2024年8月21日
リバースモーゲージ
【FP解説】不動産を担保に老後の生活費を借りられるリバースモーゲージとは?

老後、年金生活になると生活費に不安が生じてくる人も多いようです。そんなとき選択肢として押さえておきたいのがリバースモーゲージです。リバースモーゲージとは、自宅などの不動産を担保に金融機関などから融資を受けるもので、50歳代以上のシニア層が利用できます。生活費にあてるほか、リフォーム代や住宅ローン返済のために利用する人も少なくありません。リバースモーゲージの仕組みやメリットを解説します。

老後の生活費を担保するリバースモーゲージ

自宅を担保に融資を受けるリバースモーゲージは、老後の生活費を担保してくれます。まずはリバースモーゲージの概要や仕組みについて押さえておきましょう。

リバースモーゲージの概要

リバースモーゲージは、自宅など手持ちの不動産を担保にし、その不動産の評価額をもとに設定された融資極度額の範囲内で借り入れを行う融資システムです。全国各地の金融機関が商品として取り扱っています。

担保となった自宅には、契約者がお亡くなりになるまで住むことができます※1。よって、自宅を担保にお金を借りながらも、終生自宅で過ごしたいと願う人に向いています。

※1:一部、契約期間が設けられているリバースモーゲージもあります。

リバースモーゲージの仕組み

リバースモーゲージを利用すると、一般的なローンと同様に月々の返済が生じます。しかし、契約者がご存命のうちは、月々の返済は利息のみです。利息と元金を組み合わせて支払う一般的なローンよりも、毎月の返済の負担が軽いのが特徴です。

元金は、契約者がお亡くなりになった後、相続人が自宅を売却するなどの方法で一括返済します。

リバースモーゲージの利用条件

リバースモーゲージの条件は、金融機関によって若干の違いがありますが、おおむね以下の通りです。

  • 契約者の条件

契約者は50歳代以上であることが条件とされます。収入面については、年金などの安定した収入があればOKです。

  • 担保不動産の条件

担保となる自宅は、金融機関が指定するエリア内にあることが条件です。都市部の利便性が高い場所にある一軒家は、評価額が高くなる可能性があります。マンション

については、金融機関によって取扱いが違います。

  • 資金用途の条件

融資されたお金の使い道は原則自由です。生活費、医療介護の費用、リフォーム代、住宅ローンの借り換えなどに使えます。事業用途については一部制限を設けている金融機関もあります。

リバースモーゲージの受取方法

リバースモーゲージで融資を受けるとき、資金の受取方式には以下の3タイプがあります。

年金方式

年金のように、月々決まった金額を指定の銀行口座などに振り込んでもらう方式です。生活費の補填としてリバースモーゲージを利用したい人に向いています。

一括方式

一括でまとまった金額を借り入れる方式です。バリアフリーのリフォーム代にしたいなど、まとまった金額が必要な場合に向いています。

極度額方式

融資極度額に達するまでは、入り用になったときに何度でも自由に借り入れを行える方式です。急な入院や介護に備えておきたい人に向いています。

リバースモーゲージのメリット

リバースモーゲージには、次の5つのメリットがあります。

月々の返済負担が軽い

月々の返済は利息のみなので、年金生活であっても返済負担をあまりに重く感じることはないでしょう。年金の他に収入が入ってくる見込みのないシニア層にとっては、安心の仕組みです。

シニア層でも審査が通りやすい

リバースモーゲージは50歳以上を対象としているため、若年層はむしろ、利用できません。若いうちの方が審査に通りやすい一般的なローンとは対照的です。

ずっと自宅に住める

一般的な不動産担保型ローンは、契約期限が切れても返済がなされなければ担保となった不動産が回収されてしまうのが一般的です。一方でリバースモーゲージは、基本的に契約者がお亡くなりになるまでが契約期間とされます。よって、生涯自宅で暮らせます。

資金用途の自由度が高い

例えば住宅ローンであれば、借り入れた資金の使い道は住宅関連に限ります。しかしリバースモーゲージの資金用途は原則自由なので、リフォーム代に使った後、まだ借入金が残っていれば旅行やレジャーにあてるといった使い方が可能です。

