2026年7月24日
老後
【FP解説】60歳になったら年金は払わなくていいの?損をしないための対策

60歳になると「年金保険料はもう払わなくていいの?」と疑問に思う方は多いのではないでしょうか。実は、国民年金は60歳で支払い義務が終わる一方、厚生年金は働き方によって70歳まで続く場合があります。また、未納期間や免除期間があると満額はもらえず、将来の受給額が減る可能性もあります。ねんきん定期便を確認し、任意加入や付加年金などの対策を知ることで、老後の年金生活に備えましょう。

60歳で「国民年金」の支払い義務は終わるが「厚生年金」は続く

60歳以降の年金保険料は、加入区分によって大きく異なります。自営業・フリーランスの場合と、会社員の場合に分けて解説します。

自営業・フリーランス(第1号被保険者)は60歳で自動終了

自営業やフリーランスなどの第1号被保険者は、国民年金の保険料納付義務が60歳で終了します。具体的には、60歳に達する日の前月(1日生まれの方は前々月)で納付義務が終わり、納付書も自動的に届かなくなります。

これは国民年金が「20歳〜60歳の40年間」を基本とした制度であるためです。ただし、未納や免除期間がある場合は、このままでは満額に届かない可能性があります。60歳以降に年金額を増やしたい場合は、後述する「任意加入制度」を検討することが重要です。

60歳以降も会社員・公務員(第2号被保険者)として働く場合は最長70歳まで継続

会社員や公務員として厚生年金に加入している場合、60歳を過ぎても保険料の支払いは続きます。再雇用やパート勤務であっても、厚生年金の適用事業所で働く限り、給与から厚生年金保険料が天引きされる仕組みです。

支払いは最長70歳まで続き、70歳に達した時点で自動的に資格喪失となります。厚生年金は保険料を払った分だけ将来の年金額が増えるため、働き続けることは、老後資金を増やすことにもつながります。

将来の年金が満額に足りない2つの落とし穴

国民年金保険料の納付書は、60歳になれば自動的に届かなくなりますが、それをもって支払いを止めてしまうと、将来の年金額に影響が出るケースがあります。

20歳から60歳に到達するまでの40年間(480ヶ月)を一度も欠かさず納付した人は、そのまま支払いを終えて構いません。65歳になれば、年金が満額で支給されます。

しかし、未納期間や免除期間を利用したことがある人は、満額支給がなされない可能性があるため、注意が必要です。

学生納付特例や免除・猶予を受けた期間は「年金額が減る」原因になる

学生納付特例や免除・猶予を受けた期間は、保険料を払っていないため、そのままでは将来の年金額が減る原因になります。これらの期間は「保険料を支払った月数」としてはカウントされないためです。

例えば、1ヶ月未納があると老齢基礎年金は年間約1,765円(2026年度の国民年金満額847,300円を基に計算した目安)減額されます。

追納をすれば満額に近づけることができますが、追納できるのは原則10年以内です。追納できるかどうか、未納期間や免除期間の有無をねんきん定期便などで確かめてみましょう。

未納のまま放置すると「受給資格期間10年」に算入されず無年金リスクも

免除申請もせずに未納のまま放置した期間は、年金の受給資格期間(最低10年)にもカウントされません。つまり、未納期間が長いと「年金が1円ももらえない」という最悪の事態も起こり得ます。

未納期間は将来の年金額を減らすだけでなく、受給資格そのものを失わせる重大なリスクです。60歳を迎える前に、未納期間がないか確認する必要があります。未納がある場合は、早めに追納や年金事務所への相談を行うことが重要です。

60歳以降に年金額を増やす「任意加入」と「付加年金」

60歳以降も、年金額を増やす方法があります。満額に達していない人が利用できる「任意加入」と、任意加入被保険者の他、自営やフリーランス(第1号被保険者)であれば60歳未満でも利用できる「付加保険料」です。

60歳から65歳未満まで利用できる「任意加入制度」

任意加入制度は、60歳以降も国民年金保険料を自発的に支払い、満額に近づけるための制度です。対象は、保険料納付期間が480ヶ月に満たない人や、受給資格期間が不足している人です。

