都営住宅は東京都が管理している賃貸の集合住宅です。一般的な住宅よりも安い家賃で借りられるため、東京都内で住み替えを希望しているなら注目する人も多いです。ただし、入居には同居親族などについて条件があり、世帯によって募集時期が違います。都営住宅の申込みを検討している方へ向けて、都営住宅の概要や入居資格、家賃、申込み方法について解説します。

都営住宅について

まずは都営住宅の概要を解説します。なお、「都民住宅」という言葉もあり、混同される方も多いようです。都営住宅と都民住宅の違いについても、あわせてご紹介します。

都営住宅とは

都営住宅とは、東京都が管理している賃貸の集合住宅で、家族または単身者に向けて提供されている住宅です。

公共の住宅には「UR賃貸」「公社賃貸」などの種類がありますが、そのなかでも公営住宅法に基づき所得の低い人を対象とした住宅を「公営住宅」と呼んでいます。都営住宅は、公営住宅の1つです。

都営住宅と都民住宅の違い

都民住宅も、公共の住宅の一部です。しかし、都民住宅は中堅所得者層向けの賃貸住宅なので、低所得者層を対象とした都営住宅とは違います。

よって都営住宅と都民住宅とでは、入居資格が異なります。また、都営住宅には単身者向けがありますが、都民住宅には家族向けしかありません。

都営住宅の入居資格

都営住宅の入居資格は、家族構成や年齢、障害の有無で違います。ここでは、2024年7月現在の入居資格について解説します。

家族の場合

家族向けの場合、申込日現在、東京都内に居住していることが必要です。また、パートナーシップにある方も含めて同居親族がいること、住宅に困っていることも必要条件となります。

所得の条件については、申込み世帯の所得の合計が、以下の所得基準の範囲内でなければなりません。
【家族向け都民住宅の所得基準表（概算額）】 　　　　　（平成21年4月～）

給与収入（年間）	家族数	所得金額（年間）
０円～３５１万円	２人	０円～２２７万円
０円～３９９万円	３人	０円～２６５万円
０円～４４７万円	４人	０円～３０３万円
０円～４９４万円	５人	０円～３４１万円

※引用元：都営住宅の入居資格（東京都住宅政策本部）

「給与収入」の欄は、家族のうち収入のある人が1人だけであり、かつその人の収入が給与収入である場合の基準額です。家族のうち1人以上が働いている場合や、給与収入ではない場合は、「所得金額」の欄を見ます。なお、この金額はあくまで目安であり、60歳以上の世帯や子どもがいる世帯などは緩和処置があります。詳しくは、所得基準を参考にしてください。

単身の場合

単身者向けの都営住宅に申し込む場合、東京都内に3年以上居住しており、60歳以上あるいは障害者、あるいは生活保護受給者であることが条件です。海外引き揚げ者やハンセン病療養所入所者、配偶者などから暴力を受けた被害者などの方も、それぞれ詳細条件を満たせば対象となります。

参考：都営住宅の入居資格（単身者向住宅を申込みする場合）（東京都住宅政策本部）

なお、現在住宅に困っていて、所得が定められた基準内であることも条件となります。所得基準は、例えば60歳の方の場合は256万8000円以下となります。詳しくは、所得基準を参考にしてください。

なお、親族ではない高齢者の方同士、障害者の方同士が共に暮らすことができる「高齢者等ふれあい同居」が始まっています。単身者向けの入居資格を満たす高齢者の方などが、親族以外の方を同居者として指定し、申し込むことのできる新しい募集です。

ひとり親世帯の場合

ひとり親世帯の場合、所得金額から35万円を控除することができます。条件となる所得金額の基準を超えていても、35万円分は所得金額から引くことができるので、条件を満たせる可能性が高まります（所得金額が500万円以下の場合）。

また、申込み資格を限定したポイント募集に申し込むことが可能です。ポイント募集とは、抽選ではなく、住宅困窮度の判定を行い、困窮度の高い方から優先して入居が可能になる募集です。当選確率を優遇する優遇抽選にも応募できます。

高齢者の場合

申込者が60歳以上であり、かつ同居親族全員が60歳以上、あるいは18歳未満の場合は、所得基準の緩和があります。

例えば、高齢者夫婦2人の世帯で申込みをしたい場合、年間所得が世帯合計294万8,000円以下であれば所得条件をクリアできます。

なお、上に示した通り、60歳以上であり、他の条件を満たせば単身住宅に申し込めます。

障害者の場合

申込み世帯に障害者がいる場合、所得基準に優遇処置があります。まず、心身障害者※を含む世帯は所得区分が「一般区分」ではなく「特別区分」となり、一般よりも所得基準が緩和されます。

