
空き家を放置すると、管理不全空家や特定空家に指定される危険性が高まります。すると固定資産税がアップし、所有者に大きな負担がのしかかります。特に2029年には京都市で新税が導入される予定で、全国的に空き家への課税強化が進む可能性があります。本記事では、空き家の増税リスクから相続空き家の3,000万円特別控除における最新ルールまで、FPの視点で徹底解説します。
執筆者:奥山 晶子(ファイナンシャルプランナー2級 / 終活・老後資金アドバイザー)
空き家を放置すると、固定資産税の優遇が外れたり、新税の対象になったりと、税負担が急増する可能性があります。特に管理不全空家・特定空家の指定は、税金面で最も大きな影響を与えます。
そもそも、税制において住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が最大で1/6に軽減されています。しかし、空き家が「管理不全空家」や「特定空家」に指定され、自治体から勧告を受けると、この特例が解除されてしまいます。
特例が外れると、例えば年5万円だった固定資産税が30万円に跳ね上がるなど、最大6倍の負担増となります。適切な管理がされていないと見なされる「管理不全空家」は、倒壊などのおそれがある「特定空家」の一歩手前であり、軽度の破損や雑草の放置などでも管理不全空家の対象となる点に注意が必要です。
京都市では2029年度から「非居住住宅利活用促進税(空き家新税)」が導入される予定です。これは、空き家を所有しているだけで課税される仕組みで、管理状態に関係なく負担が発生します。この制度は全国の自治体が注目しており、京都市の新税がモデルケースとなって広まる可能性があります。
参考:非居住住宅利活用促進税について<令和12年度課税開始予定>(京都市情報館)
管理不全空家と判断される基準は、国土交通省のガイドラインで明確化されています。以下は代表的な項目です。
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状態 |
判断の目安 |
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立木 |
立木の伐採、補強等がなされておらず、腐朽が認められる状態 |
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擁壁 |
擁壁のひび割れ等の部材の劣化、水のしみ出し又は変状等 |
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軒やバルコニー |
軒、バルコニーその他の突出物の支持部分の破損、腐朽等 |
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屋根・外壁 |
屋根ふき材、外装材、看板、雨樋等の破損又はこれらの支持部材の破損、腐食等 |
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ごみ放置 |
清掃等がなされておらず、常態的な水たまりや多量の腐敗したごみ等が敷地等に認められる状態 |
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害獣の棲みつき |
駆除等がなされておらず、常態的な動物等の棲みつき等が敷地等に認められる状態 |
相続した空き家を売却する際に使える「3,000万円特別控除」は、税負担を大幅に軽減できる強力な制度です。2024年(令和6年)からルールが緩和され、活用しやすくなりました。改正ポイントを中心に解説します。
従来は、売主が売却前に耐震改修または解体を行う必要がありました。しかし改正後は、売却後に買主が翌年2月15日までに解体・耐震改修を行う場合でも特例が適用されます。これにより、売主側の負担が大幅に軽減され、空き家売却のハードルが下がりました。
参考:特例措置の概要(令和6年1月1日以降の譲渡)(国土交通省)
令和6年度税制改正により、相続人が3人以上いる場合、控除額は一人あたり2,000万円に減額されます。例えば兄弟3人で相続した場合、従来の合計9,000万円ではなく、6,000万円が上限となります。相続人が多い家庭では、控除額の減少を見越した売却戦略が必要です。
参考:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
特例を使うには、一定の書類を添えて確定申告をすることが必要です。申告先は、所轄税務署となります。この際、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」が必須です。取得手順は次の通りです。なお、申告時、主に準備すべきものをご案内します。
①市区町村の窓口またはホームページで申請書を入手
②必要書類を準備
