2023年7月9日
体験談
【FP解説】エンディングノートにうんざり!ズボラな人は終活に向かない?

墓や葬儀、相続などについて自分の希望を書いておくのがエンディングノートです。エンディングノートを「持ってはいるけれど書いたことはない」という人も多いのではないでしょうか。しっかりエンディングノートが書けたとしても、後で悩みが増えることがあります。今回は、千葉県に在住のGさん(55歳)の失敗談をご紹介します。

おひとりさま50代、エンディングノートが必要?

ずっと独身を通してきて50歳になり、漠然と老後に不安が出てきた頃に両親が相次いで亡くなりました。亡くなった後の手続き関連が本当に大変で、「自分が亡くなったときは一体誰が手続きをしてくれるのだろう?」と不安になり、エンディングノートを書いてみることにしました。

おひとりさまに適したエンディングノートはたくさん販売されていて、私は桃色のきれいな表紙のノートを選びました。中を開いてみると、緊急連絡先を書く欄に始まり介護の希望や延命治療の希望、葬儀やお墓の希望など書き込む箇所がたくさん。書くのは大変そうですが、親を見送るとき分からなくて困ったことばかりが項目として並んでいるため、「私を見送ってくれる誰かのために」と、とにかく書き始めました。

やっとエンディングノートを書き上げた

最初こそエンディングノートを書くのを面倒に感じましたが、一度書き始めてみれば自分の希望について想像を膨らませたり、自分史を作成したりするのがとくに楽しく、意外と書き進めることができました。

とくに自分の希望を書き込むときには「どうしたらこの希望が叶うのだろうか?」と考えさせられ、後見制度や亡くなった後の手続きを専門家に委任する方法などを自分で調べるきっかけになりました。

けっこう凝ったのが自分史の部分です。思い出の写真を貼ったり、お気に入りの映画や美術展に行ったときのチケットを貼り付けたり。大きなアルバムの中に、写真だけではなく大好きなシールやリボンを挟み込んでオリジナルのアルバムにしていた子ども時代を思い出しました。

生きている限り、日々更新される情報を修正するのがしんどい

エンディングノートが重たい存在になってきたのは、完成してからです。きっかけは友人の転居届を受け取ったことでした。すぐにスマートフォンの中の連絡帳を更新し、ふと「エンディングノートも書き換えておかなければ」と気づきました。

修正液で彼女の住所を修正し、「今後も修正はかなり発生するだろうな」と思うと、せっかく完成させたエンディングノートが修正ばかりになっていくことに、何となく残念な思いがしました。この経験から修正がおっくうになり、連絡先に変更があってもそのまま放置してしまうことが増えました。

また、最近ではネットサービスを使うときにスマートフォンが「安全なパスワートはこれです」と提案してくれた文字の羅列を選ぶことが多々あります。そのパスワードを自分の頭で覚えておけるわけもありません。当然、エンディングノートの情報も更新されないままです。

5年放置、使えない部分がたくさん出てきた

今年、私は55歳になりました。50歳のとき書き上げたエンディングノートはもはや使えない情報ばかりです。連絡先やアカウントなどの情報だけではなく、保険を掛け替えたり、新しく契約したりなど、いろんなことがありました。葬儀やお墓の希望も5年前とは少し違っています。

でも、根がズボラということもありますが、なんとなく書き直す気力がないんです。書き直しばかりのエンディングノートを残しては恥ずかしいと、もう一冊買って新しく書こうかしらと思ったことはあります。すると今度は修正のない部分の方がもったいなくなってしまって。なにより力を入れてデコレーションした自分史の部分を捨てたくありません。

結局、エンディングノートは一度作成しても、元気で長生きしてしまうとだんだん使えなくなってくるものなのでしょう。今では、エンディングノートが目に入るたびに心が少し重くなる日々を送っています。

【まとめ】エンディングノートは「今このときの備忘録」として気軽に記録を

エンディングノートというと「亡くなる場面や死後について自分の希望を全て詰め込んだもの」と考え、人生に一冊しか作れないと思い込んでいる人もいるのではないでしょうか。そう捉えてしまうと、何から書き始めようか迷ったり、一度作成すると更新するのがおっくうになったりしがちです。

エンディングノートはまさに自分の希望を書くためのノートですが、急な病気、事故、介護が生じたなど、何かあったときのための備忘録でもあります。若く元気な人でも、何らかの事故や病気になり救急搬送されるという事態はありえます。そんなとき、自分の身の周りのことを誰かにやってもらうためのノートだと考えてみてはいかがでしょう。

するとエンディングノートは、いつ来るか分からない臨終のときのためだけにあるものではないと分かるでしょう。「今このとき、もし何かあったときの備忘録」と捉えれば、肩の力を抜いて書くことができます。また、生きている以上、情報が更新されていくのは当たり前とも思えるはずです。

エンディングノートは修正や削除項目がだんだん増えていくのが当然ですが、ノートの見た目の美しさを保持したい人にはバインダー式のノートがおすすめ。修正があるページだけ差し替えできるため、気軽に修正できますし、ノートの美しさも保てます。時間に余裕がある人、コツコツ作業が苦にならない人は、数年ごとに2冊目、3冊目と買い換えるのもいいでしょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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