2024年2月16日
老後
【FP解説】投資信託の分配金と株の配当金の違いは?投資信託の基礎知識もわかりやすく解説

老後の資金作りに向けて、これから投資信託を始めたいと考えている人もいることでしょう。投資の用語に「分配金」と「配当金」があります。これらの違いをご存じでしょうか。また分配金の中でも「普通分配金」や「特別分配金(元本払戻金)」という言葉があり、それぞれ何が利益になるかが違い、税金のかかり方も変わってきます。投資家にとって必須となる用語の解説を行った後、投資信託の基礎知識についてもご案内します。

投資信託の仕組みと分配金

投資信託には分配金があり、配当金は支払われません。分配金と配当金の違いを解説する前に、まずは投資信託の仕組みについてご説明します。

投資信託の仕組み

投資信託とは、たくさんの投資家から資金を少しずつ集めて一本の大きな基金とし、この基金を金融の専門家などが複数の株式や不動産に分散投資する投資の仕組みです。投資で得た利益は、各投資家に分配されます。

投資信託を行う投資家は、一つの会社の株式を購入するわけではなく、多数の会社の株式などを少しずつ購入し運用することになるため、株価の変動に対するリスクを回避できます。そのぶん、大きなもうけは出にくくなります。

よって、投資信託はローリスク・ローリターン型の投資方法として知られています。投資の初心者も安心して運用することが可能です。

分配金とは

投資信託においては、定期的に投資家へ分配金が支払われます。分配金の原資は、運用益などの一部です。分配金には「普通分配金」と「特別分配金」があり、それぞれ以下のように内容が違います。

  • 普通分配金

投資信託の運用益から支払われる分配金です。投資家にとっては資産が増えることになるため、確定申告を行う際に配当所得として課税されます。

  • 特別分配金(元本払戻金)

投資した元本の一部が払い戻される分配金で、投資家にとっては元々自分のお金だったものを受け取る形になります。投資家にとって資産が増えることにはならないため、非課税です。

なお、投資信託には分配金が支払われないタイプもあります。定期的にお金が還元されないため、一見して損をしているように思えますが、そうともいえません。その理由については、次項で詳しく説明します。

投資信託の分配金と株の配当金の違い

株の配当金は、出資比率に応じて会社の利益の中から還元されるお金です。一般的に、会社の利益が大きければ配当金は増え、利益が小さければ配当金は減ります。

株式を購入すれば絶対に配当金がもらえるというわけではありません。利益によらず配当金を支払わないとしている会社もあります。一方で、利益がなくても一定の金額を支払うとしている会社もあります。

投資信託の分配金と、株の配当金の違いは以下の3つです。

受け取るお金の内訳が違う

投資信託の分配金の内訳は、投資を行っている複数の企業から出た株式の配当金や債券の利子、また運用益です。全体の利益から分配されます。

一方で株式の配当金は、株式の出所である一企業が事業を行って発生した利益から支払われています。運用益からは支払われません。

投資元本への影響が違う

投資信託の分配金のなかでも特別分配金が発生すると、投資元本に影響が出ます。特別分配金のもとになっているのは、ほかならぬ元本だからです。元本を取り崩して現金を受け取るという仕組みになっています。

一方で、株式の配当金は事業の利益から発生しているため、株式の元本そのものに影響はありません。

今後の運用への影響が違う

普通分配金の原資となる運用益は、もともと投資家の元本ではありません。しかし投資家が分配金を受け取ることで、再投資に回せる運用益が減ってしまいます。

もともと投資は運用益が増えていけばいくほど投資に回せるお金が増え、利益がふくらんでいくのが魅力の一つです。分配金の形で投資家に現金が戻されてしまうと、利益が出にくくなってしまいます。

この影響を防ぐため、分配金のない投資信託も商品として展開されています。定期的に現金を受け取るよりも、どんどん利益を増やしたいと考える人に人気です。

一方で株式の配当金は株そのものに影響を及ぼしません。保有する株式が減少することはなく、ボーナス的なイメージで受け取れます。

投資信託の分配金と株の配当金の共通点

投資信託の分配金と株の配当金には、共通点もあります。それは、受け取れる金額が変動するということです。

分配金は、投資を行っている複数の会社の業績や運用利益により変動します。配当金も、会社の業績によって受け取れる金額が変わります。

投資信託の分配金有無による注意点

投資信託は分配金があるタイプとないタイプがあり、それぞれ注意すべきことが違います。以下に紹介するメリットとデメリットを引き比べ、納得のゆく方を選びましょう。

分配金ありのメリット・デメリット

分配金があるタイプのメリットは、利益の一部を現金として受け取ることで、利益の確保ができることです。分配金を受け取らなければその分を以後の運用に充てられますが、もしかしたら市況が悪化して利益が減少してしまうかもしれません。利益を仮に確定させ、その分を受け取っておけるのが分配金のメリットです。

デメリットは、前述したように、生まれた利益をさらなる投資に充てる機会を失うことです。利益が利益を生んで雪だるま式に大きくなっていくことを、複利効果といいます。この複利効果の恩恵を受けにくいのが、分配金のデメリットです。

分配金なしのメリット・デメリット

分配金がなければ、生まれた利益を投資に回せるため、長期運用すればするほど利益がふくらんでいきます。最終的に大きな利益を得られれば良いと考える人には、分配金のないタイプが向いているでしょう。

分配金がないことのデメリットは、解約するまで現金を受け取れないことです。定期的なお楽しみとしての分配金がないため、投資をしている実感が湧かないかもしれません。また、市況が悪化していると解約のタイミングを見失い、いざ現金が欲しいときに大きな損をしてしまうかもしれません。

投資信託を検討する際の注意点

投資信託を始めようと考えている方は、以下の3つに注意しましょう。理解しておくと、「こんなはずじゃなかった」といったトラブルが減ります。

手数料を確認する

投資信託には以下のようなコストがかかります。

  • 購入時手数料

購入時に販売会社に支払う手数料です。手数料がないファンド(ノーロード)も存在します。

  • 運用管理費用(信託報酬)

業務に対する手間賃のような物です。信託財産から、日々差し引かれます。

  • 信託財産留保額

投資信託の中途換金時に撤収される手数料です。

元本割れのリスクを理解する

投資信託は株式運用に比べてリスクの低い商品ですが、元本割れが起こらないとはいえません。あくまで投資であり、利益が出ず損失を伴う可能性もあることを理解しておきましょう。リスクを少しでも回避するために、なくても生活などに影響のない余剰資金で始めるのがおすすめです。

何のための投資かを明確にする

投資信託は長期投資を行った方が利益の出やすい商品です。「老後のために資金作りをしておこう」「子どもや孫の大学進学まで運用して、教育資金を少しでも増やそう」など、いつまで、どのくらいお金を確保しておきたいかを明確にしておくと、解約のタイミングを見失わずに済みます。

まとめ

以上、投資信託の基本的な仕組みを解説しながら、分配金と配当金の違いについてご案内しました。投資信託に興味が出たという方は、家族ともよく相談して少額から始めるのがおすすめです。

投資信託の窓口は、銀行や郵便局、証券会社です。購入方法は機関により異なります。なじみのある銀行などからパンフレットを取り寄せるなどして、検討してみましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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