
予定納税とは、前年の所得税が15万円以上だった場合に必要な「税金の前払い制度」です。確定申告をしている個人事業主はもちろん、副業収入や不動産収入がある会社員も対象になることがあります。この記事では、予定納税基準額の仕組みから第1期・第2期の納付スケジュール、収入が減った年の減額申請の手続きまでを解説します。納めすぎや延滞リスクを回避するためにも、予定納税の基本をしっかり押さえておきましょう。
まずは、予定納税の基本的な仕組みについて、対象者の基準を含めて解説します。
予定納税とは、所得税および復興特別所得税(以下まとめて「所得税」とします)の予定額が一定金額以上の人が、所得税を前もって納付する制度です。通常、その年の年収に応じた所得税は、12月31日締めで年収を計算し、翌年に納めます。しかし予定納税では、その年の所得税の一部を、あらかじめ年内に納めます。
予定納税では、納税者は第1期と第2期に分けて納付を行うため、一度に大きな金額を納める必要がなく、負担が軽減されます。また、国にとっては税金の歳入を平準化する目的があります。
予定納税の対象者は、予定される所得税の納税金額が15万円以上になる人です。その年の5月15日において、前年分の所得金額や税額などをもとに算出した予定納税基準額が15万円以上であれば、対象者になります。
自分が対象者であるかどうかを自発的に確認したり、自分で予定納税額を計算したりしなければならないわけではありません。対象者には、6月頃に税務署から予定納税の通知書が送られてきます。納税額は通知書に記載されています。前年度の所得税額が15万円を超えていれば、対象者にあたると考えておいていいでしょう。
予定納税の金額やスケジュール、納付方法は以下のとおりです。
予定納税の金額は、原則として前年の申告納税額の2/3です。第1期に1/3を、第2期に1/3を納めます。特別農業所得者は、予定納税基準額の2分の1の金額を、第2期分として1回のみ納めます。
例として、前年に15万円の所得税を納めている人は、第1期に5万円、第2期に5万円を納める計算になります。
第1期分の納期は、7/1から7/31までで、第2期分の納期は11/1から11/30までです。納期限が土日や祝日に当たった場合は、その翌日が期限となります。
納付方法には、納付書での納付、振替納税、キャッシュレス納付の3つがあります。
納付書での納付は、通知書に同封されている納付書を金融機関や所轄の税務署の窓口に提出して納付します。予定納税額が30万円以下であれば、バーコード付の納付書でコンビニエンスストアから納付が可能です。
振替納税を行っている場合は、指定の口座から納期限の日付で自動的に引き落とされます。
キャッシュレス納付としては、e-Taxによるダイレクト納付や、インターネットバンキングからの電子納税、クレジットカード納付が利用できます。
予定納税が必要になるのは、基本的には自分で確定申告をしている人です。会社員の場合は関係ないといえますが、副業が一般的になるなど働き方が多様化している現在では、そうともいえません。
また、予定納税の通知があっても、「今年は去年より、かなり収入が少ない」と戸惑う人もいるでしょう。
会社員でも予定納税が必要なケースや、通知書が来ても予定納税が一部不要なケースについて、詳しく解説します。
会社員でも、副業収入や不動産所得がある人は、確定申告を行った上で予定納税を行わなければならないことがあります。副業収入が20万円を超えれば確定申告が必要になりますし、副業でたくさん稼いだ場合は納税額が増え、予定納税の対象者になることもあります。
また、会社員をしながらマンションを賃貸するなどで不動産所得がある場合も、納税額が増えて予定納税の対象者になる可能性があります。ただ、不動産所得は修繕費や減価償却費の有無で所得が大きく変動するため、年ごとの所得額にだいぶバラツキがあるでしょう。納税額についてはしっかり確認が必要です。
マンションの修繕などで大きく不動産所得が減る予定があったり、業績不振で昨年よりも収入が落ち込んだりすると、今年の所得が大きく減少するおそれがあります。そんなときは、予定納税の対象者であっても、減額申請を行うことができます。予定納税額を減らしてもらいます。
予定納税額の減額申請は、管轄の税務署に行います。第1期分と2期分、どちらも減額申請を行うときは、その年の7/1~7/15に申請書を提出します。第2期分だけ減額申請する場合は、その年の11/1~11/15に提出します。提出期限が土日祝日に当たる場合は、その翌日が期限です。
予定納税額減額申請書は、e-Taxソフトで作成して、e-Taxから申請します。申請書をダウンロードして、税務署に提出することも可能です。申請書の裏面にある「計算書の書き方」に従って、自ら予定納税額を計算します。
参考:令和7年分所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請書(PDFファイル/1,496KB)
なかには、予定納税額をきっちり納めたにもかかわらず、納めた金額がその年の所得税額を上回ってしまう人もいるでしょう。また、うっかり予定納税を延滞してしまう人もいるかと思われます。それぞれの対応法をご案内します。
予定納税で税金を納めすぎた場合は、確定申告をすることで、過払い分の還付を受けることができます。特別な手続き方法があるわけではないため、翌年にきちんと確定申告をし、還付申請しましょう。
予定納税の納付期限を超過して支払わなかった場合、延滞税が発生します。
【延滞税の割合】
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区分 |
納付日 |
延滞税の割合 |
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第1期分 |
令和7年8月1日から同年9月30日まで |
年2.4% |
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令和7年10月1日から同年12月31日まで |
年8.7% |
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令和8年1月1日以後 |
(注1) |
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第2期分 |
令和7年12月1日から同年12月31日まで |
年2.4% |
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令和8年1月1日から同年1月31日まで |
(注2) |
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令和8年2月1日以後 |
(注1) |
(注)1年「14.6%」と「延滞税特例基準割合(※)+7.3%」のいずれか低い割合
2年「7.3%」と「延滞税特例基準割合(※)+1%」のいずれか低い割合
出典:No.2040 予定納税(国税庁)
振替納税を行っている場合、残高不足により引き落としがされない場合もあります。納期限の翌日から延滞税がかかってしまうため、注意しなければなりません。
予定納税は、一定の基準を満たす人に課される所得税の前払い制度です。制度の仕組みやスケジュールを正しく理解することで、無理なく対応することができます。また、収入が減った年には「減額申請」も可能ですし、確定申告で過払い分の還付を受けることもできます。
税金は、正しく納めることが大切です。予定納税の基本を押さえ、余計な負担や税金の延滞を防ぐためにも、毎年の収入状況をしっかり確認していきましょう。
