2026年10月21日
老後
退職金の税計算シミュレーション!控除額と手取り【FP解説】

退職金の税金は、給与とは別に計算される「退職所得」として大きく優遇されています。勤続年数に応じて使える退職所得控除や、控除後の金額を半分にして課税する1/2課税など、税負担を軽くする仕組みが整っています。本記事では、退職金の税金計算の流れ、所得税・住民税の算出方法、そして最終的な手取り額を増やすためのポイントを、わかりやすく解説します。

執筆者:奥山 晶子(ファイナンシャルプランナー2級 / 終活・老後資金アドバイザー)

退職金の税金は優遇されている!「退職所得」の仕組み

退職金は給与とは別枠で計算される「退職所得」として扱われ、税金が大幅に軽減される特例が設けられています。

分離課税と1/2課税のメリット

退職金は、ほかの所得(給与・年金など)と合算せずに個別で計算する「分離課税」となります。 そのうえで、退職所得控除を差し引いた後の金額をさらに半分(1/2)にして課税する特例があり、税負担が大きく下がります。

この2つの優遇により、勤続年数が長いほど控除額が増え、結果として「ほとんど税金がかからない」「手取りが大きく残る」というケースが多くなります。

【ステップ1】退職所得控除額の計算手順

退職所得控除は勤続年数によって計算式が変わり、まずこの控除額を求めることが税計算の第一ステップです。

勤続年数20年以下の場合の計算式

勤続20年以下の場合、退職所得控除は、40万円 × 勤続年数(最低80万円)で計算します。

勤続年数は「1年未満の端数は切り上げ」です。 たとえば勤続19年4か月なら「20年」として計算します。

勤続年数20年超の場合の計算式

勤続20年を超えると、控除額は一気に増えます。計算式は以下のとおりです。

800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

例:

・勤続30年 → 800万円+70万円×10年=1,500万円
・勤続35年 → 800万円+70万円×15年=1,850万円

勤続が長いほど控除額が大きくなり、課税される退職金が少なくなる仕組みです。

【ステップ2】所得税と住民税の算出方法

退職所得控除を差し引き、さらに1/2した後の金額に税率をかけて、所得税・住民税を計算します。

所得税(および復興特別所得税)の計算

退職所得に適用される所得税は、給与と同じく超過累進税率(5%~45%)で計算します。計算式は、以下の通りです。

  1. 【ステップ1】で算出した退職所得控除金額を、退職金額から差し引く
  2. の金額を1/2にする。この金額が退職所得となる
  3. 退職所得に所得税率をかけて、控除額を差し引く。これが所得税となる。
    所得税率と控除額は以下の通り。

課税される所得金額

税率

控除額

1,000円 から 1,949,000円まで

5%

0円

1,950,000円 から 3,299,000円まで

10%

97,500円

3,300,000円 から 6,949,000円まで

20%

427,500円

6,950,000円 から 8,999,000円まで

23%

636,000円

9,000,000円 から 17,999,000円まで

33%

1,536,000円

18,000,000円 から 39,999,000円まで

40%

2,796,000円

40,000,000円 以上

45%

4,796,000円

引用元:No.2260 所得税の税率(国税庁)

  1. 復興特別所得税を算出する。算出された所得税額に、1%をかける。

【例】退職金2,000万円・勤続30年の場合

  1. 退職所得控除金額を、退職金額から差し引く
    退職所得控除額 = 800万円+70万円×10年 = 1,500万円
    2,000
    万円 - 1,500万円 = 500万円
  2. の金額を1/2にする。この金額が退職所得となる
    500
    万円 ÷ 2 = 250万円
  3. 退職所得に所得税率をかけて、控除額を差し引く。これが所得税となる。
    250
    万円 × 10% - 9万7,500円 = 15万2,500円(所得税)
  4. 復興特別所得税を算出する。算出された所得税額に、1%をかける。
    15
    万2,500円 × 2.1% = 3,202円(復興特別所得税)

住民税(一律10%)の計算

住民税は、退職所得の10%となります。

250万円 × 10% = 25万円

退職金の手取りを最大化するための注意点と老後資金の計画

退職金は一生に一度の大きな収入です。税金の扱いも特殊で、手続きの有無によって数十万〜数百万円の差が出ることもあります。また、受け取った退職金をどう使うかによって、老後の生活資金の安定度も大きく変わります。

この章では、退職金を減らさない工夫と、老後資金をしっかり確保する方法をわかりやすく整理します。

「退職所得の受給に関する申告書」の提出の重要性

退職金の税金計算で最も重要なのが、「退職所得の受給に関する申告書」です。 提出するかどうかで、手取り額が大きく変わります。

この申告書を提出しておけば、勤続年数に応じた退職所得控除が適用され、控除後の金額を半分にして課税するという優遇措置も受けられます。結果として、退職金のほとんどが手取りとして残るケースが多くなります。

ところが、この申告書を提出しないまま退職金を受け取ってしまうと、退職金の全額に対して一律20.42%が源泉徴収されてしまい、本来よりも大きな税負担を抱えることになります。退職金が2,000万円の場合、本来の税額は40万円ほどで済むのに、申告書を提出しないと400万円以上引かれてしまうこともあり、手取り額に大きな差が生じます。

退職前の慌ただしい時期に見落としがちな手続きですが、老後の資金を守るためには必ず確認しておきたい重要なポイントです。

退職金を取り崩さずに老後資金を作るリバースモーゲージ

老後は収入が限られる一方で、生活費や医療費、介護費などの支出が増える可能性があります。退職金を一気に使ってしまうと、後々の資金不足につながりかねません。

そこで選択肢となるのが、持ち家を担保に融資を受ける「リバースモーゲージ」という仕組みです。自宅に住み続けながら必要な資金を受け取ることができ、退職金を温存したまま生活費やリフォーム費用、介護費などに充てることができます。

リバースモーゲージは毎月の返済が利息のみで、利息は最終的に自宅の売却時に精算されるため、長生きによる資金不足の不安を和らげる効果があります。ただし、不動産価値の変動や金利の上昇といったリスクもあるため、家族と相談しながら慎重に検討することが大切です。

退職金は、受け取り方と使い方によって老後の安心度が大きく変わります。申告書の提出を忘れず、税負担を最小限に抑えたうえで、老後の生活を長く支える資金計画を立てることが、手取りを最大化し、安心して暮らし続けるための第一歩となります。

まとめ

退職金の税計算は、「退職所得控除」「1/2課税」「分離課税」という3つの優遇により、他の所得よりも大幅に税負担が軽くなる仕組みです。勤続年数が長いほど控除額が増え、手取りが大きく残りやすくなります。

申告書の提出や老後資金の活用方法も含め、退職前にしっかり準備しておくことで、安心して老後の生活設計を進められるようにしましょう。

 

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー(FP2級) / 終活・老後資金アドバイザー。 冠婚葬祭互助会勤務を経て、葬儀・墓・介護・老後資金計画に特化したファイナンシャルプランニングおよび情報発信を行う。著書『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)ほか、終活・高齢者世帯の生活設計に関する執筆実績多数。
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