2023年12月25日
老後
【FP解説】60歳以上の働き方は?定年後の再就職・再雇用など仕事の選び方を解説

定年後も仕事を続ける人が増えています。現役時代よりも給与が減ってしまう恐れはありますが、年金以外の収入源があることは老後の安心に繋がるでしょう。60歳以上の働き方には、再就職や再雇用、経験や資格を活かして自分で事業を興すといった選択肢があります。令和のシニアがどんな仕事を選んでいるのか解説しながら、60歳以上の働き方について解説します。

60歳以上で働く人とは

60歳以上で働く人とは、勤務していた会社をいったん定年になった後、再雇用されたり、再就職したり、あるいは他の仕事を選んで働き続ける人を指します。また、なかには60歳になる前から個人事業主として働いており、定年を設けず働き続ける人もいるでしょう。

まずは世の中のシニアがどのくらい働いているのか、どの程度の給与を得ているのか、データを使って解説します。

60歳以上の就業率

総務省が2021年に行った調査によると、60歳から64歳の男女就業率は71.5%でした。65歳から69歳では50.3%、70歳以上では18.1%となっており、多くのシニアが60歳を過ぎても働いているといえます。

2011年からの10年間で見ると、60歳から64歳の男女就業率は14.4ポイント上昇しています。65歳から69歳の枠も、14.1ポイント上昇しており、ここ10年で働く高齢者が多くなったことが分かります。

引用:「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-(令和4年9月18日 総務省)

60歳以上の平均給与

60歳以上の人はどのくらいの収入があるのでしょうか。また、収入は他の年齢層と比べて高いのでしょうか、低いのでしょうか。

国税庁は毎年「民間給与実態統計調査」の一部として、民間の事業所で働く給与所得者の平均給与額を公表しています。令和4年の調査における年齢階層別の平均給与は、以下の通りです。

出典:「令和4年民間給与実態統計調査」(国税庁)

60歳から64歳の平均給与は441万円(男性569万円、女性267万円)。65歳から69歳では少し給与額が下がり、342万円(男性428万円、女性227万円)となっています。

55歳から59歳、定年間際の平均給与が546万円(男性702万円、女性329万円)ですから、定年後はぐっと給与が低くなってしまうことが見て取れます。とくに男性は、定年になるとおよそ150万円も収入を減らしてしまうことになります。

定年を過ぎると給与は減ってしまう傾向にありますが、完全にリタイアして収入が全くのゼロになるよりは、やはり働いた方が安心です。次章では、定年後も働き続けるためにどんな働き方が考えられるかを解説します。

60歳以上の働き方

60歳以上で働く場合、考えられるのは以下の4通りの働き方です。

再雇用

定年までいた勤務先に再雇用されるケースです。「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」により、事業主の努力義務として70歳までの継続的な雇用が設けられました。定年の引き上げや再雇用制度の導入により、60歳以降も継続して働ける環境を整えている会社も多いでしょう。

なるべく今の会社で長く働きたい場合は、勤務先に再雇用制度があるか調べてみるのがおすすめです。

再就職

60歳以上の働き手を歓迎している会社に再就職する方法です。ただし、シニアの正規雇用は狭き門です。有期の契約社員となる場合が多いでしょう。

アルバイト

パート、アルバイトとして雇用される方法です。厚生労働省によると60歳から64歳までの入職者においてはおおむね7割が、65歳以上では8割がパートタイム労働者で、最も多く選ばれる雇用形態といえます。

個人事業主

就職を選ばず、自分で事業を興す方法です。「事業を興す」というと大ごとのように感じるかもしれませんが、ネットショップ運営など最近では手持ち金が少なくても起業できる事業がたくさんあります。また、資格職など専門性の高い仕事をしていた人は、今までのキャリアを活かして独立することも考えられます。

