
学生のうちは国民年金の保険料を納めるのが難しいと考えているなら、「学生納付特例制度」を利用しましょう。「未納」ではなく「猶予」と扱われ、老齢基礎年金や障害基礎年金の受給資格期間にカウントされます。ただし、追納しないと将来の年金額に反映されません。追納が遅れると加算額がプラスされてしまうこともあります。学生納付特例制度の仕組みや注意点、メリット、デメリットをわかりやすく解説します。
学生納付特例制度とは、20歳以上の学生が国民年金保険料の納付を猶予できる制度です。学生納付特例制度を使えば、経済的に収入が少ない学生でも年金に対応できます。
まずは、学生納付特例制度の仕組みについて解説します。
学生納付特例制度の対象となるのは、大学(大学院含む)、短大、専門学校、高等学校などに在学中で、本人の前年所得が一定額以下の学生です。家族の所得が多いか少ないかは、問われません。
2025年度の場合、所得基準は「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」です。扶養親族がおらず、社会保険料を納めていない学生であれば、年収128万円以下であれば申請できます。
学生納付特例制度は、年金保険料を「猶予」してもらうための制度です。国民年金には、他に年金保険料が「免除」になる制度もあります。
「猶予」してもらうということは、将来的には猶予してもらった分の年金保険料を支払うことが前提になっています。このように後で年金保険料を支払うことを「追納」といい、10年以内に追納すれば、将来の年金額に反映されます。ただし追納を行わなくても、猶予期間は受給資格期間に算入されます。
一方、年金保険料の「免除」は、経済的に厳しい人などが納付義務そのものを軽減または免除される制度です。例えば妊産婦の場合、出産前後の一定期間の国民年金保険料が免除されます。免除期間は受給資格期間に算入され、また決まった割合の金額が年金額に反映されます。
申請手続きは、市区町村役所か年金事務所、またはマイナポータルなどのオンラインで行います。必要なものは、年金手帳または基礎年金番号通知書と、学生証です。
申請は毎年必要になります。その年の4月から申請を受け付けているので、学生であり、年金保険料の猶予を希望する間は毎年忘れず申請するようにしましょう。なお、2年1ヵ月前の分まで遡って申請できます。
学生納付特例制度は「学生免除制度」と通称されることもあり、学生が国民年金保険料を払わなくてもよい制度として知られていますが、「未納」とは異なる重要な意味を持ちます。正確には、年金保険料を支払うのが難しい学生でも年金加入期間を確保できる制度であり、申請することでさまざまなメリットがあります。
学生納付特例制度を利用すると、保険料納付が「猶予」されます。よって、「未納」であると扱われることはありません。
未納の状態と見なされると、「納付すべき保険料を支払っていない」ことになり、年金の受給資格に影響したり、ひどい場合は財産が差し押さえられたりします。
一方で学生納付特例は年金制度に基づいた申請をして支払いが猶予されているため、信頼性を損なうことはありません。
学生納付特例制度を利用すると、保険料の支払いを猶予してもらっている期間も、年金の受給資格期間に含まれます。年金の受給資格期間とは、年金を受け取るために必要な、保険料を納めた期間や特定の扱いを受けた期間(猶予や免除の期間)の合計年数のことです。
原則として、受給資格期間が10年以上あれば、年金の受給権が発生します。20歳から2年間、学生納付特例を利用したら、受給資格期間は2年間、しっかりカウントされます。
学生納付特例制度を利用していた期間中に不慮の事故や病気で障害を負った場合、条件を満たせば障害年金を受け取れる可能性があります。これが「未納」との大きな違いで、保険料を猶予されていても、障害年金の「受給資格」が保たれているという点は重要です。
障害基礎年金を受け取る要件は、以下のとおりです。
(1)事故が発生した月の前々月までの被保険者期間のうち保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が3分の2以上ある場合
(2)事故が発生した月の前々月までの1年間に保険料の未納がない場合
学生納付特例は、申請の仕方やその後の対応によっては将来の年金額に影響があります。デメリットをしっかり知って、利用を検討しましょう。
学生納付特例制度を利用した期間は、受給資格期間としてカウントされますが、年金額には反映されません。つまり、猶予期間分、将来受け取る年金額が減少します。少しでも多く年金を受け取りたければ、社会人になった後に追納する必要があります。
1年分追納すれば、老後の年金が年間で約2万円増えます。また、追納した保険料は社会保険料控除の対象になります。