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
・登記事項証明書
・耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
・売買契約書の写しなどで売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの
③窓口または郵送で申請
参考:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
空き家の状況や将来の活用方針に応じて、税負担を抑える方法は複数あります。代表的な3つのシナリオを紹介します。
解体すると住宅用地の特例が外れ、固定資産税が上がるデメリットがあります。しかし自治体によっては「老朽空き家解体補助金」や、解体後1〜2年間は税負担を据え置く制度を設けている場合があります。
例えば大阪市では、補助対象エリアの古い木造住宅を解体すると、最大で100万円の補助金が出る制度があります。また、岡山県総社市では、空き家を解体撤去した場合、最大3年間、固定資産税が解体前の水準まで減免されます。
空き家がある自治体の制度をチェックし、解体費用と税負担のバランスを見ながら判断することが重要です。
参考:狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度(大阪市)
老朽空き家等除却促進事業(北九州市)
固定資産税等の減免について(総社市)
空き家をリフォームして賃貸物件として活用すると、修繕費を経費として計上できます。確定申告上、賃貸での空き家活用は「家賃収入を得る事業」として扱われるため、リフォーム費用の一部または全部を必要経費として税金計算に入れられるのです。これにより課税される所得が減り、所得税と住民税が下がります。
また、空き家をリフォームして賃貸に出すと、税務上は貸付事業とみなされます。すると土地が「貸付事業用宅地」として扱われ、相続税評価額が50%減額される可能性があります。事業として活用することで、税負担を抑えつつ収益化を図る方法も選択肢に入れましょう。
先に少しご紹介した、相続した空き家を売却する際に使える「3,000万円特別控除」には、期限があります。それは「相続日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」というものです。
期限を過ぎると特例が使えなくなるため、逆算したスケジュール管理が不可欠です。早めの譲渡を心がけましょう。
空き家問題は、相続や税金、そして管理コストの問題が複雑に絡むため、親子で早めに話し合うことが重要です。「実家」の出口戦略として、注目したいポイントを2つ解説します。
空き家の維持には、固定資産税や火災保険、ライフラインの維持や修繕など、年間で数万円〜十数万円の費用がかかります。もし空き家になることがあらかじめ分かっている場合は、「リバースモーゲージ」を選択肢に入れるのがおすすめです。
リバースモーゲージとは、自宅を担保に金融機関から融資を受けるもので、自宅に住み続けながら必要な資金を借り入れ、存命のうちは利息のみを返済する仕組みです。元金は契約者がお亡くなりになったら、相続人が空き家を売却したり、自己資金を用意したりして返済します。
生前から売却先を決めることができるため、「相続が始まり、空き家になったらすぐに手放したい」「いずれ空き家になってしまう家だけれど、ずっと住み続けたい」という人に向いています。ただし、金利変動リスクや将来の不動産価値の下落により、借りられる金額が低くなってしまう可能性もあるため、家族と相談しながら慎重に判断することが重要です。
空き家を複数の相続人で共有すると、売却や賃貸、解体といった重要な判断に全員の同意が必要となり、意思決定が進まない「共有トラブル」が起こりやすくなります。特に兄弟姉妹が遠方に住んでいる場合や、関係性が希薄な場合、連絡が取れず売却が数年進まないケースも珍しくありません。
こうした事態を避けるためには、相続前から「誰が家を引き継ぐのか」を話し合い、特定の1人が相続して他の相続人には代償金を支払うなど、役割を明確にしておくことが有効です。相続開始後に遺産分割協議を行う場合も、共有にせず単独所有にまとめることで、将来の売却や管理がスムーズになります。
また、相続登記の義務化により、放置すると過料の対象となるため、早めの協議が不可欠です。家族間での合意形成が、空き家問題を長期化させない最大のポイントになります。
空き家の放置は、固定資産税の増税や近隣とのトラブルなど、多くのリスクを伴います。2029年から始まる京都市新税を皮切りに、全国的に空き家への課税強化が進む可能性もあります。解体や賃貸、売却など、状況に応じた最適な選択肢を早めに検討し、親族間の話し合いや専門家への相談を進めましょう。
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