2023年6月26日
体験談
【FP解説】家族葬ってこんなに高いの?イメージだけで終活したら現実にビックリ

縁のあったたくさんの人に来てもらうのではなく、親族中心に葬儀を行う「家族葬」が人気です。気の置けない人たちばかりでお別れに集中できる負担のなさから、全国で流行しています。しかし「何となく安そうだから、家族葬がいい」と漠然とした理由で選んでしまうと、後悔することも。埼玉県に住むEさん(46歳 男性)の失敗談をご紹介します。

ネットに弱い親の終活をサポート

72歳の父親が末期のガンと診断されて3ヶ月目、体調が刻々と悪化するなかで母親は憔悴しきっていました。会社員の私が母のサポートをできる時間は限られていましたが、今こそ親孝行の機会と感じ「いまのうちに父さんの終活をしておこう。俺がサポートするから」と約束し、空き時間でインターネットを中心にリサーチを行いました。

少し調べたところ、今は親族中心の家族葬が人気とか。地元の数社のホームページを少し覗くと、「家族葬は40万円から」といったことがトップページに書かれています。だいたいどの会社も同じような値段と見えました。

葬儀の他にもお墓や財産のことなど、調べることはたくさんあったので「40万円くらいで家族葬ができるんだな。香典ももらえるだろうし、葬儀についてはそんなに心配いらないな」「よけいなオプションをつけなければ高くはならないだろう」と、早々に調べるのをやめてしまいました。

オプションばかりが必要になり、見積額が2倍に

父が亡くなり、目星をつけていた葬儀社に「家族葬でお願いします」と依頼すると、担当者が病院まで父を引き取りに現れました。「ご自宅へお連れしますか?安置施設へお連れすることもできますが、オプション料金がかかります」と言われ、自宅に安置すると弔問の人がたくさん訪れるかもしれないという想定のもと安置施設へ。まずはここでオプション料金がかかってしまいました。

父を安置してから詳しく葬儀社と打ち合わせをしてみると、家族葬の基本料金40万円のなかには必要なものが全て入っているわけではないことが分かりました。棺や祭壇、式場使用料などは入っています。しかし安置施設の宿泊料金、2泊以上のときに必要なドライアイスの追加料金、火葬料金、会食のための料金、香典返しの料金などは入っていません。

「ケースによって変動のない必要最低限のものだけを基本コースに入れています」と担当者。家族葬といえども、会食や香典返しを省略する考えは、私にも母にもありません。だいたいの参列人数を伝えて見積額を計算してもらうと、なんと86万円という結果に。基本料金の2倍以上です。

しかし、担当者の話を聞いたりホームページを再度詳しく確認したりしていると、詐欺などではなくごく当たり前の料金設定であることが理解できました。ザッと調べただけで金額を把握するつもりになった気でいたことを後悔しつつも、この時点では「まあ、払えない額ではないし」と考えていました。

お布施が必要!香典が少ない!

葬儀社との打ち合わせ中に僧侶が到着しました。葬儀日程を決定し、葬儀社の担当者が席を外すと「こちら、お布施の目安です。参考になさってください」と、僧侶から紙を渡されました。「ウチは院号だから、この金額だね」と母から指し示されたところを見ると、けっこうな金額が書いてあります。正直、質素な葬儀ならこの金額でもう一度できるなという印象でした。

「昔はお布施を香典でまかなったものだけれど、今回は家族葬だからそんなこともできないしね」と母親がつぶやきます。私はハッとしました。当たり前のように香典を当てにしていましたが、人数の少ない家族葬なので入ってくる香典金額も少なくなってしまうのです。

結局、葬儀の持ち出し費用は100万円を超えることになりました。それでもたくさんの人を呼び寄せる葬儀よりは安いのかもしれませんが「安いという印象から家族葬にしたのに」と考えると、失敗してしまったという気持ちです。

【まとめ】人数の少ない家族葬は割高になるケースも

家族葬は一般的な葬儀よりも金額こそ安くなりますが、入ってくる香典が少なくなるため全体的には割高感が気になる場合があります。一般参列者の香典相場は5,000円なので、一般参列者が200人の場合、香典総額は100万円にもなります。一般参列者がいなければ、そのぶんの香典金額はなくなります。

また、これは家族葬でなくても気をつけなければなりませんが、葬儀社のサイトのトップページに書いてある「基本料金○○円」を鵜呑みにし、「○○円くらいかかるのだな」と決めつけてしまうのは危険です。Eさんのような後悔をしないよう、終活するのであれば目星をつけた葬儀社に生前から見積もり依頼を行いましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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