例えば3人家族の場合、一般区分であれば265万6,000円までが所得基準となりますが、特別区分では332万8,000円となります。さらに、障害者控除としてひとりにつき27万～40万円が控除になります。

参考：特別控除（東京都住宅政策本部）

　　　所得基準（東京都住宅政策本部）

※身体障害者手帳の交付を受けている１級～４級の障害者、あるいは重度または中度の知的障害者（愛の手帳の場合は総合判定で１度～３度）、あるいは精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている１級・２級の障害者（障害年金等の受給に際し、障害の程度が同程度と判定された方を含む。）、あるいは戦傷病者手帳の交付を受けている恩給法別表第1号表ノ３の第１款症以上の障害者

都営住宅の家賃

都営住宅の家賃は、世帯の所得によって違います。また、入居することになる住宅の広さや築年数などによっても変わってきます。減免制度を利用できれば、家賃をかなり下げることが可能です。減免制度には、一般減免と特別減免があります。

一般減免

認定所得月額が6万5,000円以下の場合、家賃が10％～75％減額されるケースがあります。認定所得月額は、以下の通り計算します。

【世帯の合計所得金額―（38万円×契約者を除いた家族人数）―特別控除額】÷12カ月

特別減額

認定所得月額が15万8,000円以下の世帯で、一定の条件を満たすときに、家賃の50％が減免されます。ひとり親世帯や障害者がいる世帯、寝たきりの高齢者がいる世帯などが対象になります。

都営住宅の入居申し込み方法

都営住宅へは、「都営住宅入居者募集サイトポータルページ」から申し込みます。募集サイトのサービス提供時間は、午前5時30分から翌午前1時です。手順は以下の通りです。

所得基準判定シミュレータで入居基準を満たしているか確認

まずは、シミュレータで入居基準を満たしているか確認してみましょう。住所などの個人情報を入力する必要はありません。世帯人数、特別控除対象者の有無、前年の所得などを入力すると、ざっくりではありますが、入居基準を満たしているか確認ができます。

利用者登録を行う

利用者登録画面より、氏名や電話番号、メールアドレスなどを入力して仮登録。その後、本登録に進みます。

住宅検索

トップページから住宅検索画面に進み、希望の条件を入力して検索します。募集時期が来ていない住宅は選べないようになっているため、ポイント募集などを狙っている人は募集時期に注意しましょう。

【募集の種類と募集時期】

募集の種類	方式	サイトから申し込める住宅の種類
随時募集（通年）	先着順	世帯向
毎月募集（毎月中旬から下旬）	抽選	家族向 単身者向 若年夫婦・子育て世帯向 結婚予定者向
定期募集（5月・11月）	抽選	世帯向 若年夫婦・子育て世帯向
定期募集（2月・8月）	ポイント 抽選	家族向 単身者向など

※高齢者等ふれあい同居募集は「東京都行政手続きクラウド申請ツール」あるいは電話申込のみ

申込み

世帯情報などを入力して申込みを行います。内容について問い合わせや確認の電話、ハガキ通知が行われる場合があります。

結果通知

抽選結果のお知らせがメールで届きます。

募集案内や申込書は、都庁・区役所・市区町村の役所で配布されています。また、東京都住宅供給公社の各窓口にも置いてあります。紙の資料をじっくり読み込みたい人や、自分の家の状況でどんな住宅に申し込めるか詳しく知りたい人は、足を運んでみてはいかがでしょうか。

都営住宅の注意点

都営住宅には、以下の3つの注意点があります。あらかじめ押さえておきましょう。

世帯員に変動があったら届出をしなければならない

子どもが生まれた、同居家族が死亡したなど、世帯員に変動があったらその都度、東京都知事に届出または申請をしなければなりません。また、使用許可を受けた世帯員以外の人を同居させようとする場合も同様です。

家賃を3ヶ月以上滞納すると明け渡しとなる

家賃を3ヶ月以上滞納すると、住宅の明け渡しの請求を受けることになります。

ペットは飼えない

どの都営住宅も、ペットは飼えません。ペットを飼いたい場合は、民営の住宅を検討しましょう。

まとめ

都営住宅は、高齢者や障害者、ひとり親世帯など、大きな収入を得るのが難しい方たちの味方です。困窮世帯には優遇措置があるため、今の家賃が高すぎると感じたら、検討してみてはいかがでしょうか。引っ越し費用などはかかりますが、月々の固定費が大幅に軽減されれば、生活はその分安定します。