
物価高騰や長寿化が進む中、「年金だけで老後は大丈夫?」と、老後資金について不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。厚生年金の平均受給額は、国民年金を含めても男性と女性で大きな差があります。厚生労働省の統計をもとに、年収や加入期間による受給額の違いを早見表でわかりやすく整理しました。老後資金を確保するための計算式や、不足分への備え方も解説してあります。ぜひ老後の安心のためにお役立てください。
厚生年金の受給額は「なんとなく知っているつもり」でも、実際の平均額や男女差、年齢差まで把握するのは難しいと感じる方もいるかもしれません。まずは、現在のシニア世代がどれくらい受け取っているのか、そのリアルな数字を確認しましょう。
厚生労働省の最新データによると、厚生年金(老齢基礎年金を含む)の平均受給額は月額約15万円です。しかし、男女別に見るとその差は大きく、男性は約17万円、女性は約11万円と、約6万円の格差が生じています。
この差は、現役時代の働き方の違いが主な要因です。男性はフルタイム勤務の期間が長く、加入期間も長くなりやすい一方で、女性は出産・育児やパート勤務などにより、加入期間が短くなる傾向があります。
特に今の高齢者が働き世代だった頃は男女の賃金格差が大きく、結婚退職が一般的だったため、標準報酬額と加入期間が短くなりやすい構造がありました。こうした制度的背景が積み重なり、男性と女性の受給額に大きな差が生まれています。
実際、厚生年金の被保険者期間別老齢給付受給権者数は、女性では1年以上2年未満が最も多くなっています。
参考:令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業年報 結果の概要(厚生労働省)表25、p.17
年齢別に平均受給額を見ると、高齢の世代ほど受給額が高く、若いシニア層ほど低いという傾向があります。これは、過去の制度の影響などにより、現在の65〜70歳の世代では年金額が比較的低い年金額になりやすいためです。
年代別の年金平均受給額は、以下の通りです。
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年代 |
平均受給額(月額) |
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65〜69歳 |
約15万1,000円 |
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70〜74歳 |
約14万7,000円 |
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75〜79歳 |
約15万1,000円 |
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80〜84歳 |
約15万7,000円 |
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85〜89歳 |
約16万4,000円 |
今後の受給についても、制度改正の影響を受けると考えられます。
参考:厚生年金保険(第1号) 年齢別老齢年金受給権者平均年金月額
年収や加入期間によって受給額は大きく変わります。ここでは、厚生年金に40年間加入した場合の試算や、世帯単位での受給モデルを示し、老後の生活設計に役立つ「目安」を確認します。
厚生年金の受給額は、現役時代にどのくらいの給与で、どのくらいの期間働いて保険料を納めたかによって決まります。具体的には、以下の計算式が用いられます。
平均標準報酬額(毎月の給与+ボーナスをあわせた平均月額)× 0.005481 × 加入月数
上の計算式で算出された厚生年金部分の金額に、国民年金部分の金額をプラスした金額が、受給年金の総額です。会社員として厚生年金に加入している期間は、国民年金にも加入している扱いになります。また、国民年金の金額は「何ヶ月間、保険料を納めたか」だけで決まります。
加入期間を40年(480カ月)と仮定し、平均年収別の受給額を試算すると、次のようになります。老齢基礎年金の月額は、令和8年度の満額を参考にしています。
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平均年収 |
老齢厚生年金(月額) |
老齢基礎年金(月額) |
合計(月額) |
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300万円 |
約6.5万円 |
約7万円 |
約13.5万円 |
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400万円 |
約8.7万円 |
約7万円 |
約15.7万円 |
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500万円 |
約10.9万円 |
約7万円 |
約17.9万円 |
|
600万円 |
約13.1万円 |
約7万円 |
約20.1万円 |
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800万円 |
約17.5万円 |
約7万円 |
約24.5万円 |
※概算値。実際は賞与や加入期間により変動します。
老後の生活は、個人ではなく世帯で考える必要があります。代表的なモデルケースは、以下の通りです。
夫が40年間会社勤めをした場合、専業主婦の妻にも、老齢基礎年金(満額)が支給されます。
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夫の 平均年収 |
(夫) 老齢厚生年金 (月額) |
(夫) 老齢基礎年金 (月額) |
(妻) 老齢基礎年金 (月額) |
合計(月額) |
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300万円 |
約6.5万円 |
約7万円 |
約7万円 |
約20.5万円 |
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400万円 |
約8.7万円 |
約7万円 |
約7万円 |
約22.7万円 |
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500万円 |
約10.9万円 |
約7万円 |
約7万円 |
約24.9万円 |
|
600万円 |
約13.1万円 |
約7万円 |
約7万円 |
約27.1万円 |
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800万円 |
約17.5万円 |
約7万円 |
約7万円 |
約31.5万円 |
夫婦共に40年間会社を勤め上げ、いずれも平均年収400万円であれば、次のような計算になります。
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1人あたり 平均年収 |
1人あたりの 老齢厚生年金 (月額) |
1人あたりの 老齢基礎年金 (月額) |
1人あたりの 合計(月額) |
世帯の 年金総額 (月額) |
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400万円 |
約8.7万円 |
約7万円 |
約15.7万円 |
約31.4万円 |
老後の生活に不安を感じているのであれば、年金額の目安を把握したうえで、必要な生活費の目安を確認することが重要です。ここでは、総務省などの統計をもとに、老後の生活費の基準を整理します。
生命保険文化センターの調査によると、高齢夫婦世帯が必要とする生活費は次の通りです。
・最低限の生活費:月約24万円
・ゆとりある生活費:月約39万円
夫が元会社員で、妻が専業主婦だった場合、夫の平均年収が400万円であれば世帯年金月額は22万7,000円です。毎月、数万円の赤字が発生する恐れがあります。特に物価上昇が続く現在、年金だけで生活を完結させるのは難しいといわざるを得ないです。
参考:2025(令和7)年度 生活保障に関する調査(生命保険文化センター)p.112~114
老後は、日常生活費以外にも大きな負担が発生します。例えば、住宅ローンの残債やリフォーム費用などの住宅関連費が考えられます。持ち家は年数が経過するほど修繕が必要になるため、注意が必要です。参考までに、お風呂を全てリフォームすると100万円単位の費用がかかります。
また、高齢になるほど医療費がかさむようになります。医療費が高額になれば、高額療養費制度を利用し、自己負担額が一定の上限を超えた分を後から払い戻してもらえます。しかし差額ベッド代や食事代など、医療費以外の費用は対象外になり、長期入院になるほど費用がかさみます。
介護費用についても考えなければなりません。介護保険制度により自己負担金は1割から3割となりますが、おむつ代などは実費ですし、施設に入居する場合は月々数万円から、施設によっては20~30万円もの費用がかかるケースも見られます。
これらの費用は、年金だけでは賄えない可能性があります。計画的な備えが不可欠です。
老後資金の不足は「働く」「増やす」「資産を活用する」という3つの方向から補うことができます。それぞれの特徴と注意点を整理します。
健康状態や体力、働き方の希望に応じて、働き続けるという選択肢もあります。65歳以降も働いて収入を確保し、年金の受給開始を遅らせる「繰り下げ受給」を選ぶと、1か月遅らせるごとに0.7%増額されます。最大75歳まで繰り下げると、最大84%増額されるのが大きなメリットです。
ただし、健康状態によっては、無理な働き方が体を壊すきっかけになりかねません。また、「年金の受給を遅らせているから、今は収入がない」などと過度な節約生活を行うと、健康を損ねる可能性があります。
豊かな老後を迎えるための繰り下げ受給だからこそ、現在の健康状態や生活のゆとりとのバランスを考え、慎重に判断することが大切です。
よく知られている資産運用として、NISAやiDeCoがあります。これらは老後資金づくりにおいて税制面のメリットが大きく、長期で積み立てるほど効果を発揮する有用な制度です。現役世代にとっては、時間を味方につけながら資産を増やせる強力な選択肢といえます。
一方で、シニア世代から新たに資産運用を始める場合は、いくつかの注意点があります。まず、運用期間が短いため、複利の効果が十分に働きにくいことが挙げられます。また、元本割れのリスクを取りにくく、生活費の一部を投資に回しすぎると、かえって家計が不安定になる可能性もあります。
そのため、シニア世代の資産運用は「大きく増やす」よりも、「減らさない」「守る」ことを重視した設計が基本となります。
労働でも投資でもない第三の選択肢として注目されているのが、リバースモーゲージです。自宅を担保に金融機関から資金を借り、契約者が亡くなった後に、相続人が自己資金や担保物件の売却金で返済する仕組みです。次のようなメリットがあります。
自宅を活用するものの、すぐに売却する形ではないため、老後を自宅でそのまま過ごすことができます。「自宅をリフォームしたいけれど自己資金がない」「年金だけではローンが返済できない」と感じる場合には、選択肢の一つとなります。
リバースモーゲージには、まとまった資金を一括で借りる「一括方式」と、年金のように毎月必要な金額を借りる「年金方式」、資金が必要になったときにその都度借り入れができる「都度方式」があります。「年金方式」を選べば、年金では足りない月々の赤字分を補填することが可能です。
近年、相続した実家が空き家のまま放置され、管理が行き届かず問題化するケースが増えています。リバースモーゲージを利用すると、自宅を担保に資金を受け取り、最終的には自宅の売却によって返済する仕組みのため、「自分が亡くなった後に家をどう処分するか」をあらかじめ整理しておくことができます。
その結果、相続人が空き家の管理や売却手続きに追われる負担を軽減し、子ども世代の精神的・時間的な負担を減らすことにもつながります。
ただし、金利上昇や不動産価値の下落リスクなどもあるため、利用にあたっては家族での話し合いが欠かせません。興味がある場合は、お近くの金融機関でリバースモーゲージを扱っていないかどうか、一度調べてみましょう。
厚生年金の平均受給額は、男女差や年齢差が大きく、世帯単位で見ても老後の生活費を十分に賄えるとは限りません。最低生活費や突発的な支出を考えると、年金だけに頼らない備えが必要です。
働き方の工夫、繰り下げ受給、無理のない資産運用、そしてリバースモーゲージなど、選択肢は複数あります。子世代も交えて、家族で早めに老後資金について話し合うことが、安心できる暮らしにつながります。
