2025年11月5日
老後
【FP解説】扶養から外れたらいくら稼げば損しない?税金と社会保険料の負担を解説

「配偶者の扶養に入っているが、もっと働きたい」と考えている人はいませんか。扶養から外れると、税金や社会保険料の負担が増えるため、収入の調整が重要になります。「年収の壁(103万、130万、160万、210万)」と呼ばれる収入を意識しながら、扶養控除や配偶者控除の影響、社会保険の加入条件を理解し、自分も家族も納得できる収入ラインを見極めましょう。なお、扶養から外れた場合の働き方についてもご紹介します。

扶養から外れるとどうなるか?

「扶養から外れる」には、2つの意味があります。「扶養控除の適用外となる」という意味と、「社会保険の適用外となる」という意味です。

扶養控除の適用外になると、扶養者の税負担が増える可能性があります。また、ご自身で所得税と住民税を納める必要が出てきます。

社会保険の適用外になると、扶養から外れて自分の社会保険に加入しなければならなくなります。

つまり扶養から外れると、一家の家計で考えれば、税負担が増し、社会保険料が増加します。扶養に入っていたときメリットとして享受していた「扶養されている側が働けば、働いた分だけ一家で使えるお金がプラスされる」という状況が変わり、扶養していた側も、扶養されていた側も、手取額が減ります。

税金負担の変化

扶養から外れると、一家の税金負担が増加します。

扶養者の収入に関しては、扶養控除が適用されなくなるため、課税所得が増加し、結果、所得税や住民税が高くなる可能性があります。被扶養者については、103万円(2025年から160万円)を超えた収入分が所得税の課税対象になります。

ただし、2025年の税制改正で、基礎控除額と給与所得控除額がアップしたため、扶養者の給与によっては、扶養から外れても課税所得がそれほど高くならない可能性があります。以下に詳しく解説します。

所得税や住民税の負担増の仕組み

扶養者の合計所得金額が1,000万円以下で、扶養されている配偶者の給与収入が103万円以下(2025年から123万円以下)の場合は、配偶者控除が受けられます。対象となる配偶者が70歳未満の場合、最大で38万円の控除となります。

【配偶者控除の金額】

控除を受ける納税者本人の
合計所得金額

控除額

一般の控除対象配偶者

老人控除対象配偶者

900万円以下

38万円

48万円

900万円超950万円以下

26万円

32万円

950万円超1,000万円以下

13万円

16万円

参考:No.1191 配偶者控除(国税庁)


ただし、配偶者控除の対象から外れたからといって、一気に控除額がゼロになるわけではありません。被扶養者の収入が高いという理由で配偶者控除の対象から外れると、配偶者特別控除の対象となります。そしてその後は、被扶養者である配偶者の収入が増えるにしたがって、段階的に控除額が減少していきます。

例えば、扶養者の合計所得金額が900万円以下で、被扶養者の収入が103万円超150万円以下(2025年からは123万円超160万円以下)なら控除額は38万円のままですが、その後、収入が5万円プラスになるごとに、控除額は2~5万円ずつ減っていきます。そして収入が201万5,999円を超えると、控除額は0になります。

参考:No.1195 配偶者特別控除(国税庁)

扶養控除がなくなる影響

配偶者が扶養から外れた場合、扶養者の課税所得金額は、最高で38万円増加します。支払わなければならない税金が38万円増えるということではなく、あくまで、税金がかかる収入の対象額が38万円増えるということです。

所得税は累進課税なので、税金がいくら高くなるかは、配偶者の収入によって違います。所得税率が10%であれば、約3.8万円のアップになります。ただし、前項で示した通り、配偶者特別控除は、配偶者の収入が上がるにつれて段階的に減っていきます。被扶養者の収入が徐々にアップするようなら、徐々に控除額が減っていくことになります。

扶養控除額を38万円として、扶養から外れると、課税所得(※)の金額によって以下のように所得税がプラスされます。

課税される所得金額

税率

配偶者控除(満額38万円)がなくなることによって増える税負担

1,000円から1,949,000円まで

5%

1万9,000

1,950,000円から3,299,000円まで

10%

3万8,000

3,300,000円から6,949,000円まで

20%

7万6,000

6,950,000円から8,999,000円まで

(配偶者控除が満額でもらえるのは900万円以下)

23%

8万7,400

参考:No.2260 所得税の税率(国税庁)


※課税所得:扶養控除の他、基礎控除や給与所得控除などの控除額を収入から差し引いた、税金が課される金額のことで、収入のことではありません。

また、住民税についても配偶者控除(最高33万円)が利用できなくなり、税負担が増えます。住民税の金額は自治体や収入により変動がありますが、おおよそ、課税所得の10%に均等割の5,000円を足した金額です。

