2026年6月9日
終活
【FP解説】実家じまいの費用相場と手順を完全ガイド!後悔しないための5ステップ

実家の片付けや遺品整理、不用品処分、売却や解体など、「実家じまい」には多くの工程と費用が発生します。空き家化が進む今、放置すれば管理責任や損害賠償リスクが高まるという問題もあり、実家の扱いには細心の注意を払わなければなりません。本記事では、実家じまいの費用相場、手順、公的制度の活用方法までをFPがわかりやすく解説。後悔しないためのポイントを整理し、最適な「実家じまい」の進め方をガイドします。

実家じまいとは?いつ始めるべきか

「実家じまい」とは、親が亡くなる、施設に移るなどして誰も住まなくなった家を片づけ、売却したり、賃貸として活用したりすることです。実家じまいに適したタイミングは「なるべく早く」と言われます。なぜなのか、詳しく解説します。

増え続ける「負動産」リスクと早めの対策が必要な理由

最近では親の亡き後、実家が「不動産」ではなく「負動産」化する、つまり負の財産になってしまうと言われ、注目されています。空き家は、住まなければお金がかからないわけではありません。管理のために電気や水道、ガスは通しておいた方が便利なため、毎月費用がかかってしまいます。また、誰も住んでいない家であっても、不動産には固定資産税がかかります。

さらに空き家を適切に管理せず放置してしまうと、倒壊や雑草・害獣被害など、近隣トラブルの原因にもなります。管理されていない家は傷みやすいため、いざ売却しようと考えても思うような値段で売れない可能性が高くなります。

実家を「負動産」にしないためには、早めの決断がポイントです。家が傷んでいないうちに手放すことができればより高値で売却でき、賃貸などでの活用もしやすくなるためです。すぐに売却できれば、そのぶん管理費用や固定資産税などの費用がかさむこともなくなります。

実家を「負動産」にしないための管理責任と損害賠償リスク

空き家の放置で最も怖いのが、近隣とのトラブルです。どんなリスクを負うことになるか、知っておくとためになります。

近隣トラブル・倒壊・火災…所有者が負う「法的義務」

空き家を放置すると、建物の倒壊や屋根材の落下、庭木の越境などにより、近隣住民に損害を与えてしまう可能性があります。落下してきた屋根が隣の家の窓ガラスを割ったなど、事故が起これば空き家の所有者として責任を問われる可能性があり、損害賠償に発展するかもしれません。また火災や不法侵入のリスクも高まるため、常に近隣住民を不安に晒すことになってしまいます。

なお、所有者には適切な管理義務があり、管理を怠れば「特定空家」に指定される可能性があります。「特定空家」とは、そのまま放置すると倒壊のおそれがあったり、著しく景観を損なうと行政にみなされた空き家のことです。特定空家に指定されると、固定資産税の優遇措置が適用されなくなったり、最終的には行政代執行として解体され、解体にかかった料金を請求されたりします。

実家じまいの進め方とチェックリスト

実家じまいは、親が元気なうちから方向性を決めるのがポイントです。以下、5つのステップで、早くから実家じまいを進めていきましょう。

Step1:親との合意形成と「家族会議」の進め方

実家じまいは、まず親の気持ちを尊重しながら方向性を共有することが重要です。家族会議では、実家の現状、維持費、将来の住まい方などを整理し、選択肢を可視化します。

親の健康状態や介護の見通しも踏まえ、無理のないスケジュールを設定しましょう。合意形成ができると、その後の手続きがスムーズになります。

Step2:遺品整理・不用品処分の費用相場と業者選び

遺品整理や不用品処分の費用は、間取りや物量によって大きく変わります。一般的には1DKで5〜12万円、3LDKで15〜40万円が相場です。

業者選びでは、見積もりの内訳が明確か、追加料金があるか、買取サービスはあるかを確認することが重要です。複数社の相見積もりを取ることで、適正価格を把握できます。

なお、「遺品整理士」の資格を持つ業者は、丁寧な作業が期待できます。事業者の選択に迷ったら、目安にしてみましょう。

Step3:相続登記と権利関係の整理

2024年から相続登記が義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記をしなければ過料の対象となります。まずは相続人を確定し、遺産分割協議書を作成して登記申請を行います。権利関係が複雑な場合は、司法書士に依頼することで手続きがスムーズになるでしょう。

登記を済ませることで、売却や解体など次のステップに進めます。相続放棄を検討する場合も、早めの判断が必要です。相続放棄の期限は、自分が相続人であると知った時から3ヶ月以内です。

Step4:解体か売却か?建物の出口戦略を判断する基準

築年数が古く、修繕費が高額になる場合は解体して更地売却が有利なことがあります。自治体の解体補助金が使えるかどうかも判断材料です。一方、立地が良い場合やリフォーム需要がある地域では、建物付きのまま売却した方が高値になる可能性が高いでしょう。

