2026年1月17日
終活
【FP解説】住まいの終活とは?空き家の相続や売却するための完全ガイド

「住まいの終活」という言葉をご存じでしょうか。住んでいる人が亡くなったら空き家となってしまい、誰も相続しない家について、あらかじめ対策を考えておくことです。空き家 を活用する場合、売却するほかに賃貸という方法があり、いずれも家の管理や、場合によってはリフォームが欠かせません。相続登記義務化となった今、空き家の相続をどうすべきかについて、家族と一緒に考えてみませんか。

住まいの終活が注目される背景

住まいの終活は、単なる資産整理ではなく、暮らしの安心を守るための重要な取り組みです。少子高齢化や相続件数の増加により、空き家の扱い方が社会的にも大きな課題となっています。

少子高齢化と相続増加の現状

日本では高齢化が進み、親世代から子世代への不動産相続が急増しています。そこで増加の一途をたどっているのが空き家です。2023年の調査によると、総住宅数のうち空き家は900万戸と、2018年(849万戸)と比べて51万戸増加し、過去最多となっています。空き家率は13.8%と、10軒に1軒以上が空き家である状況です。

このように日本全国で「住み手のいない家」が増え、相続人が複数いる場合は処分方法で意見が分かれることも多いです。

結果として、相続登記がされないまま放置されるケースが増え、法的なトラブルにつながることがあります。こうした背景から、住まいの終活は、家族の安心と社会的課題の解決の両面で注目されています。

参考:令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果(統計局)

空き家問題と社会的コスト

空き家は防災・防犯の観点からも大きなリスクを抱えています。管理されない家は倒壊や火災の原因となり、近隣住民に迷惑をかけることもあるためです。また、管理されていない家は破損しやすく、破損してもすぐには修繕されない可能性が高いため、ひとたび地震や台風などの災害が起こると危険が増します。

社会全体で見ても、管理されていない荒れた空き家の増加は地域の価値を下げ、経済的損失を生み出す要因となっています。

住まいの終活で考えるべきこと

住まいの終活では「空き家予備軍」をどう扱うかが重要です。今は住んでいても、将来使わなくなる可能性を見据えた準備が必要です。

「空き家」「空き家予備軍」とは何か

空き家とは、誰も住んでいない住宅を指しますが、将来的に住まなくなる可能性が高い家も「空き家予備軍」と呼ばれます。例えば、子どもが独立して戻る予定がない場合や、老後に施設へ入居する可能性がある場合です。

こうした予備軍を早めに把握することで、まだ人の住んでいる家であっても、売却や賃貸などの選択肢を検討しやすくなります。

使わない住まいを放置するリスク

使わない家を放置すると、資産価値が下がるだけでなく、管理義務を怠ることで行政から指導を受ける可能性があります。倒壊の危険性や衛生上の有害性など、生活環境保全のために放置が不適切と判断されると「特定空家」とされ、自治体による助言、指導、勧告、命令の対象となってしまいます。

特定空家とみなされると、改善されない場合は固定資産税の特例が解除されて税金が高くなってしまったり、行政代執行による強制撤去の対象になってしまったりします。この場合の行政代執行とは、自治体主導による空き家の解体です。解体費用は空き家の持ち主(相続人)が支払わなければなりません。

不動産整理の第一歩は現状把握と選択肢の整理

住まいの終活は「現状把握」から始まります。所有物件の棚卸しを行い、維持コストや将来の修繕費を試算しましょう。

所有物件の棚卸し ― 自宅・別荘・投資物件などの整理

まずは自宅だけでなく、別荘や投資用不動産も含めて所有状況を整理しましょう。複数の物件を持っている場合、それぞれの用途や維持コストを明確にすることが重要です。

棚卸しをすることで「どの物件を残すか」「処分するか」の判断がしやすくなります。後に管理をするのは相続人なので、相続人達とも相談して決めます。

維持コスト・将来修繕費・固定資産税の試算視点

家は持っているだけで固定資産税や維持費がかかります。さらに、築年数が経過すると修繕費が増えるため、将来の負担を見積もることが欠かせません。

固定資産税、維持費、修繕費の試算を行うことで、資産としての価値と負担のバランスを把握できます。

「持ち続ける」「賃貸に出す」「売却/処分する」の判断軸

住まいをどう扱うかは、家族の利用予定があるかどうか、経済的負担に納得できるかどうかで判断します。持ち続ける場合はリフォームや管理が必要で、相続人のうち誰が管理をするのか、費用はどこから出すのかをしっかり決めておきましょう。

賃貸に出せば、収益化も可能です。ただし築年数が古い家であればあるほど、リフォームが必要になる可能性が高まります。一度リフォームの見積もりを行ってみて、賃貸に出すことが得策かどうかを家族で話し合いましょう。

なお、売却すれば資産を現金化できるため、複数の相続人に公平に利益を分配することが可能になります。持ち続けたり、賃貸に出したりする場合と違い、権利を手放すので毎年の固定資産税が発生しません。

空き家リスクと管理義務 と空き家化を避ける方法

前述したように、空き家の管理を怠ると行政から「特定空家」に指定され、税負担が増える可能性もあるため注意が必要です。空き家を残すと決めたなら、こまめに管理を行い、近隣に迷惑が及ばないよう注意しなければなりません。