空き家対策になる

自分亡き後、住み手がいない自宅は空き家になってしまいます。空き家の管理は、相続人にとってかなりの負担です。家が古く傷んでしまえば、買い手がなかなか見つかりません。リバースモーゲージは、いわば生存中に家の買い手を見つけておく方法です。空き家対策になり、相続人の負担が軽減されます。

リバースモーゲージのデメリットと注意点

リバースモーゲージには、デメリットもあります。デメリットと注意点は以下の通りです。

同居人とリバースモーゲージについて

リバースモーゲージは、最終的に担保となった家を売却することを想定して契約します。よって、配偶者以外の同居人がいる場合、注意が必要です。契約者がお亡くなりになった後、同居人が「やはり自分が住み続けたいので売れない」と言うかもしれないためです。

長生きすると極度額まで使い切ってしまうことがある

年金方式で借り入れを行っている場合、長く利用して借入総額が極度額まで達してしまうと、それ以降は借り入れができなくなります。長生きは喜ばしいことながら、融資が打ち切られてしまう可能性が高くなるため、注意しなければなりません。

年金方式で借り入れを行うときは、なるべく必要最小限の金額を借り入れるようにしましょう。

金利が上昇すると返済負担が増える

リバースモーゲージのほとんどが、変動金利制を採用しています。変動金利制では、世の中の金利が上がれば利息額がアップする恐れがあります。つまり、金利が上がると、月々の返済額が上がってしまう可能性があります。

将来、どれほど金利が上昇するかを予測するのは難しいことです。金利上昇があるかもしれないことを踏まえ、借り入れは必要最小限にするのが賢いといえます。

不動産の評価額が下がる可能性がある

リバースモーゲージでは、定期的に担保不動産の評価額を見直します。利便性が低くなったなど条件の変化により評価額が下がると、融資極度額も低くなってしまう可能性があります。

すでに極度額まで借り入れをしている人は、自宅の売却をもってしても元金を返済できないかもしれません。その場合、相続人が持ち出しを行う必要が出てきます。

ただし、契約時に「ノンリコース型」を選ぶと、相続人が元金を返済するとき、残債を負担する必要がなくなります。ノンリコース型は金利が高めに設定されており、利息の負担が高くなりますが、相続人に迷惑をかけたくないと考えるなら選択するのをおすすめします。

金融機関のエリア内でも審査に通らないことがある

金融機関が指定するエリア内に自宅があっても、審査が通らないケースがあります。利便性が悪いなどの理由で、不動産の価値が低い場合です。また一般に、マンションは一軒家よりも審査に通りづらくなります。

リバースモーゲージを検討したいと考えたら、早めに金融機関へ相談に行ってみましょう。

リバースモーゲージを利用すると良い人

メリットとデメリットを踏まえると、リバースモーゲージを利用すると良いのは以下のような人です。

バリアフリーのリフォーム代がほしい人

自宅をバリアフリーに改装し、少しでも長く住み続けたいけれど、老後資金を取り崩すのは不安があるという人には、リバースモーゲージがおすすめです。老後のためにコツコツ貯めた資金に手をつけることなく、自宅をバリアフリー化することができます。

老後にほんの少し生活費の補填がほしい人

老後の家計をシミュレーションしたときに、年金だけで暮らすとなるとほんの少しだけ生活費が足りないと感じている人には、リバースモーゲージが向いています。年金方式で少しずつ借り入れを行えば、安心してセカンドライフを楽しめます。

自分の家が空き家になるのが心配な人

相続人に自宅を継ぐ意思がなく、「将来は自宅を売るしかない」と考えている人にはリバースモーゲージがおすすめです。とくに、空き家になったときすぐに買い手が見つかるかどうか不安な方は、リバースモーゲージによって将来の売却が約束されるというだけでも安心に感じるのではないでしょうか。

まとめ

リバースモーゲージは、将来誰も住み継がない自宅を活用して老後資金を得られる方法です。月々の返済負担が軽いため、安心して借り入れを続けていけます。リフォーム代が足りない、老後の生活資金が足りないなどの理由で悩んでいる方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。大きな資産である「自宅」をフル活用して、老後の人生を謳歌しましょう。

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奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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