2024年11月26日
老後
【FP解説】高年齢求職者給付金とは?受給条件や給付制限などわかりやすく解説

高年齢求職者給付金とは、65歳以上の会社員などが離職し、就労意欲があるのに職業に就くことができないときに支給される給付金です。65歳以下の人には、失業保険が適用されます。高年齢求職者給付金はハローワークで手続きすることにより受給が決まりますが、基本手当の日額は賃金日額によって違います。高年齢求職者給付金の受給条件や給付制限など、概要について解説します。

高年齢求職者給付金とは

高年齢求職者給付金とは、65歳以上の雇用保険被保険者が離職し、失業の状態にあるときに支給される給付金です。「失業の状態にある」とは、ただ無職であることとは違います。再就職の意思があり、いつでも就職できる能力・環境であるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態を「失業の状態」といいます。

つまり高年齢求職者給付金は、65歳以下の雇用保険被保険者が失業したときに給付される失業手当と同じようなものです。ただし、受給日数や受給方法が違います。失業手当は最低でも90日間の給付日数が与えられていますが、高年齢求職者給付金は30日もしくは50日です。また、高年齢求職者給付金は一括支給ですが、失業手当は4週間ごとに資格認定を必要とし、分割で支給されます。

なお、高年齢求職者給付金と似た言葉に高年齢再就職給付金があります。高年齢再就職給付金は、雇用保険の被保険者が60歳以上65歳未満で再就職した場合に支給される給付金です。高年齢求職者給付金とは、対象年齢や就職した状態であるかどうかが違います。

高年齢求職者給付金の受給条件

高年齢求職者給付金の受給条件は、以下の通りです。

雇用保険の被保険者期間を満たしていること

離職の日以前1年間に賃金支払基礎日数11日以上の月が6ヶ月あること。当てはまらない場合は、賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の月を1ヶ月として計算します。

求職の意思があること

高年齢求職者給付金は、あくまで今後も働きたいと意欲を持つ高齢者のための制度です。退職して完全に引退する人は使えません。

受給できないケース

病気などのためすぐに働くことができない、自営業を行うつもりである、再就職先がすでに決まっているなどの場合は、受給できません。あくまでハローワークのあっせんを受けて再就職する意欲を持つ人が制度の対象となります。

高年齢求職者給付金の受給額

高年齢求職者給付金の受給額は、離職前の給与と雇用保険の被保険者期間によって決まります。用語解説を交えながら計算方法をご紹介します。

賃金日額

まずは、受給額の計算に必要な賃金日額を割り出します。高年齢求職者給付金の賃金日額は、退職前6ヶ月間の賃金の合計を180日で割った金額です。1日あたりいくらの給与を得ていたかを計算します。

基本手当日額

賃金日額に給付率をかけて、基本手当日額を割り出します。給付率は80%から50%で、賃金日額が高くなるほど給付率は低くなり、上限額以上が給付されることはありません。賃金日額と給付率の関係は、以下の表の通りです。

【基本手当日額の計算方法】 (2024年8月1日から)

賃金日額

給付率

基本手当日額

2,869円以上5,200円未満

80%

2,295円~4,159

5,200円以上11490円以下

80%~45

4,160円~5,170円(※)

11,490円超16,490円以下

45

5,170円~7,420

16,490(上限額)超

7,420円(上限額)

※出典: 雇用保険の基本手当日額が変更になります(~令和6年8月1日から~)

※基本手当日額=次のいずれかのうち低い方の額

  • 賃金日額×80%-35%×{(賃金日額-5,200)÷6,290}×賃金日額
  • 賃金日額×5%+4,596

支給日数

雇用保険の被保険者であった期間が1年未満であれば30日分、1年以上であれば50日分の給付金を受け取ることができます。

給付額の算出例

以上を踏まえて、具体的に給付金の合計額を算出してみましょう。雇用保険の被保険者期間が1年以上ある人が、退職する前の6ヶ月間、給与として27万9,000円をもらっていた場合、高年齢求職者給付金の合計額は以下になります。

賃金日額…27万9,000円×6ヶ月÷180日=9,300円

基本手当日額…次のいずれかのうち低い方の額

  • 9,300円×80%-35%×{(9,300円-5,200円)÷6,290}×9,300円=5,318円
  • 9,300円×5%+4,596=5,061円

よって、基本手当日額は5,061円

合計給付金額…5,061円×50日=25万3,050円

高年齢求職者給付金が支給されるまでの期間・期限

高年齢求職者給付金は一括でまとまった金額が支給されますが、支給前に制限期間が設けられています。また、受給期限が決まっています。それぞれ解説します。

待期

離職後、最初にハローワークへ行き、申込みを行って受給資格者であることの確認を受けた日から、失業の状態にあった日が通算して7日間経過してからでなければ、高年齢求職者給付金は支給されません。この7日間を「待期」といいます。

退職後、長くハローワークへ行かなければ、そのぶん給付金をもらえるタイミングも後ろへずれていくということです。注意しましょう。

給付制限

正当な理由がなく自己都合で退職した場合、待期の7日間に続いて2ヶ月間は給付されません(給付制限)。5年間のうち2回までは給付制限期間が2ヶ月、それ以降は3ヶ月となります。

なお、自己の責めに帰すべき重大な理由(重大な背信行為など)で解雇された場合、給付制限期間は3ヶ月となります。

受給期限

高年齢求職者給付金の受給期限は、離職の日の翌日から1年間です。期限を過ぎてしまうと、給付金を受け取ることができないため注意しましょう。また、満額を給付してもらうためには早めの手続きが必要になります。失業認定日から受給期間の末日までの日数が支給日数に満たないときは、その日数分しか支給されないためです。

失業認定は待期期間の後に行われます。受給期間が50日の場合、もし失業認定のタイミングが受給期限の50日前よりも後になってしまったら、受給期限日以降の残日数分は支給されなくなります。離職したらなるべく速やかにハローワークへ出向きましょう。

高年齢求職者給付金の申請~受け取りの流れ

高年齢求職者給付金の申請から受け取りの流れは、以下の通りです。

ハローワークへ必要書類を持参し申請

まずはハローワークへ行きます。必要書類は以下の通りです。離職票は、離職時などに勤務先から受け取ります。

  • 離職票-1

 氏名や口座番号などを記入していきます。個人番号欄はハローワークに来所してから、窓口で本人が記載します。

  • 離職票-2
  • マイナンバーカード

マイナンバーカードがない場合は、個人番号確認書類と身元確認書類を持参します。

  • 写真1枚

正面上半身、縦3.0センチ×横2.4センチ。運転免許証等を提示する場合は不要です。

  • 本人名義の預金通帳
  • 船員であったなら、船員保険失業保険証及び船員手帳

待期期間、制限期間を待つ

ハローワークにいって手続きをした日から、待期期間である7日間を待ちます。制限期間のある人は、制限期間の2ヶ月または3ヶ月を待つ必要があります。

口座への振り込み支給

失業認定日の約7日後、指定した金融機関の預金口座へ給付金が振り込まれます。土日祝日など金融機関の休日がある場合は、その日数分だけ入金が遅れます。

まとめ

高年齢求職者給付金は、離職し年金生活がスタートする高齢者の、当面の暮らしを支えてくれるものです。離職したら、速やかに申請しましょう。

そして人生100年時代、元気な高齢者が求められている仕事の分野はたくさんあります。第二の人生を充実させるため、自分はどんな仕事がしたいか、じっくり考えてみてはいかがでしょうか。

実際に高年齢給食給付金を給付される場合、詳しくは、以下のページを参考にしてください。

参考:離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>(厚生労働省)

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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