60歳以上で仕事を選ぶポイント

60歳以上で仕事を選ぶときには、次の3つをポイントにしましょう。

なるべくストレスのない仕事を選ぶ

60歳を過ぎると、どんな人でも体力がなくなってきます。そんななかで精神的なストレスまで抱えると、体調を崩してしまう恐れがあります。なるべく精神的ストレスを抱えないと感じられる仕事を選びましょう。

何がストレスになるかは人それぞれです。「新しい環境に飛び込むのは気が引ける」と感じる人は、今の勤務先で再雇用されるのが最良の道でしょう。一方で「今までの仕事がストレス」と感じる人は、再就職先を探しましょう。

職種についても、「これから体力的なことが心配だから、デスクワークが良い」と感じる人もいれば「いつまでも若々しくいるために、活発に動く仕事をしたい」と感じる人もいるでしょう。

自分が最も気持ちよく働けると感じる環境を大事に、仕事探しをしましょう。

細く長く続けられると感じられる仕事を選ぶ

今後10年、細く長く働き続けられるかを考えて仕事を選びましょう。先述の通り、高年齢者雇用安定法によって70歳までの継続雇用が事業主の努力義務となっています。

フルタイムでの勤務しか許されていない職場に就職すると、元気なうちは良くても、少し歳を重ねて体調を崩しがちになったら辞めざるを得ないかもしれません。その後、新しい雇用先を探すのは困難になるでしょう。

5年後、10年後のことを考えて、体調に自信がなくなってきたら少し勤務日数や時間を減らすことが可能な仕事が理想的です。

必要なお金を稼げる仕事を選ぶ

65歳から年金が受給できるため、「もらえる給与はお小遣い程度で大丈夫」と考えている人もいるかもしれません。しかし、自分がもらえる年金額をご存じでしょうか。年金額によっては、自分が思っているよりも給与の高い仕事に就かなければならないかもしれません。

「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で、将来の年金見込額を調べてみましょう。そして今の家計収支を計算し、支出が十分にカバーできる金額を、年金額と給与額で満たせるように必要給与額を計算します。

どんなに満足度の高い仕事でも、食べていけなければ辞めざるを得ません。あるいは、高齢者の身でかけもちアルバイトをしなければならなくなってしまいます。必要額を稼げる仕事を選びましょう。

60歳以上の仕事の探し方

今までの勤務先に再雇用されるのではなく、新たに雇用先を探したい人は、以下の3つの方法で仕事探しをしましょう。

ハローワーク

ハローワークでは60歳以上の人にも仕事を紹介しています。定年後、再就職を希望してハローワークで手続きすれば基本手当(いわゆる失業手当)が給付され、基本手当の受給中に再就職すれば「高年齢再就職給付金」が給付される場合があります。

シルバー人材センター

シルバー人材センターは、市区町村単位に置かれた社団法人です。高齢者に臨時や短期のアルバイトを提供しています。一定収入の保障はありませんが、高齢者に適している仕事ばかりが紹介されるため、過度な負担なく安心して働けます。

ただ、就業できるのは月10日または週20時間未満と決められています。月に8日から10日働くと、およそ3万円から5万円の収入になります。

求人サイト

さまざまな求人サイトから、パートやアルバイトの情報を得られます。求人サイトには多種多様な仕事が紹介されているため、自分の年齢や希望する働き方などにマッチする求人を見つけるのが少し大変かもしれません。シニアの就業に特化した求人サイトもあるため、合わせて利用するのがおすすめです。

まとめ

以上、60歳からの働き方について解説しました。少子高齢化が進んだ現代では、さまざまな現場で経験豊富なシニアの力が求められています。再雇用や再就職、起業など、自分のキャリアが無理なく活かせる働き方を探してみてください。

また、定年を過ぎても働きたいと考えるなら、健康維持が最も大事です。体力づくりをはじめるのは、いつからでも早すぎることはありません。いつまでも活き活きと働いて自分らしく生きるために、食生活の見直しや運動など、健康を意識した生活を始めましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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