2023年12月18日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージの金利計算方法は?金利相場やリスクを解説

リバースモーゲージは、自宅を担保として利用し融資を受け、契約者が存命中は毎月利息のみを返済する借入の仕組みです。利息の金額は金利によって決まります。リバースモーゲージの多くは変動金利が採用されているため、金利が高くなれば毎月の返済額も高くなります。返済額が低いため住宅ローンの借り換えに検討する人もいるでしょう。リバースモーゲージの金利相場、リスク、金利の計算方法について解説します。

リバースモーゲージの仕組みや利用条件

まずは、リバースモーゲージの仕組みや利用条件について解説します。リバースモーゲージが「シニアの味方」と呼ばれるのは、利用対象年齢をシニア層に設定していたり、年金暮らしでも利用しやすいよう返済額が抑えられていたりするためです。ご自身にぴったりの融資プランかどうかをご確認ください。

リバースモーゲージの仕組み

リバースモーゲージは、多くのシニア層にとって最大の財産である「自宅」を利用して借入を受ける融資システムです。自宅を担保として、自宅の評価額に応じた借入を行い、契約者が存命中は利息に当たる部分だけを支払います。元金は、契約者が亡くなった後、相続人が契約者の自宅を売却することなどで一括返済します。

契約者からみれば自宅が担保物件になるのは不安ですが、リバースモーゲージであれば生存中はずっと住み慣れたわが家で暮らすことが可能になります(※融資期間が定められているリバースモーゲージもあります)。生活を変えずに融資を受けられ、毎月の返済額は安価に抑えられているため、一般的なローンよりも家計への負担が少なくなります。

融資方法には3つのパターンがあります。毎月決まった金額を借り入れる「年金型」、一括してまとまった金額を借り入れる「一括型」、お金が必要になったとき借入の申し入れをする「都度融資型」の3つです。いずれも、自宅の評価額に応じて定めた融資限度額の範囲内で利用できます。

リバースモーゲージの利用条件

リバースモーゲージの利用条件は金融機関によって若干違います。ここでは、一般的なケースについて解説します。

リバースモーゲージの利用対象年齢は50代からのシニア層です。50歳から、あるいは55歳から融資可能と定めている金融機関が多く、融資開始年齢の上限は80歳と設定している場合がほとんどです。シニア向けの融資なので、収入条件はあまり厳しくありません。年金収入しかなくても申し込みが可能です。

担保となる自宅は、基本的には一戸建てが対象となります。一部、マンションも利用可能とする金融機関がありますが、駅に近い、人気エリアにあるなど資産価値の高いマンションでなければ難しいでしょう。

なお、担保となる自宅を相続する予定である子世代などの了承を得ていることも、利用条件の一つです。元金は、基本的には相続人が自宅を売却することによって返済します。契約者が亡くなった時、相続人が事情をいっさい知らなければ、金融機関との間で話がこじれてしまう可能性があるためです。

リバースモーゲージの金利計算方法

「毎月の返済額は、だいたいいくらになるのだろう」と疑問に思う人もいるでしょう。毎月の返済額は、金利によって変わってきます。ほとんどのリバースモーゲージで変動金利型を採用しており、金融機関によっては固定金利型を選べるケースもありますが、変動金利型よりも金利は高くなります。

リバースモーゲージの金利は金融機関によって違い、またほとんどが変動金利なので、世の中の金利の動きに応じて利率が変わります。世の中の金利が上昇すれば金融機関の定める金利も上昇して返済額が高くなり、下降すれば返済額は低くなります。

リバースモーゲージの金利の計算方法

金融機関によって金利の計算方法はさまざまですが、多くの場合、短期プライムレートあるいは長期プライムレートにあらかじめ定めた利率を上乗せして決められます。

「短期プライムレート」とは、銀行が一年以内の期間で大手企業などの優良融資先に融資を行うときの最優遇貸出金利です。「長期プライムレート」とは、1年を超える長期の融資取引を行う際の最優遇貸出金利です。

リバースモーゲージの金利は、銀行ごとに算出される短期あるいは長期プライムレートの利率に、さらに何%かを上乗せして定められることが多いでしょう。この金利は、一定期間ごとに見直されます。

参考までに、プライムレートや借入金利の計算方法が公表されている銀行のなかから、実際の計算方法をご紹介しておきます(2023年10月現在)。

【スター銀行のリバースモーゲージ「充実人生」(利払いあり・変動金利型)】

基準金利
(スター銀行の長期プライムレート)

借入金利(基準金利+1.950%~2.950%)

1.450% 3.400%~4.400%

つまり、このリバースモーゲージでは、3.400%から4.400%の範囲で金利が決められるということになります。長期プライムレートが変動すれば、リバースモーゲージの金利も変動します。

リバースモーゲージの返済額の計算方法

リバースモーゲージの毎月返済額は利息のみなので、合計借入額に借入金利(年利)をかけた金額が、年間返済額となります。年間返済額を12ヶ月で割ることで、毎月の返済額が算出されます。