追納は10年以内であれば可能です。しかし、猶予期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納すると、経過期間に応じた加算額が上乗せされます。追納はなるべく早めに終わらせた方がいいでしょう。
追納しないまま10年が経過すると、猶予期間の分だけ老齢基礎年金額が少なくなってしまいます。働けなくなった老後の生活資金に、影響を及ぼします。
学生納付特例制度を知らず、申請しないまま保険料を納めなければ、未納扱いとなってしまいます。未納扱いになると、受給資格期間にカウントされず、障害年金の給付ができないなどさまざまなリスクがあります。
学生の間、年金を支払わなければどれだけ将来の年金が減るのでしょうか。また、追納にはいくらかかるのでしょうか。順番に解説します。なお、あくまで2025年現在の年金制度に基づいた説明であることをご承知おきください。年金保険料や年金受給額は、毎年少しずつ変わります。
学生納付特例で1年間保険料を納めず、追納しないままだったとすると、老齢基礎年金の支給額が約2万円減少するおそれがあります。年金受給がスタートする65歳から、20年間受給したとすると、減少額は約40万円となります。
2025年度の国民年金保険料は、月額1万7,510円です。1ヶ月ごとに納める場合、年間で21万120円になります。6ヶ月分、1年分などをまとめて支払う「前納」を利用すると、いくらか割引になる制度があります。
複数年分を追納する場合は、年度ごとに違う年金保険料を支払うことになります。ここ数年の年金保険料は、月額1万6,000円~1万7,000円です。2年分で考えると、38万~40万円ほどを追納で支払う計算になります。
今すぐ支払うのはキツいけれど、ずっと支払わなければ将来的に損をする可能性がある――ここまで読んで、そんな風に感じている人は多いでしょう。学生納付特例制度をどのように活用するか、判断方法や注意点を解説します。
「すぐには年金保険料を支払えない」と心が決まっているなら、必ず学生納付特例を申請しましょう。申請せずに支払わなければ、未納扱いになってしまうためです。未納とみなされれば、さまざまなデメリットがあります。申請さえしておけば猶予期間として記録されるため、損を避ける上で、申請は必須と考えましょう。
学生である間は、学生納付特例を毎年申請しましょう。4月になったら、忘れずに市区町村役所の窓口や年金事務所に出向くか、オンライン申請を行います。
いつまでも追納せずにいると、加算金が追加されてしまいます。なるべく早めに追納できるよう計画しましょう。
とはいえ、社会人になってしばらくは給与も少なく、何かと物入りな日々が続きます。「そのうち支払わなければ」と考えたまま支払えず、加算金が追加されるタイミングが来てしまうかもしれません。可能であれば両親に相談して一時的にお金を借り、加算金が発生しないうちに払ってしまうのも1つの手です。
学生納付特例制度は、年金保険料を「払わなくていい制度」ではなく、「あとで支払えるようにする制度」です。よって制度を利用する際には将来を見据え、卒業後のライフプランに年金の追納をどう組み込むかを考えておきましょう。
卒業後、できれば3年のうちに追納できるよう、ライフプランを立てたいものです。毎月数千円をコツコツ積み立てるのが最も堅実ですが、「ボーナスを追納に充てる」などの割り切った考え方もいいでしょう。
なお、実家暮らしの方は「追納を終えたら1人暮らしを始めるぞ」と目標を立てるなど、何らかの楽しい計画と抱き合わせで行うと、モチベーションが高まります。「旅行に行く」「楽器を買う」など、追納を終えたらぜひ行いたい、楽しいことを考えてみましょう。
学生でなくなっても、経済的な事情で保険料の納付が難しい場合があります。そんなときは「納付猶予制度」や「保険料免除制度」を利用できます。条件を満たせば未納扱いにならず、受給資格期間を途切れさせずに済むため、検討してみましょう。
年金といえば広く知られているのが老後に受給できる「老齢年金」ですが、他の側面もあります。ケガなどで障害を負ってしまった場合は「障害年金」が支給される可能性がありますし、配偶者が亡くなったら、条件によっては「遺族年金」を受け取れます。このように、年金はさまざまなセーフティーネットを果たす存在です。
年金を未納のままにしてしまうと、老齢年金の金額に影響するだけでなく、障害年金や遺族年金の要件を満たせないリスクも高まります。万一のとき、自分を守ってくれる存在として年金を捉えましょう。
学生納付特例制度は、経済的な事情に左右されることなく将来の年金受給資格を守るための制度です。制度を正しく理解し、申請や追納のタイミングを見誤らないようにしましょう。また、いつ、どうやって追納するかを見据えて、制度を活用することが肝心です。学生のうちから少しずつでも知識と準備を重ねておくことが、未来の安心に繋がります。
