2025年1月23日
老後
【FP解説】シルバー人材センターとは?仕事内容や料金相場など注意点も解説

シルバー人材センターのお仕事は、除草などの外作業、襖や障子の張替といった室内での作業、家事の手伝い、一般事務などさまざまです。シルバー人材センターの説明会へ行き、会員になることで仕事を紹介されるようになります。「定年後、家計の補填に少しだけ働きたい」と考えている人もいるでしょう。シルバー人材センターの仕事内容、料金相場、メリットや注意点を解説します。

シルバー人材センターとは

まずは、シルバー人材センターの仕組みや概要、申請の流れなどについて解説します。

シルバー人材センターの仕組みと概要

シルバー人材センターとは、原則として60歳以上の方に仕事を紹介している組織です。市区町村ごとに置かれ、都道府県知事の指定を受けた社団法人が運営しています。

特徴的なのは、その目的です。シルバー人材センターは、高齢者に継続的、安定的な仕事を与えることを第一の目的とはしていません。高齢者が働くことを通じて「地域の役に立っている」などと感じ、生きがいを得ることを目的としています。よって、継続的な仕事を得る保証はありません。

仕事を得たいと希望する高齢者は、シルバー人材センターの会員となり、地域の一般企業や家庭、市区町村、都道府県などから発注された仕事を紹介されます。紹介された仕事を遂行すれば、配分金(報酬)を受け取ることができます。

シルバー人材センターの申請と流れ

原則として60歳以上の、健康で働く意欲のある人は、誰でもシルバー人材センターに入会できます。入会を希望する場合は、まず入会説明会へ参加する必要があります。自分の住所がある市区町村のシルバー人材センターへ問い合わせ、入会説明会の日程を尋ねましょう。

入会説明会では、説明終了後に入会受付が行われます。書類を提出した後、理事会で承認されたら会員登録が完了し、自分に適した仕事があったら紹介してもらえるようになります。

シルバー人材センターが注目される理由

今、シルバー人材センターが注目される理由は、第一に労働人口の減少のためです。少子高齢化による人材不足で、企業は人材獲得がなかなかできていません。社会人経験豊富なシニア層を確保できれば、人材不足を補えます。

また、仕事を求める高齢者も多くいます。内閣府発表の「令和3年版高齢社会白書」によると、60歳以上の日本人に「今後、収入を伴う仕事をしたいか」を尋ねたところ、「したい(続けたい)」とする割合は40.2%。4割もの人が、定年を経てもまだまだ働く意欲があるということです。

人材が欲しい企業と、仕事をし続けたい高齢者とをマッチングできる仕組みとして、シルバー人材センターは大きな役目を担っています。

シルバー人材センターの働き方

シルバー人材センターの働き方は、おおむね以下の3つです。

受託事業(請負・委任)

最も基本的な働き方です。シルバー人材センターが、家庭や一般企業、官公庁などから臨時的かつ短期的な業務や、簡易な業務を引き受けます。清掃や除草、受付事務、子育て支援サービス、観光ガイドなどが仕事例です。

シルバー人材センターは、会員の希望や適性を見ながら仕事を依頼します。そして発注者から料金の支払を受け、業務を遂行した会員に報酬の支払いを行います。会員は自らの裁量で仕事を完成させ、発注者は会員に指揮命令ができません。

シルバー派遣事業

受託事業では発注者が会員に指揮命令できませんが、シルバー派遣事業では、発注者が会員に直接指揮命令をして働いてもらうことができます。保育や介護の補助業務、一般事務、工場での軽作業などが仕事例です。

シルバー人材センターは発注者と派遣契約を結び、会員とは雇用契約を結びます。そして、シルバー人材センターが雇用している会員を、発注者に派遣する仕組みを取ります。

有料職業紹介

求人企業と原則60歳以上の求職者をマッチングするサービスです。求人企業からは、シルバー人材センターに紹介手数料が支払われます。求職者は、無料で利用できます。

ただし、求人の範囲は臨時的かつ短期的、または他の軽易な業務に関するものだけです。また、有料職業紹介は、一部実施していないシルバー人材センターもあります。

参考:請負と派遣の違い – 全国シルバー人材センター事業協会

シルバー人材センターのしくみ

シルバー人材センターの仕事と料金相場

各シルバー人材センターのサイト等には、目安となる仕事の内容や料金例が掲載されています。地域によって料金が違うため、お住まいの地域を管轄するセンターの料金表を確認してみましょう。