加入できるのは原則65歳未満までで、厚生年金保険に加入していない人です。年金の受給資格期間を満たしていない65歳以上70歳未満の人も、利用できます。

手続きは市区町村の国民年金担当窓口か、住所を管轄する年金事務所で行います。任意加入をすることで、将来の老齢基礎年金を増やすことができます。特に、あと数年で満額に届く人にとっては効果的な方法です。

参考:任意加入制度(日本年金機構)

400円支払い2年で元が取れる「付加保険料」

付加年金とは、自営やフリーランスなどの第1号被保険者が利用できる、保険料上乗せの仕組みです。月額400円の付加保険料を支払うと、将来「200×納付月数」が一生涯上乗せされます。この仕組みは、上の項で紹介した「任意加入制度」を利用する人も使うことができます。

例えば、付加年金料を2年間支払うと、年間4,800円の増額となり、受給開始から約2年で元が取れる計算になります。投資リスクがなく、確実に年金額を増やせる非常に効率の良い制度です。

自営業の方や任意加入を検討する方には、特におすすめの選択肢です。

あなたの年金はどうなる?60歳直前の確認事項とライフプラン

老後の安心のためには、60歳前に確認すべきポイントがあります。以下の2つをチェックして、将来に向けた備えを進めましょう。

「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」での累計納付月数の確認

毎年届く「ねんきん定期便」や、オンラインの「ねんきんネット」を使えば、自分の納付月数を簡単に確認できます。目標は480ヶ月(40年)で、未納や免除期間がどれだけあるかをチェックしておきましょう。

特に50代後半は、老後の受給額がほぼ確定する重要な時期です。納付記録に誤りがないか、過去の免除・猶予期間を追納すべきかなど、早めに判断することが大切です。

老後資金が不足する場合の選択肢

50歳以降になると、ねんきん定期便に、現在の働き方を60歳まで続けたと仮定した「将来受け取れる見込額(年額)」が記載されています。年金記録を確認した結果、思っていたよりも受給額が少なく、老後資金が不足しそうな場合は、以下の選択肢を参考にしてください。

健康が許す限り働き続けて厚生年金を増やす

60歳以降も働き続けることは、老後資金を補う選択肢のなかでも確実に成果が出る方法の一つです。厚生年金に加入して働けば、70歳まで保険料を納めることができ、その分だけ将来の年金額が増えます。

再雇用やパート勤務でも条件を満たせば厚生年金に加入できるため、フルタイムでなくても効果があります。また、働くことで給与収入が得られ、年金を繰り下げる余裕も生まれます。

年金の繰下げ受給で増額する

年金の繰下げ受給は、65歳からの受給開始を遅らせることで年金額を増やす制度です。1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額され、75歳まで繰り下げると最大84%の増額となります。

つまり、長生きするほど得になる仕組みで、老後資金が尽きるリスク(長生きリスク)に強い対策です。特に、60代後半も働く予定がある人や、貯蓄に余裕があり6570歳の生活費を賄える人に向いています。

リバースモーゲージで自宅を活用する

リバースモーゲージは、自宅を担保に金融機関から生活資金を借り、死亡後に自宅を売却して元金を返済する仕組みです。毎月の返済が利息のみとするのが一般的で、自宅に住み続けながら老後資金を確保できる点が大きなメリットです。

特に、子どもが同居予定でない場合や、自宅を相続させる必要性が低い家庭に向いています。ただし、金利上昇や不動産価値の下落によって借入可能額が減るリスクがあります。また、相続人の理解が不可欠です。

リバースモーゲージは、自宅を「住むだけの資産」から「使える資産」に変える選択肢として有効です。興味がある場合は、近くの金融機関で取り扱っていないか調べてみましょう。

まとめ

60歳で年金保険料の支払いが終わるかどうかは、働き方や過去の納付状況によって大きく異なります。未納や免除期間がある場合は、任意加入や付加年金を活用することで老後の受給額を増やすことができます。60歳直前の確認と対策が、将来の安心につながります。まずは、ねんきん定期便やねんきんネットで、現在の納付状況を確認しましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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