計算方法は金融機関によって若干異なりますし、金利が変われば年の途中でも返済額が更新されますが、このシンプルな計算方法で、実際の返済額を計算してみましょう。

【3%の借入金利で、老後の生活資金として月々5万円の融資を受ける場合】

・1ヶ月後(融資1回)の返済額:125円
(5万円×3%÷12ヶ月)
・6ヶ月後(融資6回)の返済額:750円
(5万円×6ヶ月×3%÷12ヶ月)
・1年後(融資12回)の返済額:1,500円
(5万円×12ヶ月×3%÷12ヶ月)

【3%の借入金利で、住宅ローンの一括返済用に500万円の融資を受けた場合】

毎月の返済額:1万2,500円
(500万円×3%÷12ヶ月)

リバースモーゲージの金利相場とリスク

リバースモーゲージの金利は金融機関によって違うものの、相場はあります。金利相場と、リバースモーゲージ特有のリスクについてご案内します。

リバースモーゲージの金利相場

リバースモーゲージの借入金利相場は、3~6%前後です。一般的な住宅ローンの金利相場は1%から1.5%程度なので、住宅ローンに比べると高めに設定されているといえます。

一方で、一般的な担保型ローンの金利相場は2.5%から10%前後とかなり幅が大きいのが特徴です。担保となる資産や利用者の条件がさまざまなので、審査によって金利がかなり変わってきます。

リバースモーゲージの金利は住宅ローンよりも高く、他の担保型ローンよりは低い可能性があると捉えておくと良いでしょう。

リバースモーゲージのリスク

主に金利や返済面におけるリバースモーゲージのリスクは、以下の3点です。

・金利上昇リスクがある

リバースモーゲージのほとんどは変動金利型なので、世の中の金利が上昇すれば返済額が高くなる可能性があります。将来どの程度金利が変動するのか、金融の専門家であっても明言するのは難しいものです。金利があまりに上昇すれば、返済額が大きく家計を圧迫するかもしれません。

・長生きリスクがある

長生きは本来喜ばしいことですが、リバースモーゲージの利用においてはリスクになります。基本的に、清算は契約者の死亡時といわれるリバースモーゲージですが、長期の返済リスクを抑えるために期限付きの契約でリバースモーゲージを提供している金融機関もあるためです。

たとえば、60歳から25年間の契約でリバースモーゲージを利用したとします。25年後の85歳時には、契約者が存命でも一括返済する必要があるため、場合によっては、生きている間に家を失うこともあります。

・自宅の評価額が下がるリスクがある

多くのリバースモーゲージでは、一定期間ごとに担保物件の評価額が見直されます。自宅の評価額が下がってしまった場合、融資限度額に影響する可能性が高くなります。一括して大きな金額を借り入れしていた場合は、借入金額が担保評価額よりも大きくなってしまう元本割れが起こるかもしれません。

元本割れが起こると、相続人が担保物件を売却して元金を返済するとき、持ち出しの部分が出てしまうかもしれません。最近のリバースモーゲージでは、元本割れが起こっても相続人に不足額が請求されない「ノンリコース型」を選ぶことができます。やや金利が高くなる傾向にありますが、元本割れが不安な場合はノンリコース型を選択しましょう。

リバースモーゲージの利用用途

考えられる資金用途は多岐にわたりますが、シニア向けということもあり、以下のような目的で利用する人が多いのが特徴です。

家計の補填に

定年を迎え年金生活が始まると、年金だけでは家計が賄えない可能性があります。年金型で毎月数万円の融資を受ければ、かけがえのない貯金を目減りさせることなく、安心して生活ができます。

家のリフォームに

足腰が弱くなってきたときのため、バリアフリー住宅にリフォームしたいと考えても、資金不足ではできません。また、家は築20年を過ぎると修繕しなければならないところが複数出てきます。リバースモーゲージでまとまった金額を手に入れれば、わが家を住みやすくリフォームできます。

住宅ローンの借り換えに

リバースモーゲージで借りたお金を、残っている住宅ローンの一括返済に回すことで、実質的な借り換えが可能になります。契約者の生存中、リバースモーゲージの返済は利息のみなので、一般的な住宅ローンよりも毎月の返済額を抑えられます。

ただ、住宅ローンでは契約者が亡くなったらローンの返済が免除される団体信用生命保険(団信)に加入しますが、リバースモーゲージでは団信に加入できません。メリットとデメリットをよく引き比べ、借り換えを検討しましょう。

まとめ

リバースモーゲージの金利を知り、毎月の返済額をシミュレーションすると、返済額がかなり安いことに気づくでしょう。自宅という大きな資産をフル活用できるリバースモーゲージは、シニアの生活を明るく豊かなものにする可能性に満ちています。まずは、お近くの金融機関に相談してみましょう。無料の審査を申し込めば、自宅の評価額の意外な高さに驚くかもしれません。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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