ただし受託事業の場合は料金から事務費が引かれ、派遣事業の場合はマージンが引かれます。事務費の割合やマージン率もセンターごとに公表されているため、合わせて確認しましょう。

ここでは、代表的な作業の目安となる料金相場をご紹介します。

除草

1人1時間1,000円程度が相場です。ただし猛暑期の場合は水分確保のため、1日あたり200円程度を上乗せするセンターもみられます。機械を使った草刈り作業は、1人1時間1,500円~1,700円程度が相場です。

家事援助

1人1時間1,000円~1,200円程度が相場です。掃除や洗濯、炊事といった家事の援助なら、仕事経験のない主婦層も働いてお金を得ることが可能です。

障子の張替

1枚につき1,300円~1,700円程度が相場です。障子の他、ふすまや網戸の張替作業については若干の技術が必要なこともあり、除草などの軽作業よりも単価が高い傾向にあります。

宛名書き、賞状書き(筆耕)

ペン書きか毛筆書きか、何文字書くのかによって料金は細かく変わってきます。毛筆で賞状を全文書くのであれば1枚4,000円程度にもなり、字に自信のある人はチャレンジしたい作業です。

一般事務

1時間1,000円程度です。経理、翻訳、通訳といった特殊事務であれば単価は上がります。専門的な事務仕事に携わってきた経歴があれば、登録時にアピールしておくと単価の高い仕事がもらえる可能性が高まるでしょう。

シルバー人材センターのメリット

会員側からみたとき、シルバー人材センターのメリットは以下の3点です。

単発、短期の仕事が可能

高齢になると急な体調不良が増え、継続的な仕事が辛くなるときもあります。依頼を受けたとき、自分の体調と相談しながら引き受けるかどうかを決められるシルバー人材センターの仕事はありがたいものです。

いろんな仕事を体験できる

シルバー人材センターには専門知識を使う必要のない仕事が集まってくるため、依頼によっては自分が経験したことのない分野にチャレンジできます。ずっと事務的な仕事をしていた人が店番を引き受けたり、除草作業を行ったりすると、新鮮な面白さを感じられるでしょう。

健康と気持ちの張りを維持できる

シルバー人材センターの目的は、高齢者が地域との繋がりを感じ、生きがいを持って過ごせることです。「役に立てている」という思いが気持ちに張りを与え、また、軽作業であっても動くことによって健康維持につながります。心と体の健康を保てるのが、一番のメリットかもしれません。

シルバー人材センターの注意点

シルバー人材センターで働くときには、以下のような注意点に気をつけましょう。

継続的に仕事がもらえるとは限らない

シルバー人材センターから紹介されるのは、短期、単発の仕事です。よって、基本的には依頼があったらその日だけ仕事をし、また依頼があるまで待機することになります。「なるべく毎日仕事がしたい」と思うなら、一般的なパートやアルバイトの求人情報を探しましょう。

たくさんの収入にはつながらない

基本的に短期、単発の仕事なので、たくさんの収入にはつながりません。全国平均で月額3万円から5万円程度の収入になります※。より高収入をと考えるのであれば、ハローワークに相談してみましょう。ハローワークは現役世代のためのものと思われがちですが、60歳以上の求人も受け付けています。

自分自身で仕事の管理をしなければならない

仕事内容にもよりますが、シルバー人材センターの指示で仕事の現場へ行くとき、基本的には個人での作業になります。状況に応じて、自分の裁量で仕事を遂行しなければなりません。

夏期の除草作業時には暑さに応じて休憩時間を設ける、不明点があれば逐一センターへ連絡を取るなど、自分で仕事の管理ができるよう意識しましょう。

※参考:お仕事をしたい方 Q&A – 全国シルバー人材センター事業協会

まとめ

シルバー人材センターの仕事内容は多岐にわたりますが、除草作業などの外作業、障子やふすまを直すといった軽作業、家事、事務作業などが代表的です。短期、単発の作業が多いため、「多くの収入を得るよりも地域の役に立ちたい」と考える人に向いています。

また、「家計の補填のため、月に数万円だけ働きたい」「健康のため少しでも外に出たい」という人にもおすすめの仕事です。これまで働いてこなかった主婦層の方にもチャレンジできる仕事が多いため、ぜひ夫婦でご登録なさってはいかがでしょうか。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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