、年金の任意加入の手続きをします。さらに、受給開始年齢である65歳になったら、忘れずに年金請求を行いましょう。
参考:「海外居住者の年金請求」(日本年金機構)
海外では、日本の健康保険証が使えません。さらに、保険なしの診療はかなり高くつきます。移住先の国の医療保険に任意加入し、病気やケガに備えておく必要があります。移住先が決まったら、医療保険についても調べておきましょう。
長期ビザの種類や有効期間、使える条件は、国によってさまざまです。リタイアメントビザを取得する場合、一定の貯蓄額があることを証明しなければならないケースもあります。自分にはどんなビザが取れるのかをあらかじめ調べるのが大事です。
「この国がいいのでは」と感じたら、まずは下見が必須です。できればロングスティで実際の気候や物価、風土などを肌で実感し、「この国で暮らしていける」という確信を持ちましょう。もちろん配偶者もロングスティに同行し、夫婦で忌憚なき意見を交わして両者が納得する国を選びます。
どの国へ移住することになっても、英語のスキルがあったほうが住みやすくなります。また移住先が決まったら、その国の公用語にチャレンジしましょう。翻訳アプリなどの使い方をマスターするのも大事です。現地での人間関係が豊かになると、人生がぐっと楽しくなります。
海外移住をすることで持ち家が空き家になるなら、家の管理についても考えておかなければなりません。売却するか賃貸に出せば、海外居住の費用を得ることができます。「移住に失敗したときのために、家を残しておきたい」と考えるなら、子どもや管理会社に定期的なメンテナンスをお願いするなど、管理体制をしっかりするのが大事です。
老後の海外移住によって、生活費を安く抑えながらのんびり暮らすことが可能になります。注意点を踏まえたうえで、どんな国が自分や配偶者に向いているのかを検討しましょう。下見の際は、旅行気分を捨てて「ここで生活できるか」を厳しい目でジャッジしてみてください。自分なりの条件をクリアした国で、第二の人生を始めましょう。