空き家化を避ける最善の方法は、ズバリ「なるべく早く売却する」ことです。売却か賃貸か、はたまたこのまま所持するかなど判断を先延ばしにしていると、家はどんどん荒れていきます。すると家の評価額が下がったり、家が売れなくなってしまったりするリスクがあります。早めの手離れが、空き家化回避における最善の方法です。

相続・名義と「家」の受け渡し

家の相続は法律や制度の理解が欠かせません。相続登記義務化により、名義変更を怠ると罰則が科される可能性もあります。詳しく解説します。

相続登記の義務化 ― 何が変わったのか

2024年から相続登記が義務化され、相続人は不動産の名義変更を必ず行わなければなりません。期限は、不動産を相続したことを知った日から3年以内です。

これにより「登記未了のまま放置される家」が減り、「空き家の管理をお願いしたいけれど、誰が持ち主か分からない」といったトラブル防止につながります。

なお、義務化によって、相続人は早めに対応することが求められています。過去に相続した不動産についても変更登記が必要だからです。ただし、過去の相続分には、2027年3月31日までの猶予期間が設けられています。

共有名義/生前贈与/遺言書 ― 家族間トラブル防止の知恵

相続のとき遺産を公平に分けるのが難しいなどの理由で、家を複数人で共有名義にする例が見られます。しかしそうすると、いざ共有不動産を処分しようとしたとき、意見が分かれやすくなります。

不動産を前もって相続人に贈与する生前贈与や、遺言書を活用することで、相続人間のトラブルを防ぐことが可能です。特に正式な遺言は「どう分けるのか」を明確にできるため、安心につながります。

ただ、生前贈与は「相続」ではなく「贈与」のため、税金がより高くなる可能性があります。一般に、贈与税の方が相続税よりも高いためです。なお、一部の相続人に偏った生前贈与をすることで他の相続人とトラブルになるケースもあります。生前贈与を検討するときは、税金の専門家も交えたうえで、家族と相談するのがおすすめです。

家族とのコミュニケーション ― 価値観と将来の合意形成

住まいの終活は家族との話し合いが欠かせません。価値観の違いを尊重しながら「誰が住むのか」「どう管理するのか」を合意形成することが重要です。

早めに話し合うことで、相続時のトラブルを未然に防げます。なるべく家族みんなが元気なうちに、家族会議を行いましょう。相続人が遠方に住んでいる場合は、オンラインでの会議も考えられます。

新しい選択肢であるリバースモーゲージ

住まいの終活には、空き家になる前に活用するという手もあります。資産を有効に使いながら、暮らしを守る選択肢を知っておきましょう。

リバースモーゲージとは ― 仕組みと対象者

リバースモーゲージは、自宅を担保に金融機関から生活資金を借りる仕組みです。高齢者が対象で、自宅に住み続けながら資金を得ることができます。老後資金に不安がある人にとって、有効な選択肢となります。

リバースモーゲージで借りるお金の使い道は原則自由であり、生活資金に充てる人もいれば、バリアフリー工事に充てる人もいます。毎月の返済は利息のみで、元本は契約者がお亡くなりになったとき、相続人が空き家を売却したり、自己資金で支払ったりすることで返済します。

メリットとデメリット ― 資金化と住み続けの両立

リバースモーゲージのメリットは、老後資金を確保しつつ、慣れ親しんだ家に住み続けられる点です。老後の生活費や、だんだん増えていく医療費に充てられるため、安心感を得やすい仕組みといえます。

一方で、不動産価値の下落や金利変動による返済リスクがあります。また、家族の相続財産が減ることもデメリットとして考えられます。したがって、資金化と住み続けの両立を選ぶ際には、制度の仕組みを理解し、金融機関に相談しながら慎重に判断することが大切です。

【FP解説】リバースモーゲージとは?リスクや注意点などどんな人に向いているのかを徹底解説!

「家」と「人生の最終章」をどうデザインするか

住まいの終活は、暮らしの継続性や家族の安心をどう守るかが大切です。住まいの終活をどうデザインするかについて解説します。

単なる資産管理だけでなく「安心」「暮らしの継続性」の視点を

家は資産であると同時に、日々の暮らしを支える生活基盤でもあります。終活では「価値をどう残すか」だけでなく、「安心して住み続けられるか」「家族が困らないか」という視点が欠かせません。

例えば、配偶者居住権などの制度を活用すれば、残された家族が安心して暮らしを継続できます。さらに、賃貸やリフォームなどの選択肢を検討することで、家を資産として活かしながら生活の継続性を守ることが可能です。資産管理と暮らしの安心を両立させることこそ、住まいの終活の本質といえるでしょう。

早めの相談を ― 専門家と制度窓口の活用を

住まいの終活は複雑な制度や法律が絡むため、専門家への相談が欠かせません。ファイナンシャルプランナーや司法書士、不動産会社などの窓口を早めに活用することで、安心して準備を進められます。

また、制度改正による税制の変化もあるため、最新情報を確認することが大切です。

まとめ

住まいの終活は、資産の整理だけでなく、安心して暮らし続けるための準備です。空き家問題や相続登記義務化など社会的背景を踏まえ、家族との合意形成や専門家の活用を早めに行うことが重要です。

さらに、賃貸・売却・リフォーム・リバースモーゲージなど多様な選択肢を理解し、自分と家族に合った方法を選ぶことで、人生の最終章をより穏やかに、そして安心して迎えることができるでしょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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