
「加給年金が廃止されるらしい」という噂を聞いたことのある人はいませんか。加給年金は廃止されませんが、2022年(令和4年)4月の法改正により、支給停止の条件が拡大しました。配偶者の厚生年金加入期間が20年以上ある場合、たとえ配偶者自身の年金が全額支給停止中でも、加給年金は支給停止となります。老後資金対策のためにも、経過措置を含めたルールを正しく把握しましょう。
執筆者:奥山 晶子(ファイナンシャルプランナー2級 / 終活・老後資金アドバイザー)
2022年4月に行われた年金制度改正は「加給年金の全面廃止」ではなく、「支給停止要件の拡大」が行われた点がポイントです。何がどう変わったのかを詳しく解説します。
加給年金は、本人が厚生年金に20年以上加入し、一定の家族を扶養している場合に年金額が上乗せされる仕組みです。一定の家族とは、「本人に生計を維持されている配偶者または子」を指します。
2022年4月の改正では、配偶者が一定の年金を受け取る権利がある場合、実際に受け取っていなくても、配偶者加給年金の支給が停止されることになりました。一定の年金とは、以下の年金のことです。
・老齢厚生年金
(被保険者期間が20年以上、または共済組合等の加入期間を除いた期間が40歳(女性の場合は35歳)以降15年以上の場合に限る)
・退職共済年金(組合員期間20年以上)
なお、障害年金を受けられる間も、同様に配偶者加給年金が支給停止されます。
従来は「配偶者の年金が実際に支給されているか」が判断基準でしたが、改正後は「受給権の有無」が基準となり、停止対象が広がった点が大きな違いです。
2022年の改正には、経過措置が設けられています。以下の①及び②の要件を満たせば、2022年4月以降も、引き続き加給年金の支給が継続されます。
「自分が加給年金をもらえるのかどうかが分からない」という人のために、加給年金の受給可否を判断する条件を整理します。
加給年金の受給には、以下の基本要件があります。
・本人(配偶者ではなく、厚生年金受給者本人)が、厚生年金に20年(240ヶ月)以上加入している
・65歳未満の配偶者または18歳到達年度末までの子を扶養していること
まずは、この基本要件を満たしているか確認しましょう。
2022年3月以前に加給年金の受給権があった人には経過措置が設けられ、改正後も支給が継続するケースがあります。一方、配偶者の厚生年金加入期間が20年未満の場合は、改正後も支給停止の対象外です。
次のフローチャートで、支給の対象となるか否かを確認しましょう。
▼STEP1:本人の厚生年金加入期間
本人が厚生年金に20年以上(240ヶ月)加入している?
▼STEP2:配偶者の年齢
配偶者は65歳未満?
▼STEP3:配偶者の厚生年金加入期間
配偶者の厚生年金加入期間は20年以上(240月)ある?
▼STEP4:配偶者は「受給権」を持っている?
※ポイント:受給権があるだけで支給停止になる(実際に受給していなくても停止)
▼STEP5:2022年3月以前に加給年金の受給権があった?(経過措置)
配偶者が65歳になると加給年金は終了し、振替加算の対象となるかどうかが、次の判断ポイントになります。
加給年金は配偶者が65歳になると終了し、その後は振替加算の対象となる可能性があります。振替加算は、配偶者の基礎年金に上乗せされる仕組みで、生年月日により金額が異なります。かなり細分化されて年額が決まっているため、振替加算の額については、日本年金機構のHPでご確認ください。
なお、昭和41年4月2日以降生まれの人は振替加算がゼロとなる「段階的廃止」が進んでおり、将来的には加給年金終了後の上乗せがなくなる世帯も増えます。移行のタイミングと金額の違いを把握しておくことが重要です。
加給年金の支給停止や終了で収入が減る世帯に向け、現実的な老後資金対策について解説します。
年金を繰下げると最大84%まで増額されますが、繰り下げ期間中は加給年金が支給されない点が大きな注意点です。年金を繰り下げている間は、本人の年金は「まだ受け取っていない」扱いになるためです。
また、繰下げは、増額のために受給を遅らせる制度なので、繰下げ中は年金が1円も入らない状態になります。よって増額メリットだけで判断すると、結果的に家計が苦しくなる可能性もあります。
夫婦の年齢差や収入状況を踏まえ、繰下げの損益分岐点を冷静に見極めることが必要です。
リバースモーゲージは、自宅を担保に金融機関から資金を受け取り、住み続けながら老後資金を確保できる仕組みです。加給年金の支給停止や終了で家計の上乗せが減る世帯にとって、生活費の不足分を補う現実的な選択肢となります。
毎月の返済は利息のみで、契約者がお亡くなりになった後に自宅を売却して精算するため、存命中の返済負担を軽減することが可能です。また、毎月同じ金額を受け取る「年金方式」、まとまったお金を一括で受け取る「一括方式」など、希望に応じて受取方法を選べます。
一方で、金利の変動によって借入残高が膨らむ可能性や、将来の不動産価値の下落リスクなど、検討すべき課題もあります。また、自治体が運営する「公的型」と、金融機関が提供する「民間型」では、利用条件や柔軟性が大きく異なるため、自宅の評価額や家計の安定性などを総合的に見ながら判断することが求められます。
リバースモーゲージを検討するなら、まずは自宅のある自治体で公的なリバースモーゲージを取り扱っているか、自宅のある地域をリバースモーゲージの営業エリアとする金融機関はあるかを調べてみましょう。
加給年金は、廃止されるわけではありませんが、支給停止要件が拡大されます。2022年4月改正後は配偶者の加入歴によって受給可否が大きく変わるため、ご自身の加入歴などの要件を正しく知っておくことが重要です。65歳到達後の振替加算の有無や、老後資金の補完策まで含めて総合的に判断することが、これからの年金生活を安定させる鍵になります。