専門家に査定を依頼し、複数のシナリオを比較することが重要です。戦略を誤ると、数十万円〜数百万円の差が生じることもあります。

Step5:売却後の確定申告と税額控除の適用

実家を売却した場合、譲渡所得(売却して得たお金から家の取得費と譲渡のための費用を引いた利益)が発生すれば確定申告が必要です。「空き家3000万円控除」や「低未利用地控除」など、条件を満たせば大幅な節税が可能です。これらの控除については、後に詳しく解説します。

実家じまいの費用シミュレーション表

マンションと一戸建てでは、片付け・解体・諸費用の構造が大きく異なります。ここでは代表的な2パターンの費用目安を比較し、実家じまいの全体像をつかめるように整理しました。参考にしてください。

種別

3LDKとして)

不用品処分

解体工事

登記・諸費用

1,000万円で売却として)

合計目安

マンション

(片付け・売却)

15~50万円

46~60万円

61~110万円

木造一戸建て

(解体・更地売却)

15~60万円

150~200万円

46~60万円

211~320万円

空き家対策に活用できる「リバースモーゲージ」という選択肢

親が存命で実家に住んでいる段階から活用できる空き家対策として、リバースモーゲージがあります。親が住み続けながら資金を確保できるため、生活の安定と空き家化の予防を同時に実現できる方法です。

実家を壊さず活用し、老後資金を確保する方法

リバースモーゲージは、自宅を担保に金融機関から生活資金を借り入れる仕組みです。契約者の存命中は、ずっと我が家に住み続けられます。また、月々の返済は利息のみなので、年金が収入の大部分となる世代にあっても安心して融資を受けられます。

元金は、契約者がお亡くなりになった後、相続人が空き家となった家を売却したり、自己資金で返済したりして精算します。つまり、リバースモーゲージは、親の存命中に空き家の清算方法を見つけておける方法といえます。

実家を残したまま老後資金を確保できるため、親が実家に住み続けたい場合に有効です。ただし、金利上昇リスクや評価額の下落リスクがあるため、慎重な判断が必要です。興味があれば、まずはリバースモーゲージを取り扱っている金融機関に問い合わせ、詳細な条件等について説明を受けましょう。

実家じまいで使える主な公的優遇制度一覧

実家じまいでは、税制優遇や補助金を活用することで費用負担を大きく減らせます。制度ごとに条件が異なるため、早めの確認が重要です。

相続登記義務化

相続登記とは、不動産を相続した際に、被相続人から相続人へ所有者名義を変更する手続きのことです。相続登記は、手続きをすることで優遇されるというよりは、手続きをしないと過料の対象になってしまう制度です。

2024年に、相続があったことを知った日から3年以内の登記申請が義務化されました。怠ると、10万円以下の過料が科されることがあります。この義務化は権利関係の明確化が目的で、空き家問題の解消にもつながるものです。

参考:相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ(登記手続ハンドブック)https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000001_00014.html

空き家3,000万円控除

「空き家3,000万円控除」とは、正式名称を「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」と言い、一定の条件を満たす空き家を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。相続または遺贈により空き家を取得したこと、相続開始直前に被相続人が住んでいたこと、相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったことなどが条件になります。

条件に当てはまれば節税対策として大変有効なため、あらかじめ条件を調べておくと安心です。

参考:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)

解体補助金

自治体によっては、老朽化した空き家の解体費用を一部補助する制度があります。補助額は数十万円〜100万円程度が一般的です。実家のある自治体で補助金事業を行っているか、調べてみましょう。

参考:東京都空き家家財整理・解体促進事業(東京都住宅政策本部)

低未利用地控除

「低未利用地控除」とは、誰も住んでおらず、事業にも利用されていない土地などを売却したとき、一定の要件を満たすことで利用できる制度です。土地の有効活用を促す目的があり、一定の条件を満たす土地売却に対して最大100万円の控除が受けられます。

要件には「売り手と買い手が親子や夫婦など特別な関係でないこと」「売った金額が、低未利用土地等の上にある建物等の対価を含めて500万円以下」「売った後に、その低未利用土地等の利用がされること」などが挙げられています。

なお、現行制度では令和7年12月31日までが適用期間であり、令和8年以降の延長は未定で、今後の税制改正により変更される可能性があります。

参考:No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3226.htm

まとめ

実家じまいは、片付けから相続登記、売却、解体、税務処理まで多岐にわたります。放置すれば実家が「負動産」化し、管理責任や費用負担が増大します。

早めに家族で話し合い、専門家の力も借りながら進めることで、後悔のない選択ができます。制度や控除を上手に活用し、実家の価値を最大限に生かすことが大切です。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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