なお、今まで扶養に入っていた配偶者自身が所得税や住民税を納めることになります。社会保険料を支払っておらず、他に控除がない場合、所得税は収入から160万円を引いた金額、住民税は100万円(2026年以降は110万円)を引いた金額が、課税対象となる金額です。オーバーした金額が数万円のうちはそれほどの負担を感じない程度ですが、収入が増えるにつれ、税負担は存在感を増していきます。

2025年税制改正で控除額が増える影響

2025年の税制改正により、所得税がかかり始める「103万円の壁」は「160万円の壁」に底上げとなりましたが、よい影響があるのは被扶養者の所得だけではありません。扶養者の基礎控除額も、給与によっては10万~47万円アップします。そのぶん、マイナスの影響は少なくなるといえます。

参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)(p.2)

社会保険料の負担増

社会保険の扶養から外れると、被扶養者だった人は、新たに社会保険などへ加入する必要があります。国民健康保険・国民年金に加入するという方法もありますが、ここではパートなどで働いている会社の健康保険・厚生年金保険に加入するケースについて解説します。

健康保険・厚生年金の加入条件

会社などの健康保険・厚生年金保険に加入しなければならない条件は、2025年6月現在、以下のとおりです。

【勤め先が従業員数51人以上の企業の場合】

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円以上(基本給+手当の合計。交通費含む)
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない(定時制・通信制・休学中の学生は対象)

【勤め先が従業員数51人未満の企業の場合】

  • 年収130万円以上

130万円の壁と106万円の壁

勤め先が従業員数51人以上の企業の場合は月額賃金が8.8万円以下であれば社会保険に加入せずに済むため、年収106万円(8.8万円×12ヶ月)以下で働くように調整する人がいます。この年収の壁は「106万円の壁」と呼ばれます。

なお、年収が130万円を超えると、全ての人が社会保険に加入します。これを「130万円の壁」といいます。

ただし、2026年以降、「106万円の壁」は撤廃される予定です。勤め先が従業員数51人以上の企業の場合、月額賃金が8.8万円以上でなくても、他の要件を満たせば社会保険が適用になるよう、改正される見込みだからです。「週の所定労働時間が20時間以上」「2ヶ月を超える雇用の見込みがある」「学生ではない(定時制・通信制・休学中の学生は対象)」が、条件として残ることになります。

よって106万円の壁がなくなるかわりに、配偶者の扶養内で働きたい人にとっては、「週20時間の壁」が現れることになるでしょう。

損をしない収入ラインはいくらか?

なかには「どうせなら、年収の壁を超えても損にならないラインまで稼ぎたい」と考える人もいるでしょう。この記事を読んでくださっている方を「今、配偶者の扶養に入っている」と仮定して、収入シミュレーションをご紹介します。

収入シミュレーションの例

扶養から外れるといっても、さまざまな段階があります。段階ごとに、どのようなシミュレーションが必要になるかを解説します。

「106万円の壁」を超えたとき

年収が106万円を超えると、一定の条件に当てはまる人は、社会保険に加入しなければなりません。社会保険料は加入する健康保険によっても違いますが、目安は年収の約15%程度とされています。年収が107万円であれば、年間15万数千円ほどの社会保険料がかかります。

「110万円の壁」を超えたとき

2026年以降、住民税がかかり始めます(2025年までは「100万円の壁」)。住民税の金額は、自治体や収入によって違いますが、「課税所得額の10%+均等割の5,000円」程度です。収入そのものではなく、課税される所得分について税金が課せられるので、もし111万円の収入があり、基礎控除・給与所得控除以外の控除がない場合は、1万円が課税所得となり、1万円に住民税がかかります。

「123万円の壁」を超えたとき

年収が123万円を超えると、配偶者控除の対象ではなくなります。そして、配偶者特別控除の対象へと切り替わります。控除を受ける納税者本人の合計所得金額が900万円以下の場合は、年収160万円(2025年、150万円から変更)までは控除額が38万円のまま変わりません。

よって、年収が123万円をちょっと超えたくらいであれば、ほとんどの人にはあまり影響がないといえます。

「130万円の壁」を超えたとき

年収が130万円を超えると、全ての人が社会保険の扶養から外れ、自分で社会保険などに加入しなければならなくなります。年収が131万円の人は、年間約19万数千円の社会保険料を納めます。

配偶者特別控除額への影響はありません。

「160万円の壁」を超えたとき

年収が160万円を超えると、所得税がかかり始めます。課税所得が1万円の場合、所得税の税率は5%なので、所得税額は500円(復興特別所得税(所得税額の2.1%)も加算されるため、最終的な税額は約510円)です。

