2023年10月4日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージの融資額はどうやって決まる?住宅ローンとの違いは?


住宅を担保としてお金を借り入れるリバースモーゲージは、契約者の存命中は毎月の返済額が利息のみなので、返済額が少ないことが魅力の一つです。融資額はどうやって決まるのか、住宅ローンとはどう違うのかと疑問に思っている人も少なくないでしょう。リバースモーゲージの融資額や住宅ローンとの違い、利用するメリットについて解説します。

リバースモーゲージについて

融資額の詳細を含め、リバースモーゲージの詳しい仕組みをご案内します。対象年齢や返済方法など、一般的な担保型ローンとはかなり違うところがあるため、あらかじめ押さえておくと安心です。

借入限度額

リバースモーゲージの借入限度額は、担保となる住宅の評価額を基準に各金融機関が判断します。多くの人がリバースモーゲージで担保とするのは自宅です。つまり、自宅の評価額を元に借りられる金額が決まります。

自宅の評価額とはいえ、リバースモーゲージにおいては、建物の価値はあまり評価されません。なぜなら、担保である自宅を売却するのは契約者がお亡くなりになってからになるためです。建物における現在の評価額を元に借入限度額を計算してしまうと、売却時には老朽化していて価値が下がり、売却価格が元金を下回ってしまう恐れが高まります。

よってリバースモーゲージでは土地の評価額が重要になります。一戸建てを対象としている金融機関が多いですが、都市部かつ利便性の高い立地などマンションの価額が下がりにくい物件であれば対象になるケースもみられます。

自宅の評価額がそのまま借入限度額になるわけではありません。借入限度額は、担保不動産評価額のおおよそ50%(高くて60%程度)が目安となります。

対象年齢と審査

リバースモーゲージの対象年齢はシニア層です。具体的な年齢は金融機関によって違いますが、おおよそ50歳以上が対象となります。一方、利用開始年齢は80歳までと制限があるところがほとんどです。

審査については、シニア層が対象のため、仕事に就いていることを条件とする金融機関はほとんどありません。年金など、長期安定的な収入があれば融資可能とみなされます。

金利と返済方法

リバースモーゲージのほとんどが、市場金利の高低を利息に反映させる変動金利となります。ただ、金利が上下しても利息が変動しない固定金利も選べる金融機関も存在します。固定金利の場合は、現在の金利よりも高い金利が採用される可能性が高いでしょう。

リバースモーゲージの返済方法は、契約者の存命中は利息のみを支払い、契約者がお亡くなりになり次第元金を一括返済するものです。契約者の死後なので、元金返済は相続人が行います。担保となっていた契約者の自宅を売却して返済するのが一般的ですが、相続人の意向により違う方法で返済することも可能です。

リバースモーゲージ資金の使い道

リバースモーゲージで融資を受けた資金は、投資目的でない限り、使い道が自由です。例えば以下のような目的で使えます。

毎月の赤字補填に

年金生活が始まったら、家計が毎月赤字になってしまう人もいるでしょう。毎月少しずつとはいえ、貯金を切り崩していくとそのうち資金が底をついてしまいます。リバースモーゲージなら年金形式で毎月一定の金額を受け取れるため、赤字の補填に有効です。

バリアフリーのリフォーム費用に

老後、足腰の健康に不安を感じ、バリアフリーのリフォームを検討しているならリバースモーゲージが有効です。まとまった金額を一括で借り入れることができるため、リフォーム費用のために貯金を切り崩す必要がありません。住み慣れた自宅をリフォームし、快適に暮らしていくことができます。

病気やケガ、介護などいざというときの費用に

リバースモーゲージは、融資限度額までなら必要に応じて借り入れができます。引き出し回数や金額は自由です。シニアになると常に病気やケガのリスクがつきまとい、ある日突然介護が始まる可能性もあります。いざというときのために契約しておくと安心です。

リバースモーゲージと住宅ローンとの違い

リバースモーゲージも、住宅ローンも、自宅に抵当権を設定する融資の仕組みという点では同じです。しかし、決定的に違う点もいくつかあります。代表的な違いは、以下の3点です。

目的の違い

住宅ローンは、住宅を取得するために融資を受けます。一方でリバースモーゲージは、老後の生活などのために融資を受け、契約者がお亡くなりになったら住宅を手放します。

目的が違うので、資金用途も違います。住宅ローンで融資を受けられる資金は、住宅取得のためにしか使えません。リバースモーゲージの資金用途は住宅ローンよりも幅広く、投資目的でなければ生活のため、レジャーのため、リフォームのためなどに使えます。

年齢制限の違い

住宅ローンを契約するのは、若ければ若いほどよいとされます。完済までの期間を長く設定できるため、月々の返済額が安くなるからです。開始年齢が上がるほど審査が厳しくなり、月々の返済額も高くなります。一般的には65歳を過ぎると契約が難しくなります。

一方、リバースモーゲージはシニア層のための融資システムです。若年層は契約できません。

返済方法の違い

住宅ローンの返済方法は、毎月元金と利息を組み合わせて返済するのが一般的です。利息の他、元金も少しずつ返済していくため、借り入れ当初から完済まで同額を返済するか、少しずつ返済額が減っていきます。

一方でリバースモーゲージは契約者の存命中に利息を支払い、契約者がお亡くなりになったら元金を返済します。融資が必要な期間は返済負担が軽いのが特徴です。

リバースモーゲージ型の住宅ローンとしては、「リ・バース60」があります。住宅資金の調達を目的とした場合に限り、毎月利息のみの返済といったリバースモーゲージの特徴を備えた住宅ローンを利用できます。リフォームや建て替えのみを目的に融資を受けたいシニア層は、検討してみてはいかがでしょうか。

リバースモーゲージを利用するメリット

リバースモーゲージを利用すると、以下のようなメリットがあります。単なる融資にとどまらないメリットに魅力を感じ、検討する人も多くいるでしょう。

老後の生活が安定する

同じ融資でも、一般的なローンは元金部分と利息部分を組み合わせて返済します。一方、リバースモーゲージは毎月利息のみを返済していく形になります。年金暮らしの老後も、家計に過度な負担を掛けることなく無理なく融資を受けることが可能です。

ずっと自宅に住み続けられる安心感が手に入る

一般的な担保型ローンは、返済期限が来ると元金を一括返済するか、担保を差し出すかの二択を迫られます。一方、ほとんどのリバースモーゲージは契約者の存命中に担保物件を差し出ス様なことは起こりません。安心して住み慣れた自宅で暮らせます。

ただし一部のリバースモーゲージには、定められた期間が過ぎると元本の一括返済が求められるものもあります。確認が必要です。

空き家対策になる

誰も相続しない家には、空き家のリスクがつきまといます。空き家のリスクとは、空き家を長期間手入れしないことで起こるトラブルのリスクです。定期的に風を通さないと家は傷みますし、雑草が伸びて近隣に迷惑を掛けるかもしれません。台風など天災のときには窓ガラスが割れ、放置されてしまう可能性もあります。

リバースモーゲージなら、契約者がお亡くなりになった後は速やかに自宅が売却されるため、相続人が空き家のリスクを背負うことはありません。

資金が必要なときに融資を受けられる

お金が必要なのは、いうまでもなく「生きている間」です。しかし自分たち夫婦が亡くなってから自宅が売却されたなら、お金を受け取るのは相続人。リバースモーゲージは、お金が必要になる老後に、いわば自宅の売却金を前もって受け取れる仕組みです。

相続人としても、「親が亡くなってから遺産を受け取るより、子育てが大変な今だからこそ援助がほしい」と考えているかもしれません。親子でよく相談し合って、利用を検討しましょう。

まとめ

リバースモーゲージの融資額は不動産評価額よりもぐっと低めになります。もしかしたら希望の融資額を受けられないかもしれません。

まずは老後、何にどのくらいの金額が必要なのかを計算し、希望融資額を算出してみましょう。そのうえで自宅の評価額を査定してもらうのがおすすめです。リバースモーゲージのための不動産鑑定は、無料で行っている金融機関がほとんどです。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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