一方で、例えば年収が161万円の人は、年間約24万円の社会保険料を納めます。支払った社会保険料は全額が社会保険料控除の対象となり、課税所得から差し引けるため、年収が160万円をちょっと超えるくらいであれば、しばらくは所得税負担についてあまり考える必要はないでしょう。

ただし、年収が160万円を超えると、配偶者特別控除額が徐々に減っていきます。つまり、扶養者の税負担が徐々に増えていきます。

「201万円の壁」を超えたとき

年収が201万5,999円を超えると、配偶者特別控除の対象ではなくなります。年収が160万円程度だった頃と比べると、38万円の控除額が0になるため、単純に考えると所得税は税率によって1万9,000円~8万7,400円の負担増となります。住民税は最高で3万3,000円の負担増です。ただし、2025年の税制改正によって、収入によっては扶養者の控除額が2024年の段階よりはアップするため、実際にはもう少しマイナスの影響が抑えられます。

なお、年収190万円を超えると給与所得控除の額が変わり、年収200万3,999円を超えると基礎控除額が変わります。年収202万円の人が、基礎控除・給与所得控除・社会保険料控除の他に控除が適用されないとき、所得税額はおよそ7,700円になります(2027年以降は2万2,700円)。住民税は6万円程度です。なお、年間約30万円の社会保険料を納めます。

扶養内と扶養外の比較

結論として、年収102万円だった人が、一気に年収202万円となり、突然扶養から完全に抜けてこれまで負担してこなかった税金と社会保険料を支払うことになると、収入は100万円増えますが、家計としては年間でざっくり40万円前後の負担増となる可能性があります。

これほど負担が増えるとなれば、単純にパートやアルバイトの時間を増やしても「税金や社保にかなり持っていかれるんだ…」と、モチベーションがあがりません。もし扶養を抜けて働きたいなら、思い切って正社員や、今よりもかなり時給が高い仕事にチャレンジするのが得策です。

また、一般に「扶養から外れる」といえば、扶養者の税負担アップや所得税がかかり始めることに注目が集まりがちです。しかし本当に負担が大きくなるのは、これまで被扶養者だった人が払う社会保険料と住民税であることが分かります。

手取り額の減少をなるべく避けたいなら、住民税の課税が始まる「110万円の壁」と、社会保険料の負担が始まる「130万円の壁」を、特に意識した働き方が求められます。

扶養から外れた場合の働き方

扶養から外れる場合は、時間の使い方がガラリと変わるため、家族のサポートが不可欠です。扶養内で働くか、扶養から外れるかは、必ず家族みんなで相談の上決めましょう。家族に説明するときは、ご自身が「扶養を外れて働くときのメリット・デメリット」を中心に説明します。

扶養から外れるデメリット

扶養を外れて働くデメリットとして大きいのが、家族に協力してもらう部分が多くなることです。ご自身が家を離れて働いている間、家族にどう過ごしてほしいか、どんな家事をサポートしてほしいかをしっかり説明しましょう。「たくさん働く、家事も今まで通りやる」では、ご自身の負担ばかりが大きくなってしまうためです。

扶養から外れるメリット

もちろん、扶養から外れることは、家族にとってデメリットばかりではありません。単純に、家族で使えるお金が増えれば、これまでよりも教育や旅行などにお金をかけられる可能性がある、マイホーム購入のための資金作りができる、家のことを手伝ってもらうぶんお小遣いをアップできるなど、具体的にメリットを説明しましょう。

なお、これまで社会保険に加入していなかった場合、扶養から外れて社会保険に加入することには、大きなメリットがあります。将来受け取れる年金が増額になり、また、病気やケガで休業したときに傷病手当金がもらえたり、障害を負ったとき障害年金がもらえたり、出産時には出産手当金が給付されたりします。社会保険に入らなければ、いざ病気で倒れたとき、家計のダメージに何の保障もありません。

社会保険は保険料が勤務先と折半であり、「就業不能保険」「老齢年金保険」「障害年金保険」「失業保険」そして「出産時の保険」が1つで賄えるという意味では、とてもおトクな保険です。文字通りの「保険」に入るのだと考えましょう。

まとめ

扶養から外れたぶんの税負担や社会保険料をカバーするためには、かなりの収入アップを行わなければなりません。中途半端なアップ額では、今までよりも家計全体で見た手取りが減ってしまうおそれがあります。思い切って正社員になる、パート先を変える、資格を取る、副業を見つけるなど、収入アップの方法はさまざまです。ご自身とご家族の希望に合った働き方を探